バニシング

ジドーシャ映画

「レポマン」っていう映画、ご存知かな?

ローン不払いなどによる差し押さえ対象の自動車をムリヤリ回収する稼業についた青年(エミリオ・エステべス)が遭遇するさまざまなトラブルを描いたちょっと変わった作品だ。

なかにエイリアンがらみのエピソードがあることからカルトSFなどといわれることも多い映画だが、本質的にはアメリカのビンボー人の生活を活写したオモシロ・サスペンスアクション映画。

で、そのタイトルにもなっている「レポマン(repo man)」という商売だが、どんな仕事か、ご存知だろうか?

映画を見ればわかるんだが、所有者の許可を受けずに自動車を「回収」しようというんだから、その「手口」は基本的に自動車泥棒と同じ。こちらは合法的だというだけの違いだ(まあギリギリな感じだが)

合法的といっても、それは回収する側の都合で、車社会のアメリカで自動車を奪われる側にしてみれば死活問題だ。だから彼らレポマンは、ときには身の危険を冒しながらも、自分の生活のために自動車をかっぱらい続けるのだ。

このへんのレポマン稼業の内幕は、この小説にも詳しい。

(W・ブルース・キャメロン著/真崎 義博・訳/ハヤカワ文庫)

邦題『真夜中の閃光』からはわかりにくいが、原題は「THE MIDNIGHT PLAN OF THE REPO MAN」つまり「真夜中のレポマン」といったところで、レポマン稼業のノウハウがいろいろ語られていて、じつに面白いのだよ(わかりにくい邦題の責任は私にありますです)

ちゃんとローンの返済を履行してきた私にはカンケーない話ですがね(笑)

レポマン稼業は合法だが、これが違法行為になると、手口は同じでも自動車泥棒となり、おまわりさんに追いかけられることになる(映画「レポマン」では仲間の一人に警官がいたりもしたが、でもこっちの業界でもおまわりさんは要注意だそうだ)

「レポマン」と同じような手口がたくさん出てくるのは、カーアクション映画としてカルト人気のある「バニシング in 60”」

映画の後半を、黄色いムスタングを盗み出した主人公の自動車泥棒(演じるH・B・ハリッキーはスタントマンで、監督や製作も兼任したワンマン映画なのだ)と、それを追う警察との壮絶なカーチェイスにまるまる費やした(たぶん映画史上最長のカーチェイスだろう)ことで有名な映画だが、前半は自動車泥棒の手口が次々に紹介されて興味深い。じつに参考になるのだよ(もちろん防犯の上でですよ)

ただし、この映画も「レポマン」もそうなんだが、製作当時(1974年。「レポマン」は1984年)からずいぶん経っていて、現在は防犯技術も進歩しているようなので、そのままマネしてもすぐにしくじることになるぞ。くれぐれもマネしないように。

で、盗まれた自動車がどうなるかというと、バラして部品にされたり、外国に密輸されたりするほか、ひそかに中古車屋で販売されたりもするようだ。

そのへんの事情は「ユーズド・カー」という映画に詳しい。

オープニングでいきなり走行距離計を細工して新車に見せるというテクニックを披露してくれるこの映画、これまた違法ギリギリ(あるいは完全アウト)の手口の数々を描いて、じつに愉快だ。まあコメディアクションとして最上出来かというと、そのへんはまぁとにかく。

私は、ヒイキ俳優のカート・ラッセルが主演だったので、気楽に楽しめたっけな。

ただ、これもだいぶん古い映画(1980年)になったので、この映画の手口もなかなかマネはできないかもしれないね。

アメリカは完全な自動車社会だ。だから映画や小説でも自動車のはたす役割はけっこうデカい。これ、アメリカ映画のひとつの特徴だろう。

ちなみにあちらでは、ガキでも運転ができるし、かなりの高齢者も平気で運転する。若者や高齢者の運転で事故が起きると問題視する日本とはだいぶん違うが、そもそも国土の広さや道路事情が違うんだから仕方ないのかね。

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