スポケーンぶらり(6)煙に襲われた町

日本ではあまり報道されていないみたいですが、じつはスポケーンのあるアメリカ北東部は、今たいへんな災害に見舞われています。

高温多湿の夏だった日本から、スポケーンに着いて最初に感じたのは「お、涼しいな」 緯度が日本よりもやや高めで、樺太あたりと同じなせいもありますが、なんといっても湿度の低さが、そう感じさせるのです。昼間の気温そのものは20度台後半ですから、そんなに低いわけではないのですが、湿度が低いせいでカラッとしていて、日影にでも入れば、非常にしのぎやすい。

ところがこの湿度の低さが、とんだクセモノでした。

極端に乾燥した気候のせいで、今アメリカ北東部の山地は大規模な山火事に襲われているのです。

これはコンベンションセンターから、スポケーンの象徴たる時計塔の向こうに見えた山火事の煙。この後さらに広範囲に広がりました。あとでニュースで見たら、市街地から4マイルほどの距離での火災だったとか。ほんの5~6キロ先です。こうした火事が、広大な地域のあちこちで、同時多発的に発生しているのです。

地元のテレビニュースは、まさにこれ一色。

出発前の日本で「高温警報」が画面の一部を占めるテレビを見てきたばかりでしたが、スポケーンのテレビではあれが赤い帯の「WILDFIRE」警報になっているのです。

じっさいに家屋や施設の被害が次々に出ていますし、われわれの滞在中にボランティアの消防隊員が3人死亡するといった痛ましいニュースも報じられ、ワールドコンのマスカレードでも冒頭に黙祷をささげました。

ちょうどその金曜日、朝食をすませてワールドコン会場へ行こうとホテルから出たら、なにやら町がモヤっています。

霧? 

いやいや、これが風向きのせいでスポケーンの市街地に流れ込んだ山火事の煙だったのです。おかげで、市全体が異様なキナ臭さにおおわれていました。近くで焚火かゴミ焼きをしているような匂いがたちこめ、煙のせいで市街のビル群も霞んで見えるほど。町を歩く人々はマスク着用も多く、ワールドコンの会場では「やたらに外を歩かないように」という参加者向けの張り紙があちこちに。

こうなると、ちょっとした非常事態ですね。海外では、以前に香港でシグナル8(避難警報クラス)の台風に遭遇し、町が非常態勢に入るのを見て以来の経験です。ただ、スポケーンでは、市民は平静そのものでした。

帰りのアラスカ航空機から下を見たら、山火事の現場も見えました。広い範囲の山林から煙が立ちのぼり、その煙が雲海のように大地を覆っていました。やはり、大陸の山火事は、規模が違います。

その後、まだ火災は続いているようです。これ以上被害が広がらないことを、太平洋の対岸から祈るのみです。

【追記 2017/10/12】

これは2年前の記事ですが、今年またアメリカ西岸は大規模な火災に見舞われています。今回はカリフォルニア州。乾燥し、強風が吹く気象条件ゆえで、アメリカ西岸では避けられない自然災害。日本だと、台風にあたるようなものなのでしょうか。ふたたび、太平洋の対岸から、早期鎮火を祈っています。

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