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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(18)

2017年製作の中国映画、日本では2018年11月に公開された「ポリス・ストーリー/REBORN」 中国語題は「机器之血(機器之血)」 英題は「BLEEDING STEEL」

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邦題にはジャッキーの代表シリーズ「ポリス・ストーリー」が冠されているが、中国語題や英語題でもわかるように、これは本来の「ポリス・ストーリー(警察故事)」シリーズとは、内容的に無関係な作品だ。

「警察故事」シリーズは香港警察の刑事である陳家駒を主人公にした4作品とスピンオフ1作があるのみで、残りは日本でシリーズに仕立てたものばかり。本作も宣伝文句には「ポリス・ストーリー・ユニバースの10作目記念」などと謳っているが、もちろんそんなユニバースは存在しない。

映画のラストを飾ってシリーズの主題歌であった「英雄故事」(ジャッキー歌唱)が北京語バージョンで新収録されて使われているが、これも日本向けらしく、海外の資料では触れられていない。

そもそも、この作品をポリス・アクションのジャンルにカテゴライズするのは無理がある。

舞台は近未来。人工心臓と人工血液で人間を超人に仕立てる技術を開発した博士の保護に向かったジャッキー率いる国際警察部隊。しかし博士の実験体となった男が技術を盗むべく人造人間部隊とともに襲撃してくる。迎撃する警察隊はほぼ壊滅し、ジャッキーも博士も重傷を負う。それから13年後。シドニーに住む大学生の女性に人造人間たちの魔手が迫る。彼女を守ろうとする覆面の男の正体は?

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はい、SFです。緻密なサイエンスガジェットを突き詰めたハードSFではないけれど、ファンタジイよりはサイエンス寄り。まぁざっくりいえば「ロボコップ」よりもちょっとばかりファンタジイ寄りかな。

前にもふれたように、20世紀のジャッキーにはSFやファンタジイ要素を中心に据えた作品はほとんどない。80年代から90年代には香港ではその手の映画が大流行したのに、ジャッキーは背を向けて、ひたすらアクションを追及していたのだ。

だが21世紀に入って、ジャッキー自身の興味がSFやファンタジイに向いたのか、あるいは純粋アクションに飽き足らなくなったのか、SFファンタジイガジェットを物語の軸にした映画をしばしば手掛けるようになる。それまではワイヤーワークすらあまり使わなかったのに、CGを使うようになったのも同じ時期だ。

ところが、それらの作品が成功したとは言い難い。「メダリオン」「タキシード」などの時に指摘したように、SFガジェットやCGを使った結果「ジャッキー、楽してるな」に見えてしまうからだ。

やっぱりジャッキーはSFが苦手なのか……

その点、本作はSF風味とはいえ、失敗作ではない。いやいや、「アクション卒業」などといっていたジャッキーが、堂々とアクションしているのだから、久々に満足感が高い。傑作とか代表作とはいえないまでも、十二分にジャッキー・アクションを満喫できるのだから文句をつけるいわれはない。

そうなった理由は、アクションとSFXを分離させたことだろう。

例によってエンドクレジットにNG集やバックステージ風景が収録されているのだが、いまどきCGも使わずに、銃撃シーンではドッカンドッカンと爆発させたり、格闘シーンでは限界まで体術を駆使したりと、まぁ相変わらずムチャしている。撮影中のケガ人も多かったようだ。

CG合成のためのブルースクリーン(緑色だけど)も使われてはいるが、かなり限定的。そのへんはうまくいかなかった過去のSF系作品の反省を活かしたのだろう。

さすがはジャッキー、このへんはよくわかってらっしゃるね。

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ここ数作の渋めなジャッキーも、年齢なりの役作りで悪くはなかったけど、やっぱりジャッキーはこうでなくちゃね。

もっともさすがにアクションのハードな部分はかなりを若い連中にまかせている。かつてのジャッキー的な役回りである泥棒を演じる台湾出身のショウ・ルオ(羅志祥)や、ヒロイン役のオーヤン・ナナ(歐陽娜娜/あの歐陽菲菲の姪だそうだ)ら、ジャッキー班に絞られてさぞや苦労したことだろう。

そして、「ポリス・ストーリー3」のミシェール・ヨーを彷彿とさせる女性捜査官を演じたエリカ・シアホウ(夏侯雲姍)はカッコイイよ。

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最初の方で、正式な「ポリス・ストーリー」ではないと文句をつけたが、それでもラストにあの「英雄故事」が流れると、それはそれで盛り上がるものがある。

反則だよな、実際(笑)

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