崖っぷちで宙ぶらりん
昨日のつづきです。
昨日、シリーズものはどこからみても基本的にはオッケイですと、と書いたばかりなのになんですが、じつはそうした行為を断固拒否するスタイルが、映画にはあります。
俗に、クリフハンガーっていうやつ。
あ、スタローンが山に登る映画のことではないです。
語義的には「崖(クリフ)」に「吊るす(ハング)」くらいの感じ。英語では「cliffhanger ending」とも言います。
もともとは、いにしえのサイレント時代の連続活劇でよく使われた手。
ヒロインが鉄道線路に縛りつけられて、そこへ列車が迫る! さあタイヘン、ヒーローは彼女を救えるか?
……ってところで今回は終わり、次回をお楽しみに、っていう終わりかたのことですね。
要するにクライマックスを分割して2回にまたがらせる手法。
つづきはまた来週ってことで、いやでも来週も見てしまいそうになる手法ですね。考えてみたら、ずいぶんアコギな手法だね。まあ、テレビドラマやアニメ、あるいはコミックや連載小説など、およそ連続するコンテンツではよく使われる手法ではありますが。
それでも、つづきが「来週」見られるならまあ我慢しますが、これをもっと大胆にやってのけたのが、アメリカのテレビ業界でした。
アメリカのドラマって、基本的に秋の9月ごろスタートして、毎週放送し、翌年の春先に終了。次のシリーズは9月からまたスタートというのがパターン。
そこで、シーズンラストの最終回にストーリーを完結させずに終わらせ、半年後の新シーズンの1回目につなげば、高視聴率維持はまちがいなしって仕掛けです。
最初にこれをやったのが、1978年からはじまった「ダラス」 主人公が撃たれたところでシーズン終了。つづきは9月から始まる新シーズンをご覧くださいって、半年待たせるのかよ!
これがあたって、「ダラス」はじつに13シーズンもつづいたのだから、うまい手法だったのだろう。その後はこれを模倣して、アメリカのテレビドラマではよく見る手法になりました。そして、この手法を「クリフハンガー」と呼ぶようになったのです。
とはいえこの「クリフハンガー」、日本ではそれほど話題にならなかったです。わが国では何シーズン分かをまとめてディレイ放送したからですかね。そもそも「ダラス」自体、13シーズンのうちの最初の3シーズンくらいしかやらなかったし。
その後、アメリカのテレビドラマが徐々にゴールデンタイムから消えたこともあって、日本ではそれほど意識されなかった「クリフハンガー」ですが、1993年からスタートし、日本でも1995年からの放送でブームっぽくなった「X-ファイル」で話題になりました。アメリカとの「時差」が少なく放送されたので、「待ちきれない!」となったのです。
このドラマは私も見ていたので「待ちきれない!」になりましたが、当時は放送に先行してレンタルビデオなども出ていたので、そっちで追いかけました。が、すぐにそれもアメリカの放送に追いついてしまったので、けっきょくは待たされましたが(そのうちに忘れてしまって、じつは10シーズン以上あるシリーズの後半はまだ見たことがなかったりする)
これを劇場用映画に持ち込んだのが、ごぞんじ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
1985年に公開された第1作は普通に終わる普通の映画でしたが、4年後の1989年の「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」のラストは、まさに「クリフハンガー」 公開時に劇場で見て、あぜんとしましたよ。「え? ここで終わり?」
公開時には、そのラストに「PART3」の予告編がついていたんですから、完全な確信犯。
聞くところによると、「PART2」撮影時に、同時に「PART3」も撮影したというから、用意周到であります。おかげで、次なる作品に大いに期待感が高まったものですから、製作側の勝利ですね。
「PART2」の公開は1989年の年末、そして「PART3」は翌1990年夏の公開。
当時は、とても待ちきれないと思いましたが、考えてみたら「クリフハンガー」の元祖であるテレビドラマと同じくらいの間隔だったのか。
この手法も、最近はちょくちょく使われるようになったみたいですね。
ちなみに、この「つづき」がないケースもありますね。これは「クリフハンガー」とは呼びません。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、代表例として「フレンチコネクション」(1971年)のラストを挙げておきましょう。「つづき」のない究極の「クリフハンガー」 知りたい人は、自分で見てみてください。
もちろん、世の中には「クリフハンガー」を仕掛けながらも、諸般の事情で続行打ち切りとなるケースもありますね。大人の事情による「絶対クリフハンガー」 これは困りものですが(笑)
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