火が走る
今年の冬、関東地方はたいへん乾燥しているせいか、火災の発生が多いようです。火の用心であります。
「タワーリング・インフェルノ」(1974年)をはじめ、火事をあつかった映画は、ピンからキリまで数多いので、いまさらですが、そうした火災シーンのうちでも、非常に印象に残るシーンがあります。
たとえば、ヒッチコックの「鳥」(1963年)
細かいシチュエーションは忘れましたが、ガソリンスタンドが鳥の襲撃を受けて、給油中の車からガソリンが流れ出します。その様子を、避難したレストランかなんかから目撃する主人公たち。
すると、ガソリンが流れてゆく先で、お約束のようにタバコを吸おうとするオジサンが一人。
当然主人公たちは引火をおそれ、大声で「火を消せ!」
するとそれを聞いたくだんのオジサン、あわてて火のついたタバコを消そうと投げ捨ててしまうんです。
当然、ガソリンにボンと引火。
するとガソリンが流れてきた水路(?)に沿って、さーっと火が走り、水源(?)のガソリンスタンドへ。
どーんと爆発して炎上したスタンドを、上空から無感情に見下ろす鳥たちが、非常に印象に残ります。
さすがはヒッチコック監督ですが、この「漏れたガソリンに沿って火が走る」ってのは、じつに映画っぽくていいですねえ。危険だけど。
スピルバーグ監督の「1941」(1979年)では、ジョン・ベルーシ演じる荒くれパイロットが初登場するシーンで、この「漏れたガソリンに沿って火が走る」があります。
ガソリンスタンドで戦闘機に給油している(無茶)と、機が勝手に走り出す。もちろんガソリンをまき散らしながら。慌てたベルーシが追いかけながら拳銃を乱射すると、流れ弾が送電線を断ち切り、引火。
ハイ、火は流れたガソリンを逆流してスタンドへ。そんなことには気づかずに飛び去るベルーシ機の後ろで、どっかーーん!
スピルバーグ監督は、この「漏れたガソリンに沿って火が走る」がお気に入りなのか、「レイダース/失われた《聖櫃》」(1981年)でも、エジプトのドイツ軍基地での大見せ場に使っていましたね。
爆撃機に閉じ込められたヒロインを救うべく、インディが大男のドイツ兵と殴り合うシーンで、その背後でスルスルと走る火が燃料トラックに迫っていき、スリルを倍増させてました。まさに危機一髪!
テーマパーク〈ユニバーサル・スタジオ〉のインディ・ジョーンズ・ショーではこのシーンを再現してくれますが、手に汗握りつつ、火炎の熱さが感じられて、なかなかの臨場感でした。
これを見事に使ってクライマックスにしたのが「ダイ・ハード2」(1990年)
ま、それこそネタバレになるので細かくは書けませんが、このアイデアには脱帽しました。「滑走路に明かりができたぞーっ!」というマクレーン刑事の高笑いは、映画史上に残るカタルシスでありました。
というように、映画的にはまことにかっこいいシーンですけれど、これは現実には見たくないシーンですね。
繰り返しになりますが、もう一度。
火の用心!
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