ウェストール事件

先日テレビを見ていたら、なにやら怪しげな超常現象(だけではありませんでしたが)番組をやっていて、なんとなく眺めてしまいました。けっきょくのところ、こういうの好きなんですね。

で、そのなかのひとつに、私の得意種目である「ロサンゼルスの戦い」が出てきたので、思わず膝を乗り出しました。第二次大戦下のロサンゼルスに謎の飛行物体が現われ、軍隊が盛大に対空砲火をぶっ放したっていうあれです。

知らなかったことは何ひとつ出てきませんでしたが(私の年代の男子にはUFO関連の強力な基礎知識があるんですよ)、なかなか面白かったです。

その番組で続けざまに取り上げられたのが「オーストラリアで200人以上が目撃したUFO事件

ん? それは知らないぞと、乗り出した膝がさらに前に。

番組によれば、事件が起きたのは、1966年4月6日のこと。

この日の昼前に、オーストラリア、メルボルン郊外のウェストールという町のハイスクールそばの低空に「銀色に光る円錐形のUFO」が出現し、生徒や教員、付近の住人が200人以上それを目撃したんだとか。人よんで「ウェストール事件」

へえ、ホントだとすると「ロサンゼルスの戦い」と同様の多数同時目撃の事例ではないですか。

あとから調べてみたら、なるほどネットにもぽつぽつ紹介記事がありました。なかには「ロズウェル事件に匹敵する大事件」と紹介してるものもありましたが、知名度ないよねえ。

それもそうでしょう。われわれが夢中になった「矢追純一スペシャル」は1970年代前半の放送(その後も長くやってたけど)

その時点で、このウェストール事件は、わずか数年前の事例です。いまと違って海外の情報などそんなにオンタイムで入ってくる時代じゃなかったですからねぇ。矢追さんも知らなかったんでしょう。

いまから思えば、矢追スペシャルによく出てきたUFO事件はみな1960年代以前のものでした。

ケネス・アーノルド事件の発生が1947年6月24日。ロズウェル事件も同年7月1日。

ゴッドマン基地での米軍機撃墜事件は1948年1月7日。同年7月24日にはイースタン航空機が葉巻型UFOと遭遇

フラッドウッズ・モンスターがあらわれたのは1952年9月12日。かの有名なコンタクティー、ジョージ・アダムスキーが「金星人」と接触したのもこの年だという。

ブラジル海軍が撮影し、それを大統領が本物と認定したブラジル公認UFO写真事件が1958年。

そしてヒル夫妻のアブダクション(誘拐)事件が起きたのが1961年9月19日。

当時のUFO番組で取り上げられていた代表的な事件はこのへんまで。どれも今やクラシックですが、当時はまだ1966年のウェストール事件は「圏外」だったということなんでしょう。同じ年に起きた「モスマン事件」(ウェストヴァージニア州ポイント・プレザントでの街で異星人と思われる蛾のような怪人が連続的の目撃された)も、当時の番組ではあまり取り上げられていないですね。

70年代も半ばになると、オカルトブームが到来し、この手の番組が各局で数を増したこともあって、取材の対象は最新の事件に向いていきます。介良事件(1972年)や甲府事件(1975年)とかだね。

このはざまで、1960年代後半の事件は、いわば谷間となって、われわれ子供たちの目には触れにくかったのでしょうね。

ウェストール事件そのものは、たぶん集団での誤認なんでしょうし、半世紀余を経ての、今の時点での証言には、「飛行物体からエネルギーを感じた」「着陸あとの草地に円形の跡が残った」「黒服の男に事件について話すことを止められた」などなど、その後世界的にポピュラーになったUFO事件のディティールがほど良くミックスされています。かなりの部分は後世の「捏造記憶」なのではないでしょうか。

ネットでは、この事件の際のものといわれる写真が一枚、出まわっていますが、その形状などが肝心の証言と食い違っているので、たぶんほかのケースのものか捏造写真だと思われます。

それよりも、くだんの番組では、目撃者たちの高校生当時の写真(卒業写真かな)と現在の姿が並んで放送されてましたが、そちらもけっこうショッキングでしたね。あんな可愛かった子がこんな……いやいや、他人のことは言えませんが(笑)

まあ、その真相はともかくとして、なかなか楽しめるケースではあります。UFO事件史の谷間ともいうべきこの時期、他にもこんな事件が隠れているのかもしれませんね。

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