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猛将パットン

だいぶん昔の話ですが、1970年代ごろにサンケイ出版から刊行されていた「第二次世界大戦ブックス」というのがありました。第二次大戦のあらゆる局面をいろいろな角度から特集した叢書で、本文のほかに豊富な写真が収録されていてなかなか充実したシリーズでした。いま調べたら全部で99冊も出ていたそうで、私も数冊は愛蔵していました。

そのうちの1冊に『猛将パットン』というのがあって、副題が「ガソリンある限り前進せよ」 おお、なんかかっこいいぞと思って、妙に印象に残っています。

その主役、ジョージ・S・パットン将軍といえば、第2次大戦のヨーロッパ戦線では、「砂漠のキツネ」の異名を取ったドイツのロンメル将軍と世界的な知名度の高さでは双璧ではないでしょうか。

軍人さんへの評価なんてのはよくわかりませんが、パットン将軍を有名にしたのはなんといっても映画のおかげでしょう。

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1970年の「パットン大戦車軍団」はヨーロッパ戦線で闘ったジョージ・パットン将軍を主人公にした戦争映画。北アフリカでのロンメル将軍との対決、シシリー島上陸作戦を経て、兵殴打事件での失脚、復活したあとバルジ大作戦への猛反撃、そして戦争後のソ連軍首脳との軋轢などから政治的理由で解任に至るドラマを時系列に従って淡々と描きます。

淡々と、と書きましたが、ワイドスクリーンに本物の戦車を大量投入して描いた戦闘シーンなどは戦争映画としても一級品。日本でもけっこうヒットしたようです。

そのうえ、パットン将軍を演じたジョージ・C ・スコットが、受賞したアカデミー主演男優賞を辞退したこともあり、その映画タイトルと役名が多くの人の記憶に残りました。ある意味、ラッキーなんでしょうね。

パットン将軍は終戦直後の1945年12月に交通事故がもとで急死していますが、もし生きていたら、自らを演じた俳優が映画界最高の栄誉(とされる)を蹴飛ばしたことをどう思ったでしょうか?

さてそのパットンの事故死ですが、じつは彼の存在を煙たく感じていた軍による謀略や暗殺説もあったりして、都市伝説化している面もあります。「パットン大戦車軍団」では、そこまでは描かれていませんが。

この暗殺説と、終戦のどさくさにドイツの保有していた金塊が行方不明になった事件を絡めたのが「ブラス・ターゲット」(1978年)

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金塊強奪事件の解決と奪回を厳命して突っ走ろうとするパットン将軍を、じつは軍内部にいた犯人たちが暗殺しようとするサスペンス。

ジョン・カサヴェテス、ロバート・ヴォーン、ソフィア・ローレン、パトリック・マクグーハン、マックス・フォン・シドーと豪華キャストで、この前にヒットした傑作「ジャッカルの日」を思わせる出来栄えと宣伝されていたこともあって、私も当時はずいぶん期待したものです。

ところが、日本公開は遅れに遅れて1980年。そのうえ、2年も待たされたおかげでいざ公開されたころにはこっちも気が抜けてしまったのか、実際に観たあとはガッカリ感が残りましたね。

ここでパットン将軍を演じたのは、私の贔屓スターだった名バイプレイヤーのジョージ・ケネディ。強面のタカ派将軍を好演して、その点だけはポイント高かったんだけど(私だけか)

そういえば、ジョージ・C・スコットもジョージ・ケネディもファーストネームは、パットン将軍と同じジョージでしたね。まさかそれでキャスティングされたわけじゃないでしょうが。

じつはこれらの映画以前に、パットン将軍が登場した映画があります。

連合軍のパリ解放の全貌を描いた超大作戦争映画「パリは燃えているか」(1966年)

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アラン・ドロン、ジャン=ポール・ベルモンド、シャルル・ボワイエ、グレン・フォード、ゲルト・フレーベ、イヴ・モンタン、オーソン・ウェルズら、豪華なオールスターが並んだこの大作で、パリ進軍を決めるパットン将軍を演じたのは、カーク・ダグラス。出番は多くないけど、映画を見た人の記憶に残りやすい儲け役でした。

ジョージ・C・スコット、ジョージ・ケネディ、カーク・ダグラスと、こうしてパットン将軍を演じた役者たちを並べてみると、いずれも硬派のオッサンであることがわかります。伝記などを読んでみると、パットン本人もガサツで頑固なオヤジ肌の人物だったようで、こうしたパットン像が、とくにアメリカ人には浸透しているのでしょう。

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こちらがパットン親父ご本人

日本ではダグラス・マッカーサー将軍に知名度では譲りますが(そりゃそうだ)アメリカ人が確固としたイメージを抱いている将軍のひとりとして、パットンの名は長く記憶されているのでしょう。

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