未発売映画劇場「ハリウッドの逆襲」

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MGMが、1974年に社の創立50周年を記念して製作したミュージカル映画の名場面集「ザッツ・エンタテインメント」は大ヒットとなった。

すでに滅んでいると思われたミュージカル映画へ再び脚光を当てるきっかけとなり(ミュージカル映画というジャンルは復活しなかったが)、「エンタテインメント」という、それまでわれわれにはおなじみでなかった英単語を普及させ、そして同じようにたくさんの映画のハイライト場面を集めた名場面アンソロジー映画ともいうべきジャンルを確立した。

東映もその流れに乗って、「ちゃんばらグラフィティー/斬る!」(1981年)なんてのを作ったっけ。

そんなわけで1982年に製作されたのが「It Came from Hollywood

「It Came from……」というB級SFホラーの定番みたいなタイトルからもわかるように、こちらは、いわゆるB級以下の安物映画の名場面集だ。いや、「名場面」じゃないか、「迷場面」か。

ダン・エイクロイド、ジョン・キャンディ、チーチ&チョン、怪女優ギルダ・ラドナーが案内役をつとめ、山ほどの安物映画を笑い飛ばし、ツッコみまくるという、なかなか楽しい映画だ。

取り上げられる映画は多分100本以上あったのではないか。ジャンルはSF、ホラー、サスペンスなどからドラマやミュージカル(!)にいたるまでけっこう幅広い。「ゴリラ」「脳みそ」「反マリファナ」など、かなりテキトーなテーマ別のコーナーに分けられていて、それぞれをコメディ俳優たちが語る構成は「ザッツ・エンタテインメント」を踏襲している。

ただ、形式は「ザッツ・エンタテインメント」を踏襲しながらも、あつかう映画は、名作ぞろいのあちらとはあまりにも違うんだよね。

そう、ここであつかわれる映画はまさに玉石どころかクズ石がほとんど。見た当時、すでにけっこうな映画マニアだった私でも、見たことがない映画がほとんどだったし、なんの映画なのかさっぱり意味不明のものも多かった。でも、「大アマゾンの半魚人」とか「ハエ男の逆襲」とか、あの「ロボットモンスター」とか、当時は動くのを見るのがむずかしかった映画を、断片とはいえ見られたのは収穫だった。

注目すべきは、史上最低映画「プラン9・フロム・アウター・スペース」(1959年)の「巨匠」として知られるエド・ウッド・Jrの特集コーナーがあること。かの有名な女装映画「グレンとグレンダ」(1953年)のダイジェストも見られる。当時はなんだかさっぱりわからなかったもんだが。

ティム・バートンが伝記映画「エド・ウッド」(1994年)を製作してエド・ウッドが再評価(評価?)されるよりも、10年以上前のことだから、先見性というか、まあなんだな、そんなようなものもあったらしい。私はこれを見ていたので、10年後に「ああ、エド・ウッドなら知ってるよ」とか自慢できたもんだ。

取り上げられているクズ石には東宝のゴジラ物など日本映画もまざっていて、宇津井健の「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」のさわりが見られたりするのは、当時は貴重といえば貴重だった。

ほかにもヨーロッパやメキシコの映画も入っているから、「It Came from Hollywood」というタイトルには偽りありだが、それもこのジャンルならアリだよな。

とはいえ、私の記憶もかなり怪しくなってきているので、細部はよく覚えていない。

というのも、この映画、私は輸入盤のレーザーディスクで持っていたのだが、この盤がかなりの粗悪品で、買っていくらもしないうちに、見えなくなってしまったのだ。初期のレーザーディスクにはよくあったことだが。けっこう高かったのに

その後、アメリカ本国でもほとんど再ソフト化されず、日本国内ではついにまったくの未紹介に終わったこの「It Came from Hollywood」 ひょっとしたら何か著作権上の問題でも生じたのだろうか?(なので、タイトルの邦題は私が勝手につけました)

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