WHO IS 衛斯理 ? 〔續集〕

前回からのつづき。

で、そもそも衛斯理とは何者なのか?

「セブンス・カース」の時期には、衛斯理のことを「冒険家」とか紹介した資料も多かったが、これは間違い。たぶんインディ・ジョーンズのイメージに毒されたのだろう。ほんとうは、衛斯理は「SF作家」である。

香港で刊行されている原作小説の著者はすべて「衛斯理」名義。つまり、冒険好きなSF作家・衛斯理が、自分の体験した怪事件を語るというのが、このシリーズなのだ。数々の怪事件に遭遇、それを自ら解決し、記録するというスーパーマン作家。

私もSF作家は何人か知っているが……そんな奴はいない

やはりリアリティに無理があると感じるのは誰しも同じなのか、映像化された衛斯理シリーズを見ても、彼が作家であることを示すシーンはほとんどない。「飛龍伝説オメガクエスト」でサミュエル・ホイ演じる衛斯理が自作の本を見てニヤニヤするシーンがあるが、真面目に執筆するシーンがあったのは「老猫」のリー・チーホンくらいか。他の作品では、そもそも作家ですらない設定に変更されていたりするし。

さて、前回の続き。ネット資料の充実のおかげで、15年前に調べた時にはつかみ損ねていた作品がいくつか見つかった。

「セブンス・カース」と同じ年に作られたのが「海市蜃樓」(1986)。原作は『虛像』。かなり大幅な脚色がされているらしく、衛斯理は新聞記者になっているとか。「シャンハイ・ヌーン」に出ていたユー・ロングァン(于榮光)が、その衛斯理記者を演じている。

翌1987年に公開されている「朝花夕拾」は、かなりの謎。原作は女流作家の亦舒の小説で、衛斯理とも原作者ニー・クワン(倪匡)とも無関係なのだ。2037年と1987年の時空を超えた男女のロマンスを描くストーリーらしいが、そこになぜか衛斯理が組み込まれているようだ。とはいえ、衛斯理を演じるのが「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」のロイ・チャオ(喬宏)だというのだから、ちょっと見てみたいぞ。ほんとに衛斯理なのかどうかは知らんが。

さらに1990年には「漫畫奇俠」というのがある。ここでは原作者のニー・クワンが自ら衛斯理を演じているらしいのだが、これは原作を映画化したものではなく、パロディ的な作品のようだ。

その後に前回も触れた「衛斯理之霸王卸甲」や「老猫」「少年衛斯理」が製作されたのだが、90年代半ばからのしばらくの間、衛斯理シリーズの映画は作られていなかった。だが、香港が中国に返還され、時代も21世紀に入ってから、衛斯理シリーズは復活した。

ブルー・エンカウンター」原題:衛斯理藍血人(2002)原作タイトルは『藍血人』 青い血を持ったエイリアンとの遭遇を描く。衛斯理を演じたのはアンディ・ラウ(劉德華)だが、設定はアメリカの研究所の研究員に変更されている。日本でも2003年6月に劇場公開。いまのところ、「セブンス・カース」とこれだけが、日本でちゃんと公開された衛斯理シリーズだ。

現時点で最新の衛斯理シリーズ映画らしいのが、2006年に香港で公開されている「犀照」だ。同タイトルの小説が原作だが、残念ながら脚色されて、衛斯理は登場しないらしい。

そういえば、衛斯理にはちゃんと妻がいる。原作の初期に登場して結婚し、以後ずっと寄り添っている(らしい)愛妻、その名を白素(パイスー)という。映画化シリーズにもちゃんと出てくることがあり、演じたのは、「セブンス・カース」ではシベール・フー(胡慧中)、「飛龍伝説オメガクエスト」ではジョイ・ウォン(王祖賢・ただし妻ではない設定)、「朝花夕拾」ではマリー・チャン(張瑪莉・もとミス香港)、「老猫」ではクリスティーン・ン(伍詠薇)、「ブルー・エンカウンター」ではスー・チー(舒淇)と、ちょっとした美人女優オンパレードだ。うらやましいぞ。

原作者のニー・クワンは1935年生まれというから、80歳くらい。まだまだ小説を書くんだろうと思っていたが、2005年の『只限老友』を衛斯理シリーズの最終作としているようだ。だが、別の作家が公式の続編を書き継いでいるようなので、衛斯理シリーズ作品はこれからも増え続けるだろう。次なる衛斯理の登場と、それが日本でも見られることを期待しよう。

  映画つれづれ 目次

【追記】 2017/9/11 未発売映画劇場「ミラクル・ポイント 霸王卸甲」

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