デブで悪いかっ!

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健康診断のたびに「太り過ぎ」「BMIが」「内臓脂肪が」とか言われ、ここ数年はすっかり「メタボ」って認定されてるんですが、それが何か?

私は、昔からプロレスと相撲が好きなので、太っていることが悪いことだなんて、1ミリも考えたことがないんだけどね。よく言うように格闘技では「技量が同じなら、体重が1グラムでも重いほうが有利」なんだから、その利点を手放す気なんてこれっぽっちもない。べつに格闘技やらないけど。

それに、もう今から身長は伸びないだろうから、せめて体重くらいは増やして、成長の証しとしたいじゃないか。

まあ戯言はともかくとして、かようにデブに抵抗のない私は、当然ながら映画俳優でもデブは大好きである。デブのほうが迫力あるし

私認定の最高傑作のひとつ「007/ゴールドフィンガー」の悪役ヒーローであるオーリック・ゴールドフィンガーを見よ。あの巨体を抜きにして、ジェイムズ・ボンドを圧倒する迫力が出せただろうか。大犯罪者にして大富豪たるキャラクターを納得させるのに、あの体は不可欠。大犯罪計画を語り、実行し抜けるのも、あの体躯ありきのゆえだろう。もちろんゴールドフィンガーを演じたゲルト・フレーベは名優中の名優なので、ただのデブではない。実力あるデブ

迫力という点でいえば、ブライアン・デネヒーも忘れがたい。「ランボー」でスタローン演じるランボーをさんざん追い詰め、最後には泣かせちまったあの保安官だ。のちのランボーのスーパーぶりを考えれば、追い詰めたデネヒーの迫力が尋常でないことは、容易に察しがつく。怖いデブ。「シルバラード」での悪徳保安官とか、80年代のデブ悪役ナンバーワンだ。

異様な迫力のあるデブでは、ビクター・ブオノの右に出るものはいない。不気味さマックス。「何がジェーンに起ったか?」とか「ふるえて眠れ」とかで60年代から存在感があったが、なんといっても「ザ・ブッチャー」の肉屋に尽きる。不気味なデブ。人を殺してはソーセージにして売るという恐るべきストーリーだったが、容貌怪異のブオノあっての怖さだったよ。知らないか。

チャールズ・ダーニングも演技力のある重厚な俳優だが、デブであることに異論はあるまい。「スティング」の悪徳刑事が印象に強いが、なんと「合衆国最後の日」ではアメリカ大統領まで演じている。なんか説得力あったぞ。偉そうなデブ。ただ、昨今のアメリカ大統領選挙では、デブは人気が出なくて勝てないそうだ。理不尽なことだ。

悪役でない、いいデブならば、ドム・デ・ルイス。メル・ブルックス一家の中心メンバーの一人で、愉快なデブ。「サイレントムービー」で無声映画を作るお笑い三人組の一人なのだが、いつも何かモグモグ喰ってるのが、いかにも。「ブレージングサドル」で最後のほうに出てくるオカマの演出家もいい味だった。

「007/死ぬのは奴らだ」でまぬけな保安官を演じて有名になったクリフトン・ジェームズもデブだ。おまけに下品だ。いいね、下品なデブ。それでもすっかり場をさらい、つづく「007/黄金銃を持つ男」にも出演したんだから、文句はない。ちなみに、「ジャガーノート」の政治家役など、シリアスな役でもデブらしい迫力を出せる俳優だ。

テレンス・ヒルとの風来坊コンビで鳴らすバッド・スペンサーも、かなりのデブ。だが、前に書いたように、もともとはオリンピック選手だったくらいなので運動神経は抜群。だから脂肪太りでない、固いデブだ。相棒のテレンス・ヒルが細いので、やたらデブに見えるが、ヒルのスピードに対して、こちらはパワー。とくに喧嘩のときのパワーは強烈だ。さすがは元アスリートってところか。

アジアでナンバーワンのデブといえば、デブゴンの異名をとるサモ・ハン・キンポーにつきる。こちらもカンフーの名手でアクションおまかせの、固いデブ系だが、見た目はスペンサーよりもだいぶ柔らかい。ジャッキー・チェンやユン・ピョウとからむと、そりゃあ太く見えるのも仕方ない。あの2人に動き負けないんだから、凄いもんだ。動けるデブ

香港映画界にはもう一人、ケント・チェンというビッグなデブがいる。ジャッキー・チェンの「新ポリス・ストーリー」のあいつだ。あの映画では迫力ある悪役だったが、コメディなんかも上手だし、怪しげな成人向け奇案片から文芸大作まで、何でもこなす演技達者。器用なデブだな。

近年ではフィリップ・シーモア・ホフマンがデブ俳優の筆頭か。「誰よりも狙われた男」では、誓約を守ろうとする誠実なデブを演じていたが、まあこの人はデブである云々以前に演技力のある名優だよな。デブ俳優なんてジャンルにくくってしまって、ゴメン。

よく言われるのが、デブは長生きできないという格言(?)だが、こうして並べた名だたるデブ俳優たち、じつは総じて長生きだ。

ブオノと、最近死去したホフマンだけは40代で早世したが、あとはおしなべて長寿。フレーベは75歳、ダーニングは89歳、デ・ルイスも76歳まで生きたし、ほかは健在。クリフトン・ジェームズなんて1921年生まれだからもう94歳くらいのはずだが、まだご存命だ。ほーらね。

というわけで、ダイエットもトレーニングも、全部中止だね(それじゃダメじゃん)

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