行政書士試験は、独学か予備校か


1.予備校に行くべき人

(1)結論


 結論からいえば、

① 費用が工面できるのに予備校に行くべきか迷っている

かつ

② 次の試験に絶対に受かりたい

のであれば、予備校に行くことを強くお勧めします。

(2)なぜか

 まず初めに示しておきたいのは、私は今回の試験に独学で挑み合格してい(ると思われ)ます。法律学習には5年前後のブランクがあるものの、司法試験を受講した経験があります。その際には司法試験予備校に通った経験もあります。
 なおその際は、論文式試験の対策講座のみを受講しており、短答については完全に独学です。

 したがって、このあと、なぜ予備校に通うべきかを懇々と説きますが、決して自らが行政書士試験の予備校を受講したからといったものではなく、一般論として合理的であると述べるにすぎません。
 つまり、別に予備校の肩を持つものではありませんし、この記事を書くにあたって講座の紹介ページを読んで感じたことは、どの予備校も無駄に高いという感想のみです。
 


 高い予備校代が掛かるにもかかわらず、予備校に行くべきかを悩んでいるということは、少なくともあなたは、行政書士試験に通過するためにどのような学習をすべきかという方針が定まっていません
 法律関係の資格は無限に時間を消費できます。たとえば、民法だけでも1000時間や2000時間を消費できます。

 予備校に行くと、効率よく知識を吸収できる使えるため、あなたが完全な初学者~法令科目で足切りを食らう程度であれば、最低でも100時間、人によっては300時間程度は勉強時間の節約が見込めます。
 あなたが働いて得る賃金は時給換算でいくらでしょうか?あなたが予備校に行くかどうかを悩んで消費する時間はどの程度でしょうか?


 独学で学べば数十万円の予備校代を節約できます
 他方で、予備校に行って、100時間程度しか総勉強時間を節約できず、時給換算で1500円で働いているとしましょう。この場合、独学で学んだことによって、15万円相当を損しています
 もちろん、節約された時間も勉強に回すべきですし、その時間を仕事に回すとは限らないじゃないか!というご批判はその通りです。
 しかし、予備校代が額面ほど高くないという消極的な理由以上に、予備校に行くメリットがあります

2.予備校のメリット、デメリット

(1)予備校のメリット

・試験に必要な知識を効率よく得られる

  行政書士試験での法令分野での出題は、初学者からすると複雑です。また、範囲も広いです。
 そうすると、ただただ暗記だけで突破するということが困難です。正確には、暗記はできますが、すぐに記憶からなくなります。
 おそらく多くの独学での失敗は、勉強時間が少ないか、このただ暗記だけする事項が多いということに尽きるような気がしています

 しかし、理解が伴うと、記憶からはそう簡単に消えません
 かといって、すべてを理解すべきかというと、そうではありません。
 抵当権に基づく物上代位について、第三債務者保護説と優先権保全説の対立なんて理解の必要がありません。

 どこまで理解が必要で、どこまでの理解が記憶にとって有用で、どこまでの理解は不要なのか、この判断は特に初学者にとって困難です。
 予備校では、講義時間という限られた時間のなかでこれを示されるので、これを参照できるのは非常に大きいメリットです。


 
・学習方法の一般化ができる

 今回の文章理解出の出題も一般化に関する問題で発言の趣旨が理解できた方は多かろうと思います。

 私は今回独学かつ長短時間で合格しましたが、元司法試験受験生という特殊事情があります。
 多くの独学での合格者は、法学部出身だった、法律事務所で事務員をやっていた、会社で法務部や総務部で働いている、他の法律系資格の合格経験予備校通学経験がある、可処分時間がきわめて多い友人に弁護士等がいて面倒を見てもらっていた、……などなど、一般化しにくい事情があったりします。
 したがって、独学でこう勉強したら受かったという情報は、知識面としては有用ですが、方針決定に際しては有害でさえあります。時間がないのにその参考にしている人と同じように多数当事者の債権債務関係に10時間もかける必要ありますか?

 しかし、学習するに際しては、何かを参考にせざるを得ません。

 予備校やその講師は様々な合格者を見ています。自らが合格した経験のみならず、教え子にどの程度の可処分時間があるかや、どの程度の知識があるかを把握し、どのような勉強をした結果、受かった、落ちたという情報や経験を多数有しています。
 多くの事例から自らに合っている可能性が高い学習方法の提案が受けられるのは、非常に大きいメリットかと思います



・自らの学習の弱点がわかる

 独学では、どうしても自分の学習に穴が生じます。その穴を自ら埋めるのは不可能です。

 (例)テキストや肢別本とよばれる一問一答式の問題集で対策するとしましょう。一通り読んで、肢別本を解いたところ、20パーセント程度ミスをしました。翌日復習しミスした問題を再度解き、最終的に4パーセント程度ミスをしました。この問題を当日用に会場に持ち込みます。

 これは確かに自らの穴を埋めるのに有用です。しかし、最初に解いた80パーセントは本当に理解して解答していますか?この問題の債権が債権譲渡によって移転していたものだったら結論は変わりますか?そもそもその本は、出題可能性のある分野をカバーできていますか?
 今回は使用していませんが、私の手元にある民法の肢別本は、債権法改正前のものですが、それでも3000問以上あります。問題をこなして穴を埋める方策としては過剰です。

 予備校は、理解しておかなければならないことは、講義形式によって提供されることが多く、基本的に提供されることは理解しなければ意味がありません予備校講師は、講師間の競争により、高い受講料を払う受講者の批判にさらされ、理解のしやすい講義に研鑽を重ねています。その講師による講義を理解できなかったのは、少なくともあなたの理解が足りません
 これは別に悲観すべきことではなく、単にあなたの経験に合いにくい知識であるにすぎませんが、理解する必要のあるあなたの行政書士試験に対する穴です。
 このような穴埋めの作業を無自覚のうちに行うことができることは、問題に対する正解率や当日の不安感の解消に際しても大きなメリットとなるでしょう



(2)予備校のデメリット


・費用が高い

 これは、予備校をためらう最も大きい障害です。
 安いもので5万円から、20万円を超えるものまでさまざまなものがありますが、決して安い出費ではありません。
 また、これに加えて、六法や副教材、直前対策講座や模試などの出費もあるため、正確にはわかりませんが、高いと30万円程度の出費は覚悟しなければなりません。

 初学者が受かるに際しては、そんなに高いとはいえないのではないか、というのは前述のとおりですが、すでに法学を学んだことがある人にとっては躊躇われます。
 金銭的余裕があり、かつ前述のメリットに魅力があれば、予備校を否定するまではいかないでしょうか。


 余談ですが、この金額を払うから、資格を取らないといけないという学習の動機付けに利用する例を見たことがあります。
 まあ予備校に行く背中を後押しする事情にはなるのではないでしょうか。



・可処分時間と合うかが問題となる

 これは私が今回予備校利用をしないこととした最も大きい点です。
 私はトータルで勉強時間を150時間しか確保できませんでしたが、この時間内で予備校の講義を受けるのは無謀です。
 週に2.3時間しか勉強しないのに、それをすべて予備校に充てると、講義を受けるのみでアウトプット不足になる、または、講義の後追いにどんどん追いつけなくなるといった事態が生じえます。

 この点は、ある程度予備校側も対応しているとは思いますので、気になる予備校があれば問い合わせてみるのがいいかと思います。



・過剰に煽る

 予備校も商売で、特に行政書士は法律系としてはコスパが良いといわれ、競争も激しいです。
 そのため、受講者を確保するために煽ります

 来年度の行政書士講座の無料公開分の中で語られるのは、今からでも予想できます。「地方自治法は難化傾向にあり膨大な内容だが、試験で問われていることは限られている。」だとか、「これまでの一般知識が変わって、~~」だとかです。基本的に、どういうことが問われるのか、というところまでは明かされないので、それを知る(かもしれない)他の受験生と比較して焦るわけです。
 そのため、余計な出費をさせられます。または、過剰に対策してしまいます。


 また、予備校は、過剰に行政書士試験を評価する傾向にあります。
 コスパが良いといってみたり、独立開業ができるといってみたり、様々なメリットを示します。
 そういう意味では、本当に行政書士の資格が、自らにとって必要であるかも問われるべきかもしれません。あって損はありませんが、手に入れるためには、それなりの時間が必要です。それなりの時間を使って手に入れるべき資格でしょうか。


3.代替手段

 以上から、予備校を迷っている方の障害となるのは、主に金銭面と可処分時間との関係となりますが、ここで予備校に通わない=独学での手段についても見てみましょう。私の今回のメインの勉強方法なので、体験談込みです。

(1)YouTube

メリット
 ・無料です。費用が要りません。
 ・一応合格者であることが多く、完全な独学よりは効率の良い理解ができます。
 ・また、YouTuberもそれなりに準備してくるので、ある程度内容の正確性が担保されています。のみならず、受験後に情報に接しましたが、弁護士が行う講義などもありました。
 ・予想動画など、有用なものがあります。特に、2023年の所有者不明の土地に関する民法改正や、一般知識の出題可能性のある分野については、YouTubeでフォローしました。

デメリット
 ・その学習方法で合格したのが、本人に限られます。学習方法の教示にしても、法律内容の説明にしても、それが受かるための必要十分条件なのかわかりません。
 ・動画の多くが冗長です。動画の長さに制限がないので、いくらでも説明に時間をかけられます。そもそもの無駄も多いといえます。二倍速で再生するなどすることもありますが、あまり賢い手段とはいえないという感想を持ちました。
 ・記述や知識が正確でない場合があります。会社法で「財産価額」ではなく、「財産価格」と表記していたり、問題解説で誤った理由で選択肢を判断するものがありました。人間である以上致し方ないのですが、予備校でこういうことをすると受講生から指摘されて訂正してくれるということもあるので、予備校との比較ということで指摘します。


(2)予備校テキスト


メリット
 ・予備校に通うのに対して、非常に安く済みます。私は色々と取捨選択と工夫をした結果、今回使用した教材、問題集の出費総額は約6000円でした。
 ・網羅性があります。また、類似制度間の整理などもしてくれるので、自力でやるよりもかなり楽に済みます。覚えやすさを重視したような整理もあり、取り組み方次第では、これのみでの合格は初学者でも可能と思えるほどでした。

デメリット
 ・十分に合格できる程度の情報が記載されているにすぎず、出題のすべてを網羅しているわけではありません。したがって、これには載っているがこれには載っていないなどと、教科書が増える現象が生じます。その結果すべて消化不良で点数も伸びないというのは、資格試験あるあるです。いくら安価で有用でも使用には気を付けましょう。



4.終わりに


 初めてのnote作成でしたが、行政書士試験終了後から早い段階で話題になっていたため、参考になればと書きました。
 途中まで書いた以上は書き切ろうと、ひと段落つくまでの作成を終えましたが、予想以上に時間がかかりました。体裁がぎりぎりととのっているとの判断をしましたので、公開いたしました。

 以下は、当初作成を予定していた項目ですが、まだ合格が確定していない者が作成したものに需要が見込まれませんでした。作成については、スキの数や反響を加味してこの記事に有料部分を追記する形にしようと思います。
 長文でしたが、ご覧いただきありがとうございました。何かお役に立てたのであれば幸いです。

5.それでも独学で目指す

・信頼できた無料資料(具体例)
・おすすめの予備校や選び方(簡易な方針)

・まず始めにしたこと
・全体の学習方針
・民法の学習方針
・行政法の学習方針
・一般知識の学習方針
・その他法令の学習方針
・節約とテキストの選定(具体例)
・学習スケジュール
・学習の結果
・本試験
・反省と改善
・知識の定着において気を付けていた点

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?