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カーリングと青い鳥


吉田知那美さんの言葉

平昌オリンピックで銅メダルを獲得し、故郷の北海道北見市常呂町に帰ってきたロコ・ソラーレの吉田知那美さん。集まった地元の方々の前での挨拶の中での言葉です。

正直この町、何にもないよね。
この町 小っちゃい時は何にもなくって
この町にいても絶対に夢は叶わないって思ってました。
だけど 今は、ここにいなかったら叶わなかったなって思ってます。

吉田知那美 2018年2月27日 常呂町にて

2022年の北京オリンピックでロコ・ソラーレが銀メダルを獲得し、カーリングが盛り上がるとカーリングを特集した番組が放送されました。いくつかの番組でこの挨拶の映像が使われていました。
私はテレビを見ながら、何となくメーテルリンクの「青い鳥」を思い浮かべたのです。


幸せの「青い鳥」

何となく連想した「青い鳥」。子供の頃に絵本かなにかで読んだのか、何かしらの形で私にインプットされている情報はこんな感じです。
「兄妹が青い鳥を探しにいったが見つからず、帰ってきて家にいる鳥をみたら青い鳥だった。幸せは案外と身近にあるものだ といったことを教えてくれるお話」
雰囲気で知那美さんの言葉と共通点がありそうな感じがしたのですが、安直にこの二つを結びつけてよいものでしょうか。


もう一つの「青い鳥」

吉田知那美さんに関する青い鳥といえば、「ロビンズ」の小学生時代のユニフォーム。左胸のエンブレムに青い鳥「コルリ」が描かれています。
以前、ロビンズのロビン「コルリ」に関する記事を書いていますので、よろしければこちらの記事をどうぞ。

上の記事は私の推測ですが、ロビンズのチーム名の由来について聞いてくれた竹田聡一郎さんの記事はこちらです。

小栗祐治さん、やっぱりバードウォッチングが趣味だったんですね。ちょっと嬉しい。


メーテルリンクの「青い鳥」

ロビンズで「青い鳥」に縁がある知那美さん。せっかくなのでメーテルリンクの「青い鳥」をあらためてちゃんと読んでみることにしました。
購入したのは
モーリス・メーテルリンク 訳:江國香織「青い鳥(新装版)」講談社 

以降であらすじの記載、引用がありますので、読書を楽しみたい方はご注意ください。


「青い鳥」をちゃんと読んでみた

あらすじは
「兄妹の名前はチルチルとミチル、妖精ベリリュンヌに病気の娘のためにと頼まれ青い鳥を探しに出ます。光や水や火、パンや砂糖やミルク、犬や猫の精たちとともに物の本質を見ることができる帽子を持って、記憶の国、夜の城、月夜の森、幸福の館、真夜中の墓地、未来の王国を旅します。結局、青い鳥は見つけられず家に帰りますが、家にいた鳥が青くなっていることに気付きます。その青い鳥を隣に住む病気の娘に渡すと娘の病気が治ります。しかし、最後に青い鳥は逃げてしまいます。」

あらすじだけの表現だと読む前の印象とあまり変わっていないのですが、読んでみて、この作品のメッセージは単純に「幸せは案外近くにあるものだ」だけではないと感じました。この作品の重要なポイントは「ものの見方」もしくは「ものの捉え方」にある気がします。
貧乏な家に生まれたチルチルとミチルは裕福な家の生活を羨みます。青い鳥を探す中で、いろいろな場所でいろいろな「ものの見方」を経験します。帰ってきた家は何も変わっていないのに旅に出る前よりもずっと素敵にみえるのです。
旅に出る前は他人との比較でものごとを判断し、自分が置かれている環境の本質的な価値をみることができなかったのだと思います。
物語の最後に青い鳥は逃げてしまいますが、旅での経験を得たチルチルの覚悟は印象的です。

「心配ないよ。泣かないで。またつかまえてあげるから。」
チルチルは言いました。旅をおえたチルチルには、何度でも、青い鳥を見つけられることがわかっていました。何度でも、探すしかないことも。しあわせになるために、青い鳥が必要なのですから。

モーリス・メーテルリンク 訳:江國香織「青い鳥(新装版)」講談社


知那美さんはチルチル

やっぱり知那美さんがチルチルに思えてきました。
チルチル(知那美さん)とミチル(夕梨花さん)は妖精ベリリュンヌ(小栗祐治さん)に物の本質を見ることができる帽子(カーリング)を与えられ、
光の精(夕湖さん?)たちと青い鳥(オリンピックのメダル)を探すように頼まれます。
いろいろな場所でいろいろな経験をして、家(常呂)に帰ってきます。
そして、本質的な「ものの見方」をみんなに教えてくれたのが、冒頭の言葉なのかなと思います。

2023.07.21


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