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【理学療法士向け】回内足と回外足について

回外足と回内足とは?

足部には、前額面・矢状面・水平面での運動を同時に含む動きが二つあります。

それらの動きを回外と回内といいます。

つまり回外と回内の動きは、三平面運動になります。

この回外と回内は、距骨下関節の前額面運動として捉えることができますが、三平面運動を測定するための指標として用いています。

なので、回外または回内位を把握できれば、距骨下関節の三平面の動きを簡単に把握できますよということになります。

回外は、足部が内転・底屈・内反で構成される動きになります。そのため、回外足は足部が内転・底屈・内反位であることがわかります。

回内は、外転・背屈・外反で構成される三平面運動です。そのことから、回内足を取る足部は、上記の外転、背屈、外反位にあることを推定することができます。

内転足や凹足などの言葉は、構造上固定した肢位を示すものとして使われます。

例えば、内転足や外転足は足部が内転、もしくは外転で固定されている状態で、構造上固定した肢位を示します。

なので、同じように回外、もしくは回内で構造上固定された肢位を回外足、もしくは回内足と捉える事ができます。

回外足と回内足の評価方法

まず回外足と回内足の判別はどのように行えばいいのでしょうか?

通常これらは、距骨下関節の評価で表されます。

距骨下関節中間位は、踵骨後方2等分線が下腿遠位1/3の後方2等分線と平行になる肢位といわれています。

距骨下関節の全角度は約30°といわれています。そのうちの2/3は回外、1/3は回内に使用され、その境界を中間位ともいいます。つまり回外の動きは20°、回内は10°という事ですね。

The Foot Posture Index 

足部形態を視診、触診で正常足、回内(外がえし)足、回外(内がえし)足に分類する方法です。信頼性や妥当性が高く、点数化する事ができるので、指標として残す事ができます。この評価は自然立位で評価をしていきます。

1. 距骨頭の触診:足関節前方で距骨頭を触診する。回内は内側で、回外は外側で触知できる。

2. 外果の上下の曲線:外果の上下の曲線を触れて、下方のカーブをみて判断。回内にすると外果の下方の曲線が強くなる。

3. 踵骨の回内外:後面から観察し、踵骨の長軸の床面に対する傾きを計測する。

4. 距舟関節の隆起:隆起が目立てば回内、目立たなければ回外位。

5. 内側縦アーチ:カーブが潰れていれば回内、挙がっているなら回外位。

6. 後足部に対する前足部の内転/外転:後方から足趾が見える数を確認。回内なら外側で、回外なら内側で多く観測ができる。

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各項目において、0点は正常足、2点は回内足、-2点は回外足の可能性を示唆してます。

6項目の合計点が

・ 0点から5点は正常足

・ 5点から9点は回内足

・ 10点以上は著名な回内足

・ -1点から-4点は回外足

・ -5点以上は著名な回外足

このように点数で判断していきます。

距骨下関節について

距骨と踵骨による関節です。

前・中・後の距踵関節から構成されるのですが、非常に複雑な動きをします。

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距骨下関節の関節軸は、遠位・内側・背側から近位・底側・外側に走行しています。つま先から踵の方という事ですね。

距骨下関節の軸は矢状面から16°、水平面から42°の角度をなしています。

どの面にも平行ではないのでいろんな運動が生じます。その結果、三平面全ての動きが生じるということになります。

距骨下関節と運動連鎖

この距骨下関節というのは、のちに説明する足根中足関節や横足根関節にとても影響を及ぼします。

逆に、様々な部位からも距骨下関節に影響を及ぼすこともあります。そして足部以外にも影響を受けたり、与えたりします。

よくいわれる、運動連鎖です。基礎的なものになるので理解しておくと解釈に便利だと思います。

例えば、

脛骨の回旋が閉鎖運動連鎖closed kinetic chain(以下CKC)での距骨下関節の動きに密接に関係しているのはご存知だと思います。

・脛骨の内旋はCKCでの距骨下関節回内を伴う

・脛骨の外旋はCKCでの距骨下関節回外を伴う

それ以外にも運動連鎖により、骨盤や股関節の肢位によって距骨下関節に影響を及ぼすこともあります。

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下行性というのは足部より上の部位からの影響、上行性というのは足部から上部への影響になります。

あくまでも、開放性運動連鎖open kinetic chain(以下OKC)ではなくて、CKCによる連鎖ということに注意してください!これ知らないと考察ができなくなります。

距骨下関節の回内筋と回外筋 

最初に説明した通り、距骨下関節軸は矢状面から16度、水平面から42度に傾いた位置にあります。

この軸の走行と筋の位置を把握していると筋肉は距骨下関節にどんな作用を及ぼすかが非常にわかりやすいです。

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距骨下関節の内側に位置する筋は全て回外筋になります。

例えば、距骨下関節を交差する下腿後面の全ての筋(腓腹筋・ヒラメ筋・後脛骨筋・長趾屈筋)が回外筋となります。下腿前面では前脛骨筋が回外させます。

これらの筋作用が一つでも弱ければ、回内位になる可能性があります。

回内足の可能性があれば、これらの筋群をしっかりと精査する必要があります。

逆に回内筋は関節軸の外側を通ります。これに該当する筋は、長・短腓骨筋、長趾伸筋、第3腓骨筋になります。

ちなみに回内筋としては意外ですが、第3腓骨筋も強い作用を持っています。

第3腓骨筋は日本人の約5%は欠損して存在していないとされています。

腓骨の下部前面から起始し、第5中足骨底の背面に停止します。

長腓骨筋、短腓骨筋は足関節底屈作用があるのに対して、第3腓骨筋は足関節背屈と外反に作用します。

回外足が強い場合は、これらの筋出力も考慮しないといけません。

回外足や回内足の治療前後の確認の際には、底屈位歩行、背屈位歩行、外反位歩行、内反位歩行などをおすすめします。左右差も分かりやすいし、可動性低下や各筋の筋出力低下の評価も一緒に出来てしまいます。

例えば底屈位歩行で左右差があれば、下腿三頭筋の筋出力低下が示唆できるし、外反位歩行で左右差があれば、腓骨筋群の筋力低下が示唆されます。

足根中足関節(リスフラン関節)について

足根中足関節はリスフラン関節とも呼ばれ、3個の楔状骨と第1から第3中足こつ、立方骨と第4・第5中足骨が各々関節を構成しています。

第1から第5中足骨の運動は、一般に列(Ray)という中足骨の機能ユニットとして捉えられています。

第2から第4列は運動軸が水平面と前額面に平行な位置にあり矢状面上で底背屈運動が生じ、第2中足骨底はもっとも動きが少ないことで有名ですね。

第5列の運動軸は、距骨下関節と同一方向に走行しています。そのため距骨下関節と同様に三平面運動を起こします。

ちなみに、なぜ第5列がこのような機能を有するのか、歩行との関係性などはまだ明確にわかっていないようです。

第1列について

リスフラン関節についてお話ししましたが、距骨下関節の動きはリスフラン関節に影響を及ぼします。

その中でも、リスフラン関節の中の第1列があります。

第1列の動きは、内側楔状骨と第1中足骨の関節によって成り立ちます。

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第1列の軸は矢状面で底屈と背屈、前額面では内反と外反が起こります。

軸の関係上、底屈と外反、背屈と内反が同時に起こるようにできています。

第1列の全可動域は距骨下関節の肢位と関係しています。第1列の動きは、距骨下関節が回内するとき、比較的増加し、

回外する際は第1列の可動域は比較的減少することがわかっています。

距骨下関節は歩行や荷重のために足を固定したり、柔軟にしたりすることにより、前方への推進や足部へのストレスを緩和させています。

距骨下関節回外位はより関節を安定させ固定する事ができます。つまり第1列も同じように内反を引き起こすことになります。そして内反と同時に起こるのは背屈です。

同じように回内は距骨と踵骨を分離させてしまうので、不安定になります。足部の外反が起こり、第1列も同様に起こります。つまり外反、そして底屈です。

距骨下関節回外→第1列背屈・内反

距骨下関節回内→第1列底屈・外反

距骨下関節の肢位で第1列の動きも推測することができます。

ちなみに第1列の動きも筋の作用はとても関与します。

・前脛骨筋;主に第1リスフラン関節の背屈・内がえし

・後脛骨筋;主に第1リスフラン関節の内がえし

・長腓骨筋;主に第1リスフラン関節の外がえし・底屈

・母趾内転筋;主に第1中足骨の内転

・母趾外転筋;主に第1中足骨の外転・底屈

・短母趾屈筋;主に第1中足骨の底屈・外がえし

このあたりの筋力低下や筋柔軟性もしっかり観察してみましょう!

横足根関節(ショパール関節)について

横足根関節はショパール関節とも呼ばれます。内側の距舟関節と外側の踵立方関節から構成され、2つの運動軸を持ちます。

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運動軸は縦軸と斜軸からなり、

縦軸は矢状面と水平面にほぼ平行で、その運動は前額面上での回外・回内になります。

斜軸は前額面にほぼ平行になり、その運動は矢状面と水平面で生じ、底屈と内転、背屈と外転が同時に起こります。

また距骨下関節と横足根関節は連動しています。距骨下関節が回外した場合、横足根関節縦軸で回内、斜軸で底屈・内転(回外要素)します。また、距骨下関節回内の場合、横足根関節縦軸で回外、斜軸で背屈・外転(回内要素)します。このことは距骨下関節の肢位が横足根関節を含む前足部の肢位や関節運動に影響を及ぼすことを示唆します。

距舟関節と踵立方関節の2つの運動軸は、距骨下関節が最大回内位にあるとき平行な位置関係になります。この位置関係は、それぞれの間接運動の動きを阻害しない可動性のある柔軟な足部を形成します。一方、距骨下関節が回外位にあるとき、2つの運動軸は交差した位置関係になります。これは、それぞれの運動を阻害するように働くので可動域性の少ない足部を作るのに役立ちます。

足部は、距骨下関節が最大に回内しているときに、最も柔軟性のある状態にあります。

そのため、距骨下関節が最大回内位にあるときに、当然横足根関節が最も広い可動域をもつことになります。逆に、回外している時は最も柔軟性の少ない状態であり最も強固になり、横足根関節の動きは最小になります。

歩行周期中の足部運動

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遊脚相で、足部は最初に回内し、それから回外します。

体重負荷が始まると、接地期全般ではより足部を可動性のあるものにするために、距骨下関節は回内します。これはつねに一定ではない地面に対しての可動性のある調節器として作用することになります。

そして、距骨下関節が回内する接地期の後に、距骨下関節は推進期の終了直前まで回外していきます。すなわち立脚中期から推進期では回外する。

ちなみにOKCとCKCでは距骨下関節の動きが違うのは知っていますか?

これは歩行周期でも、遊脚相と立脚相で動きが変わることになります。

先ほども書いたように、遊脚相前半では回内、後半で回外していきます。

立脚相前半では回内し、立脚中期から推進期まで回外していきます。

OKCでは距骨下関節の回内と回外の構成は、踵骨のみの動きに依存します。

すなわち、OKCの回内は踵骨の外転・外反・背屈です。

回外では、踵骨の内転・内反・底屈です。

何故このようなことが起こるかというと、OKCの場合では距骨は下腿の延長上として機能することになり、距骨の周りを踵骨が動くということになります。

荷重では距骨と踵骨が一緒に動くことになりますが、非荷重では踵骨のみの動きになるということです。

逆にCKCになると、踵骨と距骨はともに動くことになります。

踵骨は前額面での動きになり、踵骨は内反と外反の動きしかしなくなり、距骨は水平面と矢状面での動きになります。まさに距骨下関節の動きです。

また荷重において、もしなんらかの動きが軸の近位にある骨に起こるのなら、その動きは主要な動きとされている方向とは逆の方向になってきます。

つまり、CKCでの距骨下関節の回内では、踵骨は外反しているが、距骨は矢状面と水平面に置いて、回内と逆方向の動きを示すことになります。つまり距骨は底屈かつ内転します。

逆にCKCでの距骨下関節回外は、踵骨を内反させます。そして、距骨が距骨下関節の運動軸の近位に位置しているので、CKCでの距骨下関節回外に伴い距骨は背屈、外転します。

なので歩行周期での接地期には、CKCでのST関節回内が生じると、踵骨は外反し、距骨は内転・底屈をし、

立脚中期と推進期では踵骨は内反し、距骨は外転・背屈しています。

足部アライメントと歩行の関係

先に解説した、運動連鎖のように、足部の動きで様々な動きを引き出すことが可能ですが、それと同様に歩行も変化を与えることができます。

これは、歩行時の足部の動きを把握することでさらに理解することができます。

例えば、

距骨下関節が回外になると、

・ 立脚期後半への移行を早くする
・ 足関節底屈誘導
・ 第1列可動域の減少

距骨下関節が回内になると、

・ 立脚期前半が長くなる
・ 足関節背屈誘導
・ 第1列可動域の増大

また、

第1列背屈になると、

・ 立脚中期後半での下腿骨前方移動の抑制
・ 足部の安定性、固定性の増加
・ 立脚中期後半からの前足部内反

第1列底屈になると、

・ 立脚中期後半での下腿骨前方移動の促通
・ 足部の安定性、固定性の低下
・ 立脚中期後半からの前足部外反

主に立脚中期後半から爪先離地までの範囲で影響を受けます。

なのでこのことからも距骨下関節や第1列に関与する筋肉の筋力や柔軟性を把握することによって、歩行や疼痛などの症状を変化させることや原因の推測を立てることができるようになります。

回内足に対するパッド

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回内足修正の場合にはパッドなどの選択もありです。

回内足の場合は距骨下関節パッドが重要になります。

場所は内果から真っ直ぐ下方に降りた場所にパッドを貼ります。

また、片脚立ちなどを評価尺度として楔状骨や立方骨、または中足骨などとアーチをつけてあげるのもありです。

回外足と回内足に対する理学療法の総括

説明したように、まずはどの筋の機能不全(柔軟性の低下、筋出力低下)が起こり回外足、または回内足が生じているのかをしっかり見極めなくてはいけません。距骨下関節の内側か外側かである程度作用する筋は把握できるので、ストレッチや運動療法によって適切な機能を取り戻すことが大事です。

また足趾機能も重要です。足趾機能とアーチは非常に関係があるため、足趾運動は必要になります。足関節背屈位での足趾運動や底屈位での足趾運動など、いろんな肢位で足趾が機能するのが一番好まれます。

タオルギャザーなども、もちろん取り入れる必要性はあります。

<h2>さいごに <h2>

今回は距骨下関節を中心に、そこからの波及や影響をまとめさせていただきました。

距骨下関節が回外足や回内足になると、周囲にどのような影響を与えるかが理解できると思います。

足部は地面に接する部位であり、様々な環境から影響を受けやすく、また自身の身体の左右差などにも多大な影響を受けやすい部位です。

この足部、特に距骨下関節を理解する事は、臨床をする上でかなり大きな力になるのではと考えています。

まだまだ研究されている事も多いですが、面白い部位でもあるので少しでも参考になれたらと思います。

また回内足に関しては、扁平足の記事の治療内容なども読んでもらえるといいと思います。

それでは。

<h2>参考文献 <h2>

1. 入谷誠:入谷式足底板:運動と医学の出版社の臨床家シリーズ,2011

2. ミハエル・セイベル:Foot Function:DynaGait,1996

3. 松尾善美:臨床実践 足部・足関節の理学療法:文光堂,2017


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