第四話 完全無欠な能力者達

 警視庁長官らの死因は、毒水であることが調査から判明した。自らが自身のコップに毒を盛り服用した。詰まり、自殺、それが調査から得られた結果であった。クーラがもし、盗聴を行っていた場合、それを世に知らしめれば、警察や国家の国民奴隷化計画を牽制することができるだろう。しかし、それは、民心が離れることに繋がってしまう。あの時、盗聴しなくてよかったのではないかと、今になってそう考えるようになってしまっていた。盗聴行為は軽率に行うものではない。いや、こういう犯罪行為は犯罪に詳しいからこそできるのではないか。犯罪を真に理解し、それを正しく用いた者こそ、正義。正義と犯罪の区別が明確にできないのは、全知全能者が我らに与えた疑念なのではないのか。そう思いながらも草原で愛馬を走らせていた。

 こんな時代になぜ馬を走らせているのかというと、クーラ・レル・ルザナギスの能力は遺伝子操作であった。そこら辺の遺伝子を操って馬を精製したのである。その際、魔法のように見せかけて綺麗な輝きを放たせ、馬を誕生させたりと、派手な演出(アクション)をよく取り入れた。今は休憩中、従って、大草原で馬を走らせている訳であった。

 クーラが馬を走らせている最中、本部から連絡が入った。その内容は以下であった。エルリン大佐率いる軍と『邪眼の姫』が接触し、大敗した。生存者の確認と救出を近くに居る者が行うよう指示する。その際、『邪眼の姫』との接触は避けよ。とのことであった。

「こちらクーラ、これより、エルリン軍の救出に向かう………」

 たまたま近くに居たクーラが、この任務を一任した。クーラは気付かれないよう馬から降り、徒歩で現場へと向かった。歩くこと25分、クーラは現場に到着した。軍は既に全滅していた。生存者を確認するも邪眼が相手となっては手も足も出なかったようだ。それもそのはず、邪眼とは、視界に入った生命体が全て死んでしまう。と言う恐ろしい能力であった。クーラは上層部に生存者は確認できなかった。と、同時に、邪眼の姿も確認出来なかったと報告した。だが、クーラの目の前には、綺麗なドレスを着用した金髪女性が立っていた。『邪眼の姫』と呼ばれた『スミカミ・ロー・レイラ』である。クーラは報告後、通信を切ってもう一度呟いた。

「確かに、邪眼の存在はもう…確認できませんでした」

 なぜ、そのように報告したのかというと、警察が手柄を横取りし、私利私欲のため、民心を惑わすのではないかと疑念を抱いたためである。もし、民心の信頼が警察に寄せられれば、国民は最早、誰一人として、国民奴隷化計画を疑わなくなるだろう。そうなることを恐れたのである。

………今ここに………遺伝子操作と邪眼が接触したのであった………

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