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①昭和:『太陽にほえろ!』
②平成:『踊る大捜査線』
③令和:『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』

この3つの作品から垣間見える
「時代の変遷」について書いてみたい。

①太陽にほえろ!

1972(昭和47)年~
1986(昭和61)年に放映。

「ボス」こと石原裕次郎さんが
若手の新米刑事を活躍させながら
事件を解決する、のが軸の物語。

ボスは「今日からお前はテキサスだ!」
などと、若手の新米刑事に
あだ名をつける
のがお約束である。

「マカロニ」「ジーパン」などの
新米刑事の衝撃の「殉死」シーンは
社会現象にまでなった。

「チョーさん」「山さん」
「ゴリさん」「殿下」など、
脇を固める味のある刑事たちにも
根強い人気がある。
まさに「大家族」的な、人情ある集団。
老・壮・青のバランスも、いい。
ただし男性に偏りがちのため、
ジェンダーギャップ感は、否めない
(シンコさんとか女性刑事もいたが
ジーパン刑事と結婚して退職)。

※ちなみに私が一番好きなのは、
「落としの山さん」です。

②踊る大捜査線

1997(平成9)年に放映。
2003(平成15)年には、
実写邦画での興行収入第1位の
「踊る大捜査線 THE MOVIE 2
レインボーブリッジを封鎖せよ!」

映画版として劇場公開された
(スペシャル版や他の映画版もあり)。

当時の都知事と同じ名字の
「青島」刑事が、主人公。
演じるのは織田裕二さん。
警察組織を会社になぞらえて
「本店」「支店」の対比や綱引き
軸に話が展開されていく。

「室井さん」こと、柳葉敏郎さん、
「すみれさん」こと、深津絵里さん、
「和久さん」こと、いかりや長介さん
など、脇を固める俳優陣も豪華だ。

ここで特筆しておきたいのは、
主人公青島刑事は、
偉いはずの室井さん、
バリバリ働く女性のすみれさん、
老いたベテランの和久さんに対して、
「対等」に接しようとしている点。
そこには、太陽にほえろ!的な
上下関係は、あまり見られない。

そこには、青島刑事が
「脱サラ」して警官になったという
「異色」のキャリアが影響している。
彼は、他の組織や仕事を経験してから、
警察に入っているのである。
いわば、「外の視点」を持っている。

だが、物語の中で展開されるのは、
「本店」に虐げられる
現場の「支店」の地味な仕事の悲哀…。
室井さんは徹底的に青島刑事に冷たい
非情な警察官僚、いわゆる
「キャリア組」である(徐々に変わるが)。
格差社会。
「対等」であろうとする青島刑事が
直面する「格差」が、この作品の見どころだ。

※ちなみに私が一番好きなのは、
「スリーアミーゴス」です。

③ハコヅメ ~交番女子の逆襲~

2021(令和3)年に放映。
元は週刊モーニングで連載の
漫画が原作である。

主人公は戸田恵梨香さん扮する
頼れる先輩警察官の「藤聖子」と、
永野芽衣さん扮する
新人警察官の「川合麻衣」。

二人は交番の「ハコヅメ」勤務だ。
よって、刑事が主人公の
①②とは、趣がだいぶ異なる。

二人の上司はムロツヨシさん扮する
「伊賀崎」所長。
よく出てくる脇役は
三浦翔平さん扮する「源誠二」と
山田裕貴さん扮する「山田武志」だ。
彼らは威圧的では、ない。
主人公たちとつながり、助け合う
「同志」として描かれている。

何よりも、女性の警官ペアが主人公、
男性は脇役、というところが斬新だ。
ジェンダーギャップ、解消…?
しかし、実際は過酷過ぎる勤務と
女性警察官ゆえの悩みなども、
しっかりと克明に描かれている。

川合はいきなり「辞職願」を手にする。
藤には「左遷」されてきたという噂。
いわば二人は警察組織内の
傍流であろう。
だからこそ、見えてくるものがある。
原作者の秦三子さんは、
実際に10年ほど女性警察官として
勤務していた漫画家だ。

だからこそ、このリアルで緻密な
警察官の心理描写が可能だったのだろう。

※ちなみに私が一番好きなのは、
新選組オタクの歴女「牧高さん」です。

さて、ここまで、①②③の概要を書いた。
そこから垣間見える
「時代の変遷」とは、何か?

①大家族・家父長制を象徴する「ボス」
②民間出身の「対等」と「格差」の意識
③女性ペアによるリアルな「仕事」

①は、いかにも昭和的である。
②は、いかにも平成的である。
③は、いかにも令和的である。

①は、指揮命令系統がしっかりしている。
殉死する新米刑事は、
自分のカンや人情を信じて暴走して、
そこからはみ出して「死ぬ」ことが多い。
個人の名前より、あだ名が前面に出る。
個人を描きながらも、組織が第一だ。

②は、その系統に対する異議申し立てだ。
映画版「2」では、上意下達の警察組織が
フラットで緩やかにつながる犯人たちに
嘲笑され翻弄されていく姿が描かれた。
最後には「指導者次第」というオチもつくが。

③は、その純然たる官僚的な組織の中で、
「できることをやる」末端の警察官の
サバイバルにして等身大の物語だ。
そこには、個人への賛歌がある。
組織があって個人があるのではなく、
個人があって組織が成り立つという視点。
まさに「逆襲」なのである。

結びとして、まとめたい。

昭和~平成~令和には、
「組織から、個人のつながりへ」
「イメージから、リアルへ」
「英雄から、等身大へ」
という
時代の変遷がある。

私が恣意的に取捨選択した
3つの作品を並べてみると、
その時代の変遷を見事に象徴している…
とは言えないだろうか?
私が本記事で一番言いたかったのは、
これなのだ。

…「西部警察」や「科捜研の女」、
田村正和さんの「古畑任三郎」、
「ハンチョウ 〜神南署安積班〜」まで
言及していくと、終わらなくなるので
このあたりまでに、しておきたい。

ここまでお読みいただき、
ありがとうございました。

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