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1、テロワールとは?

ワインの世界で使われる用語、テロワール

一言で言うと「ブドウ樹をとりまく環境すべて」です。

まずはこちらのブログ記事をご参照ください↓。

ワインは、どこで作られたワインなのかを、とても重要視しますよね。

フランスワイン、チリワイン、オーストラリアワインなど国の単位から、ブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方などの国内の地方単位、極端に小さく「畑単位」で区別する専門家もいるそうです。ブドウ樹は、それぞれの環境によって、できるブドウが異なります。そのため、ブドウを加工して作るワインも、それぞれの環境を重視しているということです。この環境そのものを、テロワールと言います。

しかし、すべてのブドウ品種が、テロワールを反映するわけではないようです。テロワールによって個性が変わりやすい品種と、個性が変わりにくい品種があるとのこと。先ほどの記事から引用します↓。

ブドウ品種の中にはテロワールの個性を映し出しやすい品種もありますが、中にはどこに植えても大きな変化がなく一定の風味のものもあります。
土地に応じて異なる香りや風味になりやすいブドウ品種の代表例が、上述のピノ・ノワールです。リースリングもそのうちのひとつで、専門家の中には「テロワールを映し出す鏡のような品種」「万華鏡」と呼ぶ人もいます。それに対して、テロワールの影響を受けにくい代表的な品種にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロがあげられるでしょう。本家本元のフランス、ボルドーを模倣しやすいという観点では他国の生産者にとってはある意味ありがたいことなのかもしれません。
このコントラストを取り入れたのが、2009年に公開された映画が「サイドウェイズ(日本版)」です。主人公の道雄がピノ・ノワール好きなのに対して、ヒロインの麻有子が自分と重ね合わせ「どの土地に行っても個性を見失わないカベルネが好き」といったシーンは今日でもテロワールの個性を反映しにくい品種のたとえ話としてよく用いられます。

◆土地に応じて変わりやすい:自分を変化させる:ピノ・ノワールなど
◆土地に応じて変わりにくい:自分の個性がある:カベルネなど

この記事で紹介されている「サイドウェイズ」(日本版)はこちら↓。

この映画では、小日向文世さんと鈴木京香さんが恋人役を演じています。…というか、小日向さんと京香さんと言えば、大河ドラマ「真田丸」で「秀吉」と「北政所」で夫婦役を演じたお2人じゃないですか…↓!

ちなみに、元々は2004年の映画「サイドウェイ」です。これを日本版にリメイクしたのが「サイドウェイズ」なんですね↓。

今回は、このピノ・ノワール的な「自分を変化させる」タイプと、カベルネ的な「自分の個性がある」タイプのお話をしたいと思います。

2、ピノ・ノワールと秀吉

ピノ・ノワールは、土地の影響を受けやすい品種です。

世界各地で作られていますが、その土地の影響を受けやすい。そのため、単一品種でワインが作られることが多いそうです。記事から引用します↓。

また、ピノ・ノワールはスパークリングワインの原料となる場合を除いて、いずれの産地でも他の品種とブレンドされずに単一品種でワインが作られることが多いのも特長です。
それは、ピノ・ノワールが他のブドウ品種に比べてテロワールに極めて敏感な品種であることから、多くの生産者がブドウ本来の個性だけでなく、土地の個性をもワインに表現しようとするからでしょう。

◆ブドウの個性×土地の個性=ワインで表現

もちろん、ピノ・ノワール自身にも個性があります。しかし、その個性は柔軟であり、「郷に入っては郷に従え」ということを受け入れるのです。

記事によると、フランスでは若いうちはフレッシュでチャーミングでライト、熟成するうちに複雑で奥深くなるそうですが、カルフォルニアやニュージーランドで作ると、もっと色合いが濃くなり、香りや味わいが力強くなるそうです。自分の軸はありますが、土地や環境に合わせて持ち味を変える。それがピノ・ノワール。

私にはこの品種が、豊臣秀吉に思えてきました。

「人たらし」として有名な豊臣秀吉は、相当な苦労人で人間通です。最初は醜悪な容貌から転職を繰り返し、時には奴隷のような環境で働いていたと言います。人間扱いされない、屈辱的な場面も何度もあったでしょう。それが、織田信長という希代の名伯楽、唯我独尊の君主によって、才能を見出されて、どんどん出世していきます。ここでは信長の忠実な手足となってひたすら働くのです。そこで起こった「本能寺の変」。彼はここから天下人へ駆け足で昇りつめます。それぞれの人生のステージや環境に応じて、時にはチャーミングでライトに、時には力強く、猿面冠者のように変幻自在に変わる様は、まさにこのピノ・ノワールに重なります。

大河ドラマ「真田丸」では秀吉役を小日向文世さんが好演されています↓。

小日向さん自身も、役者としての振れ幅が大きい、まさにピノ・ノワールです。しかしながら、振れ幅が大きくても安定しているのは、「自分の軸」というものをしっかり持っているからなのでしょう。

以前の記事でも取り上げた「プロティアン」的な生き方で言うと、変幻自在で柔軟でありながら自分の軸は持っている、という感じです↓。

3、カベルネと北政所

これに対して、揺るがない自分、どんな環境でも私は私、を貫くのが、カベルネという品種です。

この記事によると、カベルネの一品種「カベルネ・ソーヴィニョン」は、どの産地・どの価格帯でも、品種の個性がしっかり感じられるとのことです。記事から引用します↓。

あまりにも有名な品種ですが、その歴史は比較的新しく、17世紀にフランス南西部でカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランが自然交配して生まれました。耐寒性の強さ・病害や害虫に対する抵抗性の強さといった栽培上の長所がある上に、品種特有の個性がワインとして表現しやすいことも伴い、世界中に普及しました。
若いうちからしっかりとしたタンニンが楽しめ、熟成を経て優美で複雑な風味が生まれます。1,000円前後のワインからボルドーの5大シャトーに代表されるような高級ワインにまで幅広く採用されています。どの産地どの価格帯でも「黒系果実の濃厚な風味としっかりとしたタンニン」というこの品種らしい個性が感じられるところが生産者からも消費者からも広く支持される理由です。

つまり、ピノ・ノワールに比べて、自分の個性をはっきりと出す、ということです。どんな環境に置かれても。

私にはこの品種が、北政所に思えてきました。

北政所。きたのまんどころ。ねね、おねとも。豊臣秀吉の正妻です。秀吉との間に子どもは生まれませんでしたが、非常に夫婦仲は良かったと言われています。愛知県、昔の尾張の出で、方言丸出し。それは秀吉の出世によって、近江(滋賀県)に行こうが大坂城(大阪城)に行こうが変わらなかったそうです。豊臣家のゴッドマザー。加藤清正や福島正則をはじめ、尾張出身の武将たちは、この北政所を慕い、頭が上がらなかったとのこと。それは、彼女の飾らない気さくさと尾張弁に代表される素のままの個性が、みんなに愛されていたからでしょう。秀吉も北政所の前では、素の自分に戻れたのではないでしょうか。この揺るがぬ個性が、カベルネに重なります。

大河ドラマ「真田丸」では北政所役を鈴木京香さんが好演されています↓。

自分を貫く。一見、不器用な生き方に見えるかもしれませんが、キャラがわかりやすいというのは人を安心させますので、一周回ってとても器用な生き方なのかもしれません。その個性の安定感を求めて、世界中でカベルネは栽培されています。

この自分の軸を持っているという点は、繰り返しになりますが「プロティアン」に必須です(変幻自在とは言えませんが…)。カツサンドでも、カツカレーでも、カツ丼でも、トンカツはトンカツのようなものです↓。

相手がどれだけいても「かかってこいや!」と言える強さ。圧倒的な個性と安定力。「千万人と雖も我往かん」という感じです。

4、キムタクと熟成

いかがでしたでしょうか? 

今回の記事は、ワインの「テロワール」から、対照的なピノ・ノワールとカベルネに焦点を当てて、小日向文世さんと鈴木京香さん、そしてお二人が演じた秀吉と北政所を通して、自分軸というものを考えてみました。

俳優さんは「演じる」のがお仕事ですから、ピノ・ノワール的な「変幻自在」さが求められます。と同時に、キャラが立っていないと魅力が出てきませんから、カベルネ的な「個性」が求められます。ワインと同じように、齢を重ねて熟成されると、渋みや深い味わいも出てくるのかもしれません。

自分軸という観点から言うと、「プロティアン」的な生き方には、「変幻自在」と「個性」が同時に必要です。テロワール的な環境に振り回されて自分を見失ったり、逆に個性に固執しすぎて変化が全くできなくなったりすると、フットワークが失われ、人生のテイストが重くなります。

この記事の最後に、あの俳優さんについて書いて締めましょう。

そう、キムタクこと木村拓哉さんです。

今回の記事に即して言えば、個性重視のカベルネ的な俳優から、変幻自在のピノ・ノワール的な俳優に変わりつつある…と思われるかもしれませんが、この記事によると、そこまで単純な話ではないそうです↓。

「キムタクは何を演じてもキムタクだ」という誤解。受けの演技。人間そのものと演技そのもの。昨今のSMAPやジャニーズの波乱を経て、俳優としての木村拓哉さんがどのように今後熟成していくのか? そのようなことを考えさせる記事でした。私も誤解していました。とても参考になりましたので、良ければぜひ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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