見出し画像

コロン諸島。南米大陸の西に浮かぶ島々。
ほぼ、赤道直下に位置しています。
そのものずばり、赤道、という意味の国名を持つ
「エクアドル」という国の領土です。

かの有名な航海者「コロンブス」の島々。
Archipiélago de Colón。

これが正式名称ではありますが、
スペイン人は、この島に住むカメたちを見て
「ゾウガメたちの島だな!」と言ったそうです。
ゾウガメ、スペイン語で言えば、galápago。
…ここからこの島々のことを、
『ガラパゴス諸島』とも呼びます。

本記事は、このガラパゴスにまつわるお話です。

1835年のこと。この島に一人のイギリス人、
チャールズ・ダーウィンが現れます
(文字通り「ダーウィンが来た!」ですね)。
後に「進化論」で有名となる、自然科学者。
まだ20代の、若き学者。

このダーウィンは、ガラパゴス諸島において、
それぞれの島の生物は
原則、南米大陸と同じ生物だけれども
島の環境によって
少しずつ違うことに気が付きました。
「生物の種の進化」「分化」…。
この着想から、後にベストセラーとなる
『種の起源』を書いた、とも言われています。

ガラパゴス上空には強い貿易風が、
大陸から太平洋に向かって吹いています。
ガラパゴスの海中では速い海流が、
大陸からガラパゴスに向かって流れています。
要するに、片道切符。
一度この島々に着いたら、
生き物は元の場所にはなかなか戻れない。
いわば「隔離」された牢屋のような地理条件…。
(余談ながら、この島々は昔は
囚人たちの流刑地として使われていました)

このような地理条件の下、主に南米大陸から
島に辿り着いた生物たちは、
独特の環境に適応し進化し、子孫を残します。
その結果、このガラパゴスにしかいない
「固有」の生物が多数生息することになる。
「進化の実験室」とも呼ばれるゆえんです。
実験室と、若き学者ダーウィンとの邂逅が、
『進化論』が発展するきっかけになったのです。

…さて、時代は下りまして、現代のお話。
この「ガラパゴス」という名前は、
日本の社会現象、ビジネス用語にも使われます。
ただし、あまり良い意味でない、
危険をともなう警句として。

「孤島のような環境の中、ウチだけで
製品やサービスの最適化が進むと、
外界との互換性を失い、取り残されるぞ!」
「国際基準を持った製品やサービスが
ソト、外部から大規模に導入されると、
独自の進化を経た競争力・互換性のない
身内ウケだけのものは、淘汰されるぞ!」

…そんな意味合いです。

最もこの考えを有名にしたのは、
ガラケー、という言葉でしょうか。
ガラパゴスケータイ。略してガラケー。
日本の携帯電話は、国内で独自の進化を遂げ、
高機能になった反面、世界標準からは離れていき、
世界的にはそんなに売れなかった。

このガラパゴス化。ガラパゴス症候群。
実はケータイだけではなくて、
様々な分野で、散見されますよね。

例えば「軽自動車」です。
こんなに普及しているのは日本の話。
「外車」と言えばでっかい車、ですよね。
日本だけで運転していれば違和感はありませんが、
世界的にはこんなにちっこい車が
ぞろぞろ走っているのは、珍風景だそうです。
例えば「カーナビ」
ごちゃごちゃした道が多い日本でこそ
とても精密な道路地図が必要ですが、
世界的にはそこまでは必要ない。広いから。
なので、数万円の安い世界標準の
ポータブルナビが誕生し、日本に入ってきた時、
日本独自のカーナビ市場はかなり混乱しました。

いや、さらにさかのぼって言えば、
言葉や精神そのものも、そうではないか?

「日本語」は、世界標準とはとても言えません。
難解で、複雑な、暗黙の了解を多分に含んで
独自の進化を遂げてきた言語です。
日本では当たり前ですらある
「お・も・て・な・し」の精神も、
なかなか世界では見られない独自のものだからこそ、
五輪誘致のキーワードになり得ました。

「マンガ」「ゲーム」「アニメ」においても、
日本なら『萌え』『バトル』で許される表現が、
国外の世界標準に照らせば
『行き過ぎたポルノ表現』『暴力表現』として
処罰されうることも、あります。
江戸時代の「春画」が、「海外」では
神秘の極東の島々の秘術として
奇異と好奇の目で取り上げられ、
誇張されて伝わったのと、どこか似通っています。

…ちょっと話が広がり過ぎましたね。
無理に、まとめていきます。

日本は、島国です。
世界から見ればガラパゴス諸島と同じです。
ともすればナチュラルに閉鎖し、
独自の身内ウケだけしそうな進化を
遂げがちな島々
なのです。

その地理条件自体は、変えられない。
ガラパゴス化の傾向自体は、
空気のように、そこかしこに存在しています。

だからこそ、このナチュラルなガラパゴス化を
きちんと「ソト」の目で意識し、
自分で「客観的に」理解した上で、
他人に伝わるよう、理解してもらう努力をする。
そうせずに、ただ自分の独自性を認めろ!と
叫び続けるのは、自己満足、独りよがりです。

一概に、独自だから、世界標準だから、
良い/悪い、の話ではありません。
そうなりがちな傾向を「活用」したいのです。

日本で独自の進化を遂げた
「マンガ」「アニメ」「ゲーム」の分野では、
(先述したように一部に世界的には
受け入れられない要素はあるものの)
世界標準の波を乗り越えて、高い評価を得て、
世界中でバカ売れしているものも、あります。

ゾウガメから、マリオのカメ「ノコノコ」へ。
ガラパゴスから、世界的普遍的な存在へ…。

読者の皆様の会社やビジネスはいかがですか?
皆様自身は、独自の進化をしていますか?
世界標準を、意識していますか?
日々の発信は、どうですか?
風や海流に流される、片道切符になってませんか?

…かく言う私はまだ、マリオに蹴り飛ばされるレベル。
SNSを始めて数年目の、ただのgalápagoです。
のこのこゆっくりと、進化しようと思います。

よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!