千葉県香取市の鰻と測量
某月某日。私は千葉県香取市に足を踏み入れた。
初の訪問だった。右も左もわからない。
仕事関連の訪問だったのだが、
諸事情で、急に空き時間ができてしまった。
お腹も、空いた。
店を、探そう（『孤独のグルメ』風に）。
いや待てよ、私は井之頭五郎ではないので、
ぶらっと入っても、そこが
運良く素晴らしい店とは、限らない。
香取市…。名物…。かとり…。
私は頭の中のデータベースを検索したが、
ヒットしてこなかった。しかし、
あるキーワードが、ヒットした。
それは、長嶺 将也 さんと 高崎 澄香 さんの
「 株式会社せんのみなと 」であった↓
確か、香取市…。
『その土地・街の、美味しい店は、
その土地の人に聞くが良い』
金言が、私の頭を駆け巡る。
何かがささやいた。
DMで、聞いてみようか…？
いやいや、でもお二人はキャリアツーリズム、
キャリア相談などで、とてもお忙しい身だ。
いくらやり取りをさせて
いただいたことがあると言っても、
いきなり「香取市でどこのお店が
美味しいでしょうか？」なんてDMを送ると
ドン引きされるのではないだろうか？
空腹の中、ぐるぐると、私は迷った。
こんなことなら先に聞いておけよとも思ったが
そもそもあまり時間が取れない予定だったから、
香取市と言っても、前もって聞くという
発想自体が、思い浮かばなかったのだ。
だが、思いがけず時間が取れたからといって
DMを送るのは失礼だ…。金言…。空腹…。
私の手が、動いた。動いて、しまった。
（DMの一部引用↓）
『香取市と言えば…と、ふと
せんのみなとさんを思い出して
DMを送付させて頂きました。
突然で申し訳ございません🙇♂️
謝りついでに、もし、
香取市で美味しいお店など
ご存知でしたら、
教えて頂けますと嬉しいです（笑）』
送ってしまってから、じわじわと込み上げる。
なんだよ、嬉しいです（笑）って。
これ、いきなり送られてきたら
まずいよね、引くよね、
謝りついでって、長嶺さん申し訳ないです…。
と、ちょっとDMを送ったことを
ぐじぐじ思っていたら、ピロン、と着信。
『取り急ぎのご連絡にて申し訳ございません
佐原駅付近でしたら
山田という鰻屋さんが個人的には好きです』
…な、なんという、神対応。神返信！
お忙しい中であろうのに、
なんと長嶺さんは香取市でのご自身のオススメの
お店を、教えてくださったのだ！
『お天気が良いので近くの道の駅で
食材を購入し利根川沿いで
食事するのもよいかもしれないですね！』
さらにフォローの一言が、嬉しい。
自分自身でも選択できるよう、
「鰻屋」「利根川沿いでピクニック気分」の
二択にて、提案をしてくださっている。
…このさりげない気遣い。丹念な返答。
押しつけでなく、本人に選ばせる手法。
なかなかに、できることではない。
素晴らしい！ 私は、感謝し、感動した。
それにしても、「山田」だ。
いかにも場外ホームランを打ちそうな店名。
私の頭の中で、一番サード岩鬼が
「やーまだァ！」と叫んでいる
(水島新司さんの『ドカベン』ネタですみません）。
私の足はいつしか、
「山田」へと吸い寄せられていった。
数多の名投手の投げたボールが
ホームランバッター山田太郎のバットに
吸い寄せられていくように…。
その鰻の妙なる味は、感じるべきもので、
文章にして表わし尽くせるものでは、ない。
うまい。こんな美味しい鰻、久々。
かなり待ったが、お値段もそれなりだったが、
それをはるかに凌駕する満足感の、
怒涛の波が全身に押し寄せたのだった
（その一端は画像を参照、山椒だけに）↓
…私は、お店の待ち時間の間に、
近くの「伊能忠敬記念館」のあたりを散策した。
香取市の佐原（さわら）は「小江戸」と呼ばれ、
江戸時代に大いに栄えた水運の街だ。
いのうただたか。測量し、地図を作った人。
一言で言えばそうまとめられるのだが、
その生涯は、予想以上に波乱万丈である。
生まれた生家は複雑で、たらい回しの養育の中、
学問や商売のイロハを身につけていく。
伊能家に婿入り。50歳まで佐原の名主。
「天明の大飢饉」の際にも、村民の餓死者０。
50歳で江戸に出て、31歳の師匠に弟子入り。
北は北海道（蝦夷地）から南は九州まで
くまなく測量に歩いて、70歳代で死去。
しかし、地図が完成するまで、
彼の死去は伏せられていたという…
（2022年5月公開予定の『大河への道』
という映画が、このあたり詳しいです）。
その伊能忠敬の旧宅跡を見学しつつ、
私は、思った。
「キャリア相談は、測量に似ているな」
…伊能忠敬は、丹念に海岸線などを歩き、
ひとつひとつ測量して、その土地の形を
地図に落とし込んで、見える化していった。
長嶺さんと高崎さんも、丹念に質問を重ね、
その相談者の歩みとビジョンを測量し、
見える化して、鮮明にして、
相手に落とし込んでいるに、違いない。
千葉県香取市。
伊能忠敬の故郷にして、
せんのみなとのあるところ。
ぜひ、皆さんも訪れてみてはいかがでしょうか。
良い街でした。
（なお、鰻の「山田」さんは、
超人気店のため、予約をオススメします）
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