エリックという男が、いた。
斬新なアイディアを持ち、
彼の言動に、周囲はいつも
驚かされた。
その華麗な功績を敬して、
いつしか彼に、あだ名がついた。
『皇帝』というのがそれだ。
「彼は、何年も先が見通せる。
まさに賢い皇帝、
賢帝、と呼ばれるにふさわしい」
こう言われたほどだ。
しかし、彼はかぶりを振った。
「私のことは賢帝なんかでなく、
『武帝』と呼んでもらいたいな」
周囲はみな、不思議に思った。
エリックは物腰柔らかい優男。
とても力に訴えるような
武骨な人物ではなかったからだ。
後日、彼はその由来を聞かれて、
こう語った。
「なんで武帝にしたのかって?」
にやりと笑い、彼は続ける。
「クリエイティブな発想、
というものはね、
正面や前からだけでは、ダメだ。
時にはナナメ、いや、後ろから
考えたほうがいいこともある」
そう言うと、
彼は相手に問いかけるのだ。
「武帝エリック。
これを逆さから読むと…?」
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