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コダックとキタムラ ~成功体験と時代の波~

2012年、コダック社が倒産しました。
カメラ市場、フィルム市場で圧倒的な力を
持っていた大企業の倒産。

2017年にはカメラのキタムラ
129店舗を閉鎖すると発表しました。
2018年には上場廃止、
CCCの完全子会社となります。

「カメラ業界、写真業界、ここまでか…!」

そんな思いを抱かせたのが2010年代です。
この二つの会社だけでなく、
「街の写真屋さん」も続々と閉店しました。
なぜ、こんなに落ち込んでいったのか?

その理由を、本記事でまとめていきます。

コダック社と言えば、
「あなたはボタンを押すだけ、あとは当社がやります」
というキャッチフレーズを元に、
1888年から大々的にカメラやフィルムを
売り出してきた会社です。

それまで専門的な写真家が撮っていた写真を、
素人でもお手軽に撮れるようにして、
いわば「写真業界」を牽引、拡大してきた会社。
開業100年近くの1981年には、
売上が何と百億ドルにまで達します。
まさに、我が世の春でした。

…しかし「盛者必衰」と言われるように、
トップに上り詰めたその日から、
下り坂の兆しが少しずつ見えてくるものです。

そう、IT革命、デジタル化の波です。

アナログのフィルムが不要になる時代。
コダック社は、この流れが読めていなかったのか?
いや、実はちゃんと気づいていました。
何と、1975年の時点で、
世界最初のデジタルカメラ試作機を作っている。
フィルムが不要になる、という流れに
実は「気づいていた」のです。

「え? じゃあ、なんでそちら方面に
舵を切らなかったんですか?」

…そこが、商売の難しいところ。
コダック社は、フィルムとカメラで成長した。
いわば、大きな「成功体験」があります。
この成功体験が、判断を狂わせた。

そもそもコダック社は、カメラのみで儲けている
会社ではありませんでした。
その利益は、フィルムが多くを占めていたんです。
人呼んで「レーザーブレード戦略」
これは、レーザーブレード(髭剃り)と同じように、
髭剃りの本体ではなく「替え刃」で儲ける戦略。
カメラでなく、消耗品のフィルムで儲けていた。

この成功体験を、デジタル化の波の中に
「応用」しようとしてしまったんです。

つまり、デジタルカメラ「ではなく」、
デジタル写真の「保存用の製品」によって
儲けようとする戦略。

「フォトCD」という商品を開発して
売り出していったんですね。

…この見立てが、間違いだった。

結果的に、デジタルカメラ業界には
デジタルに詳しい会社、電化製品やIT系の会社が
続々と参入していきます。
写真の保存も、ネット上でできるようになる。

「フォトCD」、そこまで売れない。定着せず。
ハードはハード、ソフトはソフト。
「レーザーブレード戦略」、失敗ッ…!

さらに、今まで利益を上げていたフィルムも、
「富士フイルム」の価格攻勢に遭い、
徐々に利益を失っていきます。
そんなこんなが重なっての全面降伏、
2012年、コダック社の倒産なのでした。

「時代が読めてなかったんだね、愚か!」

…そう笑い飛ばすのは、簡単です。
しかしこのコダック社の失敗、
他の会社、読者の皆様の組織にも
訪れるかもしれません。

お察しの通り、コダック社は
そこまでの多大な成功により、
既得権益者、ステークホルダーの株主が
たくさんいました。

「デジタル化? フィルムで儲かっているんだから
無理に切り替えなくてもいいじゃない?」
「うちはフィルム主体の会社だぞ!
それを強化していく方がやりやすい、都合がいい」

…そう主張して、業態やビジネスの切り替えを
阻んだ勢力がいたことは、容易に想像がつく。

あまりにも大きな成功体験が、逆に
時代の流れに乗ることを妨げていたのです。
自分たちに都合のいい解釈!
なんとかなるだろうの精神!

そういうものも、倒産の要因だったのでは…。

さて、日本でもこの
カメラ業界・写真業界の地盤沈下が
起こっていきます。

カメラのキタムラ、129店の店舗閉鎖、
そして上場廃止…。2018年頃のことです。

デジタルカメラが市場を席巻したのは、
1990年代後半から2000年代初め。
キタムラも、この時代の波に対応すべく、
早くからデジカメプリントやデジカメ販売に
力を注いでいました。

…これが結果的には、誤算だった。
デジカメプリント→そもそもプリントしない。
デジカメ販売→スマホで撮影、デジカメいらない。
そう、デジカメ業界そのものが徐々に
落ち込んでいった
んです。

そこで、スマホ販売のほうにシフトしますが、
スマホを売るのって、カメラとは畑違いですから
「スマホ方面の専門的知識」が要りますよね。
そういう職員を雇っていくため、
人件費が増大していく。利益を圧迫…。
そんな中での、店舗閉鎖、上場廃止なのです。

折りしも2020年からは、コロナ禍。
学校や街のイベント、結婚式などが激減し、
写真を撮影、現像する機会自体が減る…。

デジタル化、コロナ禍の激流に、
カメラ業界、写真業界そのものが
飲み込まれてしまった
、と言えるでしょう。

最後に、まとめます。

今では、カメラのキタムラは、
CCCの一員として、立て直しを図っています。
CCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社。
「蔦屋書店」などを運営している会社の
グループ、傘下に入ったのです。

そこで2020年に開店したのが、
「新宿 北村写真機店」

ここは「新業態の旗艦店」として
これまでにないキタムラ像を打ち出しています。
いわば、ツタヤっぽいキタムラ
「写真のある豊かな生活のために」という
コンセプトで、さまざまなアプローチを
模索し、世に問うているのです。
この戦略、さて、どうなるか?

さあ、以上のコダック社とキタムラの歩みを踏まえて、
読者の皆様の組織では、いかがでしょう?

いま、隆盛している技術やビジネスも、
いつかは新しい技術やビジネスに
取って代わられます。
それが「盛者必衰の理」というもの。

成功体験に、耽溺していませんか?
これからの時代を読んで、
さまざまなアプローチを、していますか?

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