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祖谷、いや、と読みます。
四国の徳島県、三好市(みよしし)にある
深山幽谷の山里のことです。

三好市は香川県・愛媛県・高知県に接し、
いわゆる四国の真ん中から
ちょっと北東のあたり。
剣山(つるぎさん)・吉野川といった
雄大な自然に囲まれた町。

その中でも祖谷(祖谷渓)は
三好市の奥の奥に、あります。
いわゆる「V字谷」のある、
まさに大自然中の大自然の地域です。

観光スポット的に言えば、
「断崖絶壁に立つ小便小僧」とか、
かずらで編まれた「かずら橋」とか、
少し行けば「大歩危小歩危」の崖とか、
そういったものもあります。

「妖怪こなきじじいの出身地」
「平家の落人伝説」…そういった
民話や伝説が数多く残っているのも
納得できるような、山と谷と、集落。

…そのような厳しい自然の中で、
粛々と生きている人を
撮影した映画がありましてね。

『祖谷物語(いやものがたり) ~おくのひと~』
という映画です。

監督は、蔦哲一朗(つた てついちろう)さん。

徳島県の池田高校野球部で大活躍した、
蔦文也監督のお孫さん、だそうです
(ですが本人はサッカーに夢中になったそう)。
大学では東京工芸大学映像学科にて映画を学び、
意欲的で挑戦的な作品を撮っていらっしゃる、
1984年生まれの、気鋭の映画監督。

彼の作品、2013年に公開した映画です。
十年近く前の映画ですが、これが凄い!

…映画ですので、言葉でつらつら書くより、
まあ、見ていただくしかない、のですが、

何も書かないと紹介になりませんので、
まずは公式ホームページの、
蔦監督の「編集後記」を以下に引用してみます↓

映画「祖谷物語―おくのひと―」公式サイト (iyamonogatari.jp)

(ここから引用)

『私は祖谷の山々を駆け巡り、探しまわった。
この物語に出てくるお爺と春菜のように、
山奥で自給自足の生活をしている人間を。

川から水を汲み、木を拾って火をおこし、
山を耕し野菜を育てる人間が、
もしかしたらこの秘境になら
まだいるかもしれないという少しの期待を持って、
私はひたすら祖谷の山奥を探し歩いた。

しかし、荒れた山道を登っても登っても、
出会うのは腐った茅葺屋根の家と
廃集落だけだった。

もう日本にはお爺はいないのである。

そこにあるのはお爺がいたというわずかな痕跡と、
それを呑み込まんとする草木の存在だけであった。

またこの映画のために
我々スタッフは人里離れた山奥で畑を耕し、
蕎麦を育てたが、なるほど、
この土地には人間や獣以外の存在が
確かにいるのである。

今回その奇妙で曖昧な存在を、
幸運にもフィルムに焼き付けることができたと、
私は確信している。』

(引用終わり)

…どうです、見てみたくなりましたか?

日本は、自然に恵まれた国です。
東京のような大都会もあれば、
祖谷のような大自然も、ある。

その中で、人間は暮らしています。
それぞれの地域に応じて。
それぞれの人生を。

簡単なあらすじを、引用してみましょう。

(ここから引用)

『東京から自然豊かな山里の
祖谷にやってきた青年・工藤は、

自給自足の生活を始めようとするが、
一見のどかな村にも、
土建業者と自然保護団体との対立や、
田畑を荒らす野生動物と人間との戦いなど、
さまざまな争いがあった。

そんな時、山奥で質素な生活を送る
お爺と女子高生の春菜に出会った工藤は、
2人の静かな生活に心が洗われていく。

しかし、時が流れるとともに
お爺の体が弱っていき……。』

(引用終わり)

都会の青年、工藤を演じるのは
大西信満(おおにししま)さん。
江戸川乱歩の「芋虫」をモチーフにした
映画『キャタピラー』では、
四肢を失った傷痍軍人役を「怪演」した
とても存在感のある役者さんです。

女子高生の春菜を演じるのは
武田梨奈(たけだりな)さん。
映画『ハイキック・ガール!』で主演、
アクション女優として有名ですが、
その彼女があえてアクションを封印して
瑞々しい心情の表現に挑んでいます。

その春菜とともに過ごすお爺役には
田中泯(たなかみん)さん。
今なら大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で
藤原秀衡役を演じられていますね。
ダンサーとして、俳優として、
圧倒的な存在感を出す大物の一人。

他にも「殯の森」「萌の朱雀」を撮った
河瀬直美監督も、女優として出演しています。

これらのバラエティに富んだ役者さんが、
大自然・祖谷の中で
生き生きと演じている映画なのです。

では、まとめていきましょう。

東祖谷地方の昔話の一つに、
「欲の熊鷹」というお話があります
(上方落語にもなったそうですが)。

『欲の熊鷹 股裂ける』という
ことわざがありますが、
この昔話が元になっているそうでして。

二匹の猪を同時に捕まえた熊鷹。
両方を得ようとして足を離さなかった。
猪は別方向に突進し、
あわれ欲張りの熊鷹は股が裂けた…。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」を
過激にしたような内容の昔話なのですが。

果たして、
都会に生きる人の、自然を求める渇望感。
自然に生きる人の、都会を求める好奇心。

この二つの心情は、両立するのでしょうか?
それとも、引き裂かれるものでしょうか…?


読者の皆様は、
どちらの心情に惹かれますか?

『祖谷物語 ~おくのひと~』が
そろそろ気になってきた皆様へ。

宜しければぜひ、リンクからちょっとだけ、
「予告編」の映像を見て頂ければと思います↓

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オススメの映画ですよ!!

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