見出し画像

マンガ・アニメ・ゲームの世界で
比類ない作品をつくられた鳥山明さんが
亡くなって、私は衝撃を受けました。

現代の日本で世界に通用する分野と言って、
すぐに私に想起されるのが
「マンガ・アニメ・ゲーム」です。
そのすべてに、鳥山明さんは
がっちりと関わっておられた。
間違いなく、それぞれの「レベル」を
押し上げてきた方のお一人だ、と思うのです。

本記事では、鳥山明さんの
『翻案力』について書いてみます。

1970年代後半生まれの私は、
『DRAGON BALL』や
『ドラゴンクエスト』のブームを
「どストライク」で受けてきた世代です。

水曜日の午後七時は、TVのアニメ。
これは小学生の私の決まりごとでした。
初期の頃の『摩訶不思議アドベンチャー』は
今でも頭の中で自然に再生できます。

放課後にゲームができる時間帯は、
ドラクエでスライムを倒してレベルアップ!
ドラクエ2の「ふくびき」がすごく好きでして、
モンスターを倒して「ふくびきけん」を
手に入れた時の嬉しさは今でも覚えている。
(もちろん「ふっかつのじゅもん」を
間違えて転記して
復活できなかった時の悲しさも…)

小学生にドラゴンボール全巻を与えると
部屋から出て来なくなる…というのも
文字通りその通りでして、
何回読み耽ったのかわからないくらいです。
(特に好きなのがベジータとナッパが
地球にやってきた時の話。
なんですか、あの圧倒的な戦闘力。
『Inaoなリライト』でも少し使いました)

…というように、偉大なクリエイターである
鳥山明さんに大きな影響を受けてきたのですが、

鳥山明さんが凄い、と私が思うのは、
「ゼロからイチをつくる」のはもちろん、
「イチを何倍にもする」という
『翻案力』にも優れていたことです。
まさに「界王拳」とでも言うべき匠の技…。

例を挙げましょう。

ドラゴンクエストには「スライム」が出てきます。
何となくぷよっぷよで、
グミみたいなイメージで、
すっとぼけた表情のモンスターですよね。

でも、ゲーム界ではよく
知られてきたエピソードなんですが、
これは鳥山明さんの『翻案』のデザインです。

顔なんかありませんでした。

ドラクエが世の中に出る前、
RPGの黎明期には、
スライムと言えば「ドロドロ」だったんです。

1974年に発売されたD&D、
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」という
RPG(ロールプレイングゲーム)の元祖のような
ゲームがあるんですけれども、

ここでは流動系でネバネバ、ドロドロで
恐ろしい怪物として描かれています。

決して最弱ではない。むしろ強敵だった。
「巨体でドロドロ」「物理攻撃が効かない」
「毒をもっている」「取り込まれたら窒息死」
もう、恐怖以外の何物でもない…。
罠にも使われるほどのホラー!

それが1981年発売の『ウィザードリィ』
というゲームで雑魚キャラ化してしまいます。

…たぶん、ドラクエのスライムしか知らない
子どもたちが、この頃のスライムの
ビジュアルを見ると、
恐怖で泣き出すかもしれません。

しかし、1984年発売の『ドルアーガの塔』で
プルプル化していく…。
ドルアーガの塔は、剣を使ったアクションRPG。
ゆえに、剣で斬れるようにしたそうです。
真っ二つにできるように。

その系譜を受け継いだのが
ドラクエのスライム、なのです。
ドロドロではなくて、ぷよぷよ、ぷりぷり。

しかし、ここで鳥山明さんの
『翻案力』が発揮され、追加されていった。
スライムの頭がぴよっととんがって、
かつ、顔がついたんですね。
敵なのに、なんだか、かわいらしい…!

この翻案デザインによって、
スライムと言えばこんな感じ…という
イメージが多くの人の頭の中に
生まれていったのです。

その延長線上に『転スラ』もある。

『転生したらスライムだった件』では、
最強のスライムが描かれますが、
本来であればスライムは「強敵」だったんです。
しかし、ウィザードリィ、ドルアーガの塔、
そして鳥山明さんのドラクエのスライムを経て、
「かわいらしい雑魚キャラ」というイメージが
定着したがゆえに、
『転スラ』の設定も成り立っている、と言える。

ドラクエの世界観は、
モンスターによるところが大きいですよね。
その象徴が、スライム。
そして、他のたくさんのキャラデザイン。

ドラクエ愛好者の方は、目をつぶれば
色々なキャラが浮かんできませんか?
ドラキー。キラーマシーン。
ギガンテス。ミミック。おどるほうせき。…
私には鳥山風味のモンスターが
すぐに浮かんできます。ええ、すぐに。

鳥山明さんの翻案力、
つまり原作、元のデザインから、
自分の持ち味を生かして味をつけて
「自分のキャラ」にする技!
本当に素晴らしいものだったのだ、と
改めて思っています。

まとめます。

本記事では、ドラクエのスライムを
一つ例に挙げて、鳥山明さんの
翻案力を紹介しました。

私も最近『Inaoなリライト』企画で
原文からリライトしていましたが、
改めて精進していこう、と思っています。

…と、書いたところで
今度は声優のTARAKOさんの訃報が
飛び込んできました。まじか…。
ちびまる子ちゃんのまる子の声優さん。
『天空の城ラピュタ』で
ちょい役で出てきたことも覚えています。

マンガ・アニメ・ゲーム、その世界で
比類ない功績を挙げられた方の死去は
私の心に様々な思いを浮かび上がらせます。

改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。

読者の皆様は、どのような想いが
浮かび上がってきましたか?

◆スライムのキャラデザの変遷は
こちらの記事を参考にしております↓

◆こちらも↓

合わせてぜひどうぞ!

よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!