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1、宮崎アニメとは

稀代のクリエイター、宮崎駿さん。日本のみならず世界のミヤザキ、世界のハヤオとして、素晴らしい作品群を生み出してこられた方です。

この方が作ったアニメを「宮崎アニメ」として総称することもあります。これらが人を惹きつけてやまないのは、観る人によっていろいろな解釈ができる、確かな世界観だと思います。そう、確かな世界観があるからこそ、いろいろな解釈ができるのです。考える材料にもなる。

このnote記事は、「組織論」の観点から、様々な「宮崎アニメ」を考察した記事です。あくまで主観的な考察であることを、お断りしておきます。

2、「上意下達・同調圧力の組織」 VS 「フラットな一味」

改めて色々な作品を思い出してみると、一つの図式が浮かび上がります。

それは、「上意下達・同調圧力の組織」VS 「フラットな一味」というもの。

結論から書いてしまいましたが、事例にて検証していきます。なお、すべての作品を取り上げていくと大変なので、代表的なものだけ…。

①天空の城ラピュタ

これが一番わかりやすいでしょうか。
ムスカたちの「軍隊」と、ドーラ一味+パズーとシータの混成部隊。
上官の命令は絶対、の軍隊に、海賊とその仲間たち。
もちろんドーラ一味はドーラのリーダーシップによって統制されていますが、けっこう口ごたえもしますし、パズーとシータは遊撃部隊で自分の判断や意見を口に出して、けっこう勝手に行動しています。

②もののけ姫

これもわかりやすいですね。
ジコ坊たちの「軍勢」と、サンやアシタカたちの混成部隊。
サンとアシタカは、最初戦い合っていましたが、共通の目的のために一時休戦、共同戦線を張るというお約束。

③千と千尋の神隠し

主人公である千尋は、「千」という名前を与えられて、湯屋で働かされます。つまり、自分を滅して公のために頑張る、滅私奉公を強いられるわけです。その湯屋は湯婆婆が率いる上意下達・同調圧力の組織。働いている人は、釜じいとかリンとかを除いて、みんな同じ顔です(意識して同じ顔にしたのだと思いますが)。
その千尋が、いろんな仲間(カオナシも敵→味方に)を引き連れて、湯婆婆との契約破棄の最終決戦に臨むのが、クライマックスですね。

④ハウルの動く城

もうこの作品はそのものですね。
王国 VS ハウルたち。

3、そうじゃないと思える作品

では「風立ちぬ」はどうなのか?

あれは、主人公が上意下達・同調圧力の極みとも言える会社組織で、飛行機を作るお話ではないのか?

その通りです。おそらくこの作品で、宮崎さんは「リアルな世界」を少し描きたかったのではないかと思います。

基本、現代日本の私たちは「上意下達・同調圧力」の脅威にさらされています。見えるもの、見えないもの、さまざまですが。そこから映画を観る間だけでも脱出したい。その願望をかなえるのが宮崎アニメ、ファンタジーです。その世界観を作ってきた宮崎さんが、リアルな世界を描いた。でも私はそのことによって逆に、上意下達・同調圧力の中で「個」を活かすとはどのようなことかを示したかったのではないか、と勝手に推測しています。

滅私奉公と見える組織の中の個人にも、来歴があり、物語があり、心情があり、恋愛がある、と。

4、構図が一見わかりにくい作品

①となりのトトロ

あからさまな構図はありません。
しかし、サツキとメイの一家は、都会から田舎に引っ越してきます。
田舎のコミュニティからは明らかに浮いていますが、徐々に馴染んでいきます。その1つの融和のエピソードが「メイ行方不明事件」です。トトロたちとのフラットな連合によって、見事解決します。
そう言えばお父さんも、大学から離れて在野の一学者になっているようなイメージです。

②魔女の宅急便

はっきりした敵があるわけではありませんが、強いて言えば「14歳くらいの少女が働かなくても良い」という「世間の常識」でしょうか。
キキはフラットな仲間を増やしながら、この常識に立ち向かいます。

③耳をすませば

この作品は宮崎監督ではありませんが、スタジオジブリ作品なので考えてみます。魔女の宅急便にテイストは似ていますが、現代劇です。「15歳くらいの少女がそんなに真剣に進路を考えなくても、みんなと同じ高校進学をすればいいじゃないか」という世間の常識に、ヴァイオリン職人を目指す男に触発されて小説家を目指す、というか挑むお話です。

※今度実写化されるそうで、ちょっと楽しみです。

5、まとめ

いかがでしたでしょうか。

この記事では、宮崎アニメを題材として、組織論の観点から考察してみました。もちろん、「上意下達・同調圧力・滅私奉公」の組織では、主人公としてキャラが立ちにくい、フラットな一味でないとストーリーが進まない、というストーリーテリング上の設定もあるとは思いますが…。

これに「カリオストロの城」とか「紅の豚」などまで語り出すと、とてもとても時間が足りませんので、このへんで…。

末筆ながら、これと正反対の映画も挙げておきます。

宮崎アニメと対比しながら観るのも良いかもしれませんね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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