短編小説『ゆりいか池の精』
一人の男が、森の中を歩いていた。
鬱蒼とした森である。
まるであの生徒の心の中のようだ、と
彼は思った。昼間でも薄暗い。
時折、木漏れ日が差し込む。しかし、
雲がかかれば、また薄暗くなってしまう。
明かりを持って近づけば、その近くだけ
明るくはなるが、消えれば、また見えなくなる。
…何か道が見える方法はないのだろうか?
そんなことを考えながら、彼は歩いていた。
「うーん、このあたりのはずだが…」
彼は地図を見ながら、森をさまよっていた。
先輩の教員から、先日、教えても