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「永遠に終わらない恋を除いては」ヒスイの毎週ショートショートnote

イオ叔父さんは恋愛小説家だ。本棚にあるのは出版した作品。
タイトルは『カザリドリの歌』『フウチョウの憂鬱』『ハチドリの無謬(むびゅう)』。
全部、イオさん自身の失恋小説だ。本棚には失われた恋ばかりが並んでいる。

私がふざけて、
「ここは『失恋墓地』だね」って言うと、
イオさんはきれいな顔で笑った。
私の胸が痛くなるほど、きれいに。

17歳には手が届かない、大人の恋。
手の届かない男。
でもいつか。


本棚には一冊だけ、いつも裏返しの本がある。
背表紙が棚の奥に向き、ひっそりとしまわれている。
イオさんは誰にも、その本に触れさせない。

あれは絶対、カザリドリもフウチョウもかなわなかった大失恋の本なんだ――読みたい。
ある日、私はこっそり本を引き抜いた。



それは――私の母の日記だった。




イオおじさんの本棚には、失恋物語が並んでいる。
ただ一冊、真白な小口を、永遠に開かないつぼみのように輝かせている本を除いて。

永遠に終わらない母との恋をのぞいて――。

【了】(改行含めず、410字)


今週も、たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
お題は「失恋墓地」(笑)。

相棒、へいちゃんはこんな感じ。
読んだケロリンが叫んでた。「来シーズンこそはああ!」
それ、この数年、ずっと聞いてるけどね(笑)


ではまた、明日お会いしましょう💛
明日こそは、ウサギの記事を書こう(笑)


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