「『伝説の安心感』は、壊されるためにある」ヒスイの毎週ショートショートnote

ある日、居酒屋である男と会った。
知り合いのような気がして一緒に飲んでいたら、ヤツは汚い本を取り出し、
「これは『伝説の安心感』についての本だ。読めば誰でも売れる。やるよ」
本を置いて消えた。
俺は途中まで読んで、ぼやいた。

「なんだよ、『伝説の名画』の制作説明文じゃねえか」

本は、『伝説』の絵が出す『安心感』のシステムを超わかりやすく説明した技術テキストだった。

「いらねえよ！」
本を投げ出すと、はずみで最後のページが見えた。
「……えっ！？」
あわててページをめくる。
そこにはズラリと署名があった。全員、かつての所有者らしい。

草やよい。ヨシ・ナラーン。　矢野べっけん……みんな有名画家だ。
最後に手書きメモがあった。

『安心は売れる、だが壊せ。伝説の絵は、安心の中にない』。
横尾ただし。俺の尊敬する画家。

……あの男だ、居酒屋の。
俺は本を閉じ、絵を描く準備を始めた。
安心感をぶち壊して、伝説になるために。
いつかこの本を、誰かに渡すために。

【了】（改行含めず410字）

今週も　たはらにかさんの
「毎週ショートショートnote」に
参加しています。
お題は「伝説の安心感」(笑)。

へいちゃんはこちらです！
あえて、裏お題「建設の頓珍漢」をピックアップしますー(笑)
和田さん、いい味を出していますね。

うふふふ。
みなさんの410字を読んでいると、
やる気になりますね！

ではまた、明日、お会いしましょう！
妙な安定感、
ぶち壊して回りまっせ、ヒスイが(笑)！


ヘッダーはUnsplashのMuhammad Rahim Aliが撮影