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「よぞらでひかる、月の代わりに」ヒスイのシロクマ文芸部

「月めくりゲームをしようよ」
チカが言うと、トオルは不思議そうに、
「なにそれ?」

すっとチカがベランダから月を指さした。

「あの月をね、夜空に貼ったシールだと思って。
 一枚はがすたびに、質問する。相手は真実を答えるゲーム」
「へんなの、いいけどさ」

トオルは笑う。チカも笑って、

「先週、ナツキと歩いてた?」
「え……」

トオルの顔がこわばる。チカは続ける。

「大通り、カフェの前。どう?」
「ノーコメント」
「ナツキはきれいな顔をしているからなあ……あ、月をめくっていいよ」

トオルは夜空のシールをはがすふりをして、
「おれのこと、信用してる?」
「してるよ、生まれた時からの付き合いじゃん」
「まあ、そうだな」

チカは満月をはがした。

「ナツキのこと、すきでしょ?」
「さあね。ナツキはチカの、姉貴の親友ではあるけどね」

トオルは夜空から月をむしり取り、

「男女間の友情って成立すると思う?」
「成立するよ」
「……ほんとかな。次、チカの番だ」

ぺり、とチカは最後の月をめくる。

「夏樹は、あんたが好きなんだって。あんたはどうなの?」
「それ……真実じゃないよ」
「ホントよ、夏樹にそう言われたの。
 あたしの親友はそういうとき、ばかにマジメな男だからね。しんゆうだからね」
「ねえちゃん、泣いてるよ……」

トオルがティッシュペーパーを渡すと、チカはちん!と鼻をかんだ。

「しょうがないじゃない。真実は、いつだってひとつなのよ」

姉弟は月を見上げる。
トオルがつぶやいた。

「男子×男子の恋愛って、成立するのかな」
「……するよ、あんたと夏樹なら」

ぽん、と真実が浮かんで、月の代わりに登っていった。

よぞらでひかる。

【了】(改行含まず670字)

本日は #シロクマ文芸部  に参加しています。

月めくり、という冒頭を考えるのが
楽しかったです。

ちなみに月がシール、というアイディアは
たまごまるさんから、いただきました(笑)!
月がシールとは、思いつかなかったですよ。
ありがとうございます!

https://note.com/tamagomaruto/n/n91fddd629d87

みなさまからのアイディアをお借りして
毎週なんとか成立しているヒスイの短編です(笑)
今週はギリギリでした。

まにあってよかった(笑)

ではまた、明日💛

過去に参加した シロクマ文芸部の短編はこちらです。
夜のお供に、どうぞ。



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