「忠実な伝書鳩と、終わらない断捨離」
年の暮れから病になった母は、最近しきりと断捨離をする。
それも『人にあげたい断捨離』だ。
「これは従妹のAに渡して」
「こっちは義姉へ」
まるで断捨離じゃなくて、形見分けじゃないかと思うが、母に逆らうのは面倒なので私は黙って、伝書鳩のように、母の断捨離を運んでいく。
「そろそろ渡す相手もいないんじゃないの」
聞いてみると、母はニヤリとした。
「まだまだあるわよ。あんたの知らないひとも、大勢いるの。ママにはお返ししたい人が山ほどいるのよ」
なるほど確かに、断捨離先は次々に出てきた。
デザイナーのBさん、インテリアコーディネイターのCさん、カメラマンのDさん、ママの作るアクセサリーを置いてくれていたカフェのEさん……。
あきれるほど出てくる。
母には母の世界があるのだ。お返ししたい世界があるのだ。
そして私は、今日も明日も、忠実な伝書鳩のように母の断捨離を運び続ける。
母の世界が閉じないように。
お返し断捨離が永遠に終わらぬように。
【了】(改行含めず412字)
本日は たらはかに さんの#毎週ショートショートnote に参加しています。
相方 ヘイちゃんのはコチラです!
うつくしい、美しい物語です。世界中の人がこんなふうだったらいいのに。
明日のシロクマ文芸部は休みます・・・
ちょっと、母の具合がよろしくございません・・・
お返し断捨離(リアルには、押し付け断捨離ともいう(笑))、続けてよママ。
ヘッダーはUnsplashのnikki gibsonが撮影
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