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「はじめての夏が終わって栗を喰ふ」ヒスイの恋410字+俳句2句

9月は俳句に集中する月と決めたので
今日も2句+410字の恋愛ショートです。


「きみのまえ木の実盛り上げ粉引皿」
(きみのまえきのみもりあげこひきざら)
季語:木の実


『はじめての夏が終わって栗を喰ふ』(410字の恋愛ショート)

「最近さあ、おまえ、早起きになったよな」
夕食後、同居人がそう言った。あたしはテレビを見ながら焼き栗を割る。
「そうだねー」
「めしも1日3回食うようになったし」
「きみの料理はおいしいもん」
「早朝散歩もするしな」
「一緒に行かないと、朝からコンビニでムチャ買いするじゃん。
あ、あの段ボールの束は捨てたからね」
「まじかよ」
「え、必要だった?」
「……いや、よく考えたら要らね」

「そういえばお酒の量が減ったね」
「うちで飲むと、量が適度になるんだなー」
「車の運転もうまくなった」
「おまえがこき使うからじゃねーか」

気がつけば白い粉引の皿には、皮をむいた栗が山盛りになっていた。皿には粉引特有の薄ピンクの斑点が浮いていて、栗のあいだで踊っているようだ。
彼がひとつ、栗を取る。
ぽい、とあたしの口に放りこんだ。
「秋だな」
「秋だね」

一緒に暮らして三カ月。あたしたちは、初めての秋を迎える。
明日の朝は、あたたかいカフェオレにしよう。

【了】(改行含まず402字) 


「朝冷にミルクあたため君を待つ」
(あさびえにミルクあたためきみをまつ)
季語:朝冷

#俳句幼稚園

ヘッダーはaleksandra85fotoによるPixabayからの画像

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