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「裸眼で見る世界には鋭角が、ない」ヒスイの毎週ショートショートnote

目の悪い人間の視界がどうか、知ってる?
ものが二重三重に見えて、輪郭線がゆらいでいる。世界はゆるく溶けあっているんだ。
僕は乱視で視力は0.1。小学生から眼鏡をかけ、あだ名は「メガネ」。

矯正視力で十年すごし、高校生になって初めて恋をした。
相手は学年イチの美少女……じゃない。同じ写真部のフツウ女子。
耳たぶが小さくて、指先がとてもきれいだ。
ま、普通ってこと。

僕たちは普通にしゃべって、普通に撮影散歩の約束をして、普通に夕暮れを迎えた。
夕陽が彼女の顔に当たる。
僕は目が悪いのに、彼女の頬の産毛いっぽんいっぽんがくっきり見える気がした。
思わず眼鏡をはずす。
一気にぼやけて輪郭線がとけあった。

彼女は笑って、
「キスするとき、眼鏡を外すってほんと?」
「さあね。
だからこれから、ガラス一枚の距離もないところで
きみの顔を見るんだ」

振り向いたきみの目はとてもきれいで。
ゼロ距離のきみはいい匂いがして。


世界の輪郭はやわらかく、崩れていった。

【了】(改行含まず408字)

「裸眼で見る世界には鋭角が、ない」

本日も、たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに
参加しております。
今週のお題は 「眼鏡初恋」。



へいちゃんのは複数ありますが、ヒスイはこれ推し💛
きゅん、よ。キュン!

今日はお出かけするので
早めに公開していきまーす!
また明日っ!

ヘッダーはUnsplashSeth Doyleが撮影

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