「清らかな執念」ヒスイの毎週ショートショートnote
十里(じゅり)は『執念第一高校』の生徒だ。
進学校だから、十里も難関校を目指している。ライバルは『断念第二高』の槙生(まきお)。
塾で会うと十里は言う。
「負けないわ、執念は強いもの」
槙生は静かに、
「断念の力も強いよ」
ある日、槙生が多肉植物をくれた。丸い石みたいで、中央に亀裂が入っている。
「『露美玉』っていうんだ。花も咲くし、新芽も出る」
「へえ」
十里は嬉しくて、大事に育てた。それこそ執念第一に。
秋、亀裂から黄色い花が咲いた。
冬、新芽が身を寄せ合うように古い皮の下で育った。
露美玉は静かで力強かった。槙生のように。
3月、卒業式を終えると校門に槙生がいた。十里は、
「露美玉をありがとう。新芽が出てきたわ」
「よかった。あれは僕の執念なんだ」
槙生の目に岩盤のような意志が光った。
「十里、付き合おう。僕は初めて断念できない執念を知ったよ」
十里は笑って、槙生の手を取った。
どこかで、古い皮がはがれて新芽が世界に出てきた。小さな音がする。
ぽん。
【了】(改行含まず410字)
「露美玉」こんな感じの植物です。
このお話にはロングバージョンもあります。
完全版は、こちらです!!
字数は倍です(笑) よく410字にまとまったなあ(笑)
では、また明日💛
ヘッダーはUnsplashのYing Geが撮影
#毎週ショートショートnote
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1周年記念です!!
おめでとうございます。毎週大変だと思いますが、今後も難題を、よろしくお願いします!
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