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シンプルがベスト

世はデジタル化が進み、下手の横好き絵描き人生も、デジタル歴が年々割合を増やしていく。

わたしは自分の字も絵も好きだ。
特別きれいなわけではないが「字が読みやすい」と言われるのがとてもうれしい。
上手い下手はともかく、自分の手から、自分が好きなものを生み出せるのは、自分の世界で自分は創造主であり神である(断言しちゃったよ)。
そんなこんなで、クリエイターとしては幸せなわけです。

そんなわたしも愛用しているシャーペンはあるわけで。

おませで洒落っ気が出てくる小学校高学年女子は、たいていが文具に凝りだす。文具メーカーのターゲット層でもあるだろう。
やたらといい匂いのするプラ消しゴムと一緒に、サンリオのキャラクターのついた、ペン先までプラスティックのちょっと太く可愛い、ノック式のものが、ペンケースに入っていた。
2つ上の姉が赤で、わたしが黄色。六角形で、使っているうちにプリントは擦れ、キャラクターは早々にきえてしまった。

中学受験の勉強も、そのシャーペンで問題を解いていた気がする。
筆圧は普通。
愛用していたおぼろげな記憶があるけれど、いつまで使っていたかはあまりよく覚えていない。

そして、進路に悩んだ中学時代は、入学当時、期待に胸を膨らませ、大好きなエメラルドグリーンで統一した文具をそろえた以外、あまりよく覚えていない。(カラフルな色のシリーズが揃っていた文具があったのだけど、あれはなんだったかな…ペンケース(缶)、シャーペン、定規…)

友達の誕生日プレゼントといえば、文具が手ごろで主流だったなとは覚えているが、打ち込んでいたスポーツをやめ、おそらくのんきなわたしが悩んでいたくらいなので、暗黒の時代なのだろう。

そして、いろんな人に迷惑をかけ、自由を勝ち得て?好きにさせてもらった高校時代。わたしはいよいよ本格的な作るオタクへと進化し始めていた。
ノートや教科書のラクガキにとどまらず、友人との交換ノートやリレー漫画。格段に絵を描く機会が増え、漫画を描き始め、部誌や同人誌を作り始めた。
このころから、文具品の見た目よりも、機能を意識し始めた。
やはり、手で使うものは長時間の使用が愛着になり、愛用となる。

人よりほんのちょっと器用だったので、鉛筆はカッターナイフで削った。
カッターは断然オルファ(OLFA社)。スクリーントーンもオルファカッターでガリゴリ削った。
消しゴムは、コンビニエンスストアで偶然出会ったAir-IN(PLUS)に、それまでは崩れてしまい小さくなるMono消しを使っていたわたしは、ものすごい衝撃を受け、人に「使いやすいよ!」と押し付け、自分の部屋、姉の部屋、リビング、ペンケースの中、そこいらじゅうにAir-INを置いた。

高校は都内にあり、電車で数駅の文具の聖地とも呼べるお茶の水エリアに頻繁に通っていた。友人たちとことあるごとにLemon、.Too、丸善に入りびたり、数々の文房具や画材を眺めた。

さて、そんなわたしの#忘れられない一本。

たくさんの素敵文具に出会う機会があったにもかかわらず、長年愛用したシャープペンシルは、高校の地下に新しくできた小さな購買スペースで出会った、シンプルな白いシャープペンシル。
たしか、ペンケースを忘れ、間に合わせで買った100円の。

ひっかけるクリップ?もない、すらっとした鉛筆然とした、何の飾り気もない、プラスティック筒6gほどの、三菱鉛筆のシャープペンシルuni0.5 M5-107。

出会いは突然である。


それから、自然に、ずっとそこにいた。

空気のように。

数多の、可愛い、カッコいい、きれいな人(シャーペン)たちと浮名を流したわたしを見捨てずに、いつも君(三菱鉛筆のシャープペンシルuni0.5 M5-107)がいてくれた。

やがて、プロになりたくて投稿サイズのB4原稿用紙で漫画を描くようになったわたしは、腕の痛みに悩まされることになる。

それまで、10枚も描けばGペンやを丸ペンつぶし、3本描くころには安物のペン軸を割っていた自分が、痛みや握力低下で日常生活に支障をきたし、筆圧を弱くすることを余儀なくされた。

鉛筆にシフトするも、その分消しゴムを使う機会が増えると、腱鞘炎の腕に負担がかかるので、シャーペンで2B 芯を用い、細く薄い線を描くようになった。そして、手に負担がかからない、軽量の白いシャープペンシルM5-107が、疲れた薄情者のわたし(の腕)に優しく寄り添ってくれた。
M5-107子はどんな時も優しい…ダメなアタイを許してくれる…

プロを目指しているころ、機会があってプロのかたの原稿をお手伝いさせてもらったことがあるのだが、彼女は「愛用するものは、少しでも長く使いたいから」と文具をとても大切にしていて、原稿が終わると、必ず道具の手入れをしていた。
確かに、デジタルと違い、インクや墨、ホワイトで手や道具を汚して描き上げる作品。
道具の手入れは大切だった。

愛用のシャープペンも、できることはごく少ないが、年に1回くらい分解して、ペン先に詰まるカケラを掃除したり、感謝の意を伝えつつ、本体を拭いたりした。

道半ば、わたしはプロの道は諦めてしまったが、変わらずに絵を描いている。

数千枚の原稿とラクガキ。その白いシャープペンシルM5-107と、アナログ時代を何十年も共に過ごしてきた。

角はなくなり、経年劣化によるものもあるんだろう、黄ばみ、ひびが入り、補助(マスキングテープ)なしでは、きちんと締めることはできなくなっていた。

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まあ、100円でどんだけ使ってるんだ。可哀想に
ということに尽きるのだけど。
浮気もするブラック持ち主でごめんな…M5-107子…

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M5-107の負担を減らすために、文字を描くときは、固めの無印のシャーペンにしている。シンプルなところは似ているけれど、こちらは軸は細くピリッと固く、ツンとすました使用感。そしてなんどかなくしたり壊して、たぶん4本目くらい。

最近のM5-107子は、イベントで頼まれたスケッチブックや色紙を描くときくらいしか稼働しないが、いまもペン立てで、その優しい佇まいを保ったまま、のんびりと余生をすごしてくれている。

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