見出し画像

因縁のある部屋 1

 因縁のある部屋

Mちゃんの引っ越してきた家は、所謂、事故物件でした。

私が幼少の頃に引っ越して来た時は、実は私の家が事故物件で、お婆さんが孤独死した部屋でした。
3Kで、六畳二間、四畳半一間で、後に四畳半が私の部屋になりましたが、その四畳半の部屋でお婆さんが布団に埋もれて発見されたと言う事を聞きました。

お隣の部屋の話に戻ります。

私が引っ越して来た時には、お隣にヤクザのお爺さんが住んでいて、ひっきりなしに子分が出入りしお世話をしているようでした。

何故ヤクザとわかるかと言うと。
皮膚にカラフルな直ボレロに、バラのシースルーシャツを纏った格好がそれっぽい人とか。
逆に入りたてなんだろうなーって感じの、まだ人は殺してなさそうだなーって雰囲気の坊主頭の野暮ったい男性が、慣れないスーツを着て外を箒で掃いてたりするんです。
子供の私でもすぐにわかりました。

そこの貸家は、二軒がくっついてるタイプで、間取りは左右対称でした。
で、中だけを見ると小さめの一軒家の様な作りでしたが、隣同士の壁は薄く、お爺さんはというと、私の部屋の壁向こうの部屋に寝ていたらしく、何の病か昼夜問わず激しく咳が聞こえていました。
正直うるさかったんですが、どうにもならないので我慢するしかないんですよね。
で、そのお爺さん、私が中学の時に亡くなったんです。
亡くなった後の葬式がまた凄いのですが
たいした事もない貸家に「○○組長」の名前が書かれた花輪がズラリと並び、黒塗りの車が大挙して押しかけ、その車から見るからに堅気じゃない方が次々と降りてきて拝んで帰って行く光景が一日中続きました。
ちょっと珍しい物を見たな~って事で今でも話のタネになっています。

その葬式も済んだ数日後。

住んでいたお爺さんは亡くなってしまったので、多分ですが子分総出で退去の為の掃除をしていたんだと思います。
ガタガタという音が隣から丸一日聞こえていました。
その次の日も何か作業をしているんだろうなという音が聞こえ、やがて静かになり
「あぁこれで静かになるな、あの咳ももう聴かずに済むんだな~」
と思っていました

その次の日の晩。
さぁ寝ようと布団に入り、障子から射す月明かりで明るい天井をぼんやりと見ていました。

「ゲホゲホゴホゴホ」
いつもの咳が聞こえて来ました。
「あぁ、今日も咳してるな~…?」

あれ? お爺さん、死んだよね?
死んだわ!

でも、咳は聞こえる、もう誰か住んでる?
いやいや、今日見たら家の中空っぽになってたし
この咳はいつもの咳だし…。

あぁ、こうやって魂って残り続けるんだな~、と冷静にそれを聞いていると。

突然、お爺さんの部屋側からの天井。

説明が難しいんですが、例えば部屋の右片側に物干し竿を吊っていたとします。
その物干し竿、全てがラップ音の音源とします
(そんな事はあり得ないですが(笑)) 
その物干し竿の音源が、右から左の天井に一気に移動して、ラップ音のウエーブが鳴り響きました。

音としては、ばりばりばりばりばりばりばりばり~ という感じですがそれが複数折り重なった音で
怖いとかではなく、ただ音の大きさに驚いたのと、初めて聞いた不思議で綺麗な音源に感動さえ覚えました。

あぁ多分これでお爺さんは成仏したのかもしれないな、という思いが湧いてきましたが、それが本当にそうなのかはわかりませんが

その後からは、パタと咳は聞こえなくなりました。