《おすすめ現代短歌選》

斗田翡翠です。
このツイートが、またプチバズってしまいました。

ここ1~2ヶ月で短歌を始めた人から、リツイートやいいねを、たくさんいただきました。
短歌ブームが来ていることを、ひしひしと感じています。

noteの方が読みやすいと思うので、こちらにもまとめておこうと思います。
なぜ選んだのか、どこがすごいのか、個人的な感想を、ちょくちょく解説していけたらいいですね。

《おすすめ現代短歌選》 入門編20首
① 肩並べ新宿駅に向かう時もう少し続け信号の赤 俵万智
② 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ 俵万智
③ 四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら 俵万智
④ 七匹の子ヤギ残して母さんは何の用事があったのだろう 俵万智
⑤ 親は子を育ててきたというけれど勝手に赤い畑のトマト 俵万智
⑥ 裏表ばらばらのままかたづけたトランプねむれ雪のおおみそか 穂村弘
⑦ 終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて 穂村弘
⑧ 体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ 穂村弘
⑨ 「元気です」そう書いてみて無理してる自分がいやでつけくわえた「か?」 枡野浩一
⑩ 「千円になります」と言い千円になってしまったレジ係員 木下龍也
⑪ 自転車に乗れない春はもう来ない乗らない春を重ねるだけだ 木下龍也
⑫ amazonでパスワード入力するたびに死んだあの子のしっぽがゆれる 三浦なつ
⑬ 誰ひとり降りない駅のホームにも誰かのためのひかりは灯る 田中ましろ
⑭ 別れ話とわかっていたら頼んではいなかったレモンスカッシュが来る 小坂井大輔
⑮ 「一ポンデあげる」ときみがちぎってるポン・デ・リングのたまの一つぶ 西村曜
⑯ 東京の空にぎんいろ飛行船 十七歳の夏が近づく 小島なお
⑰ そういうの邪道だよって笑われながらレースゲームできみを追い抜く 阿波野巧也
⑱ 月を見つけて月いいよねと君が言う  ぼくはこっちだからじゃあまたね 永井祐
⑲ 私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない 田中有芽子
⑳ 「煤」「スイス」「スターバックス」「すりガラス」「すぐむきになるきみがすきです」やすたけまり

《おすすめ現代短歌選》 中級編20首
① サイダーがリモコン濡らす一瞬の遠い未来のさよならのこと 穂村弘
② 1982年7月に誰かがのんだクリームソーダ 谷川由里子
③ 都知事選出てても絶対票入れないけど好きだからするよ交際 手塚美楽
④ 毎日の橋、中央に花束が、よかったと思う、わたしではなくて 手塚美楽
⑤ 自転車の後ろに乗ってこの街の右側だけを知っていた夏 鈴木晴香
⑥ 2m前を死因が通過して、風、ポケットの切符をさわる 木下龍也
⑦ あめいろの空をはがれてゆく雲にかすかに匂うセロファンテープ 笹井宏之
⑧ ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす 笹井宏之
⑨ えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい 笹井宏之
⑩ ふかくふかく潜水をせよ苦しみに似た輝きをくぐる青春 小島なお
⑪ お祭りが偶然あってそこにある空間へ透けてゆくさくらばな 阿波野巧也
⑫ 体操服のままのこどもが弾いている音楽教室すずしいのかな 阿波野巧也
⑬ プール帰りの小学生が駆け抜けて父とわたしの影残される 藤島秀憲
⑭ 幸せな四人家族でありし日をかえりみさする四本の鍵 藤島秀憲
⑮ 三年ぶりに家にかへれば父親はおののののろとうがひしてをり 本多真弓
⑯ 明日事故で亡くなるひとはいま何をしているだろうこの秋晴れに 道券はな
⑰ 運び去るバスのみいつも見ていたがみのり幼稚園ここにあるのか 相原かろ
⑱ ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ 中沢系
⑲ 真夜中のバドミントンが 月が暗いせいではないね つづかないのは 宇都宮敦
⑳ 夕凪の水平線のいつだっていつまでだって見ていたい肩 神野優菜

《おすすめ現代短歌選》 上級編20首
① パンケーキショップの甘い蜂蜜の香りがしたら右に曲がって 鈴木晴香
② ドーナツをそれとして齧れば齧り始めた場所で齧り終わる 望月裕二郎
③ 牛乳が逆からあいていて笑う ふつうの女のコをふつうに好きだ 宇都宮敦
④ 年下の男に「おまえ」と呼ばれていてぬるきミルクのような幸せ 俵万智
⑤ コカコーラを瓶からついでくれるときぼくの視界はゆっくり縮む 阿波野巧也
⑥ ゴダールの海は現実の海より青くてそれを二人して観た 笹川諒
⑦ ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり 永井陽子
⑧ 本日も東日本のご利用まことにありがとうございました 伊舎堂仁
⑨ この自販機は私、荒木が真心をこめて右手で補充しました 斉藤斎藤
⑩ 白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り 斎藤史
⑪ 半分にきれば新たな重心を得て静止するキウイフルーツ 鍋島恵子
⑫ 唇をよせて言葉を放てどもわたしとあなたはわたしとあなた 阿木津英
⑬ 観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生 栗木京子
⑭ ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 佐佐木信綱
⑮ 冷奴ひとりにひとつわたるころ死者のはなしが生者にうつる 外塚喬
⑯ はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる 塚本邦雄
⑰ 馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人恋はば人あやむるこころ 塚本邦雄
⑱ 日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも 塚本邦雄
⑲ にぎやかに釜飯の鶏ゑゑゑゑゑゑゑゑゑひどい戦争だった 加藤治郎
⑳ なぜ銃で兵士が人を撃つのかと子が問う何が起こるのか見よ 中川佐和子