ダレイオス1世 ~鳩の世界史教室~
🕊「こんにちは、鳩の世界史教室へようこそ。
歴史の偉人たちを、世界史のイロハとともにお話しします。聞き手は羊くんです。よろしくおねがいします」
🐑「鳩先生、おねがいします。
世界史は得意ではないけど、授業を受けるのは好きです」
🕊「おぉ!講義は楽しいけれど、テストの点に結びついてない系…かな」
🐑「そうなんです。とくに教科書が苦手、眠くなっちゃうんですよね。最近で枕元に置いて寝る前に読んでます」
🕊「睡眠導入剤…!
みんな教科書が苦手ですねぇ。わりといいこと書いてあるんですよ」
🐑「読んでてつまらないんです。内容がうまく頭に入ってこないし、地図とか図版も何をどう見ればいいのか、よくわかりません」
🕊「なるほど、なるほど。
なんで内容が入ってこないのでしょうか?」
🐑「うーん、そうだなぁ。
歴史上の人物や出来事がいったい何の話なのかイマイチはっきりしなくて気持ち悪いんですよね。あと歴史用語が小難しいから、読みながらつっかかってガックリきちゃいます」
🕊「ひ、羊くん…。そこまで自己分析ができているなら、すこしコツをつかむだけですぐ読めるようになりますよ!
試しにだれか歴史上の人物を一人とりあげてみましょうか」
🐑「では、人名辞典をテキトーに開いて目についた人を選びますね。
えいやっ。
…ダレイオス1世だ!」
1、ダレイオスって誰? ~世界史の”いつ”と”どこ”~
🕊「羊くん、解説を読んでみてください」
🐑「ラジャーです。
ダレイオス1世
アケメネス朝ペルシア最盛期の王(在位前522年~前486年)。中央集権体制を確立し、エーゲ海からインダス川にいたる最大領域を実現した。帝国を20の州に分け、サトラップを任命し統治にあたらせた。また彼らを監督するため王の目・王の耳を巡察させた。宿駅制度の整備し内政を充実させたほか、ギリシアに遠征してペルシア戦争がはじまった。
ほらね、わからないでしょ? ぜんぜんイメージがわいてこない。いったいどこの誰なんだ、ダレイオス…!」
🕊「羊くんは世界史の文章を読むとき、どこに焦点をあててますか?」
🐑「焦点!? うーん、まあ普通っていうか、アタマから順番に読んでますね」
🕊「それでは、まず”いつ”と”どこ”に注目しましょう!
なんとなく読むのではなく、メリハリをつけてください」
🐑「それだけでいいんですか?」
🕊「教科書や参考書を読むときって、”どんな情報をキャッチするのか”がとっても大切なんです。ほかの教科でもそう。
世界史の場合は、時期と場所にアンテナを張ってください。
この2点を意識すれば、おどろくほど教科書が読めるようになりますよ」
🐑「なるほど、ダレイオス1世の場合だと…。
時期は前500年頃、場所はアケメネス朝ペルシアだ。
今から2500年ほど前ですよね。どんな時代だったんですか?」
🕊「前500年頃の世界は”枢軸の時代”とよばれていて、各地でいろんな思想が立ちあがった歴史の転換期だったんです。中国では孔子が儒家を確立し、インドではブッダが仏教をおこしました。西アジアでユダヤ教が形作られると、古代ギリシアでは自然哲学が開花します。
日本では、縄文時代末期にあたりますね」
🐑「縄文! とてつもなく昔ですね。ダレイオスはこの時代にアケメネス朝ペルシアの全盛を築いたワケだ」
🕊「そういう年代感覚って強力な武器になるんです」
🐑「要チェックですね。
ところで、ペルシアって何ですか?」
🕊「イラン高原地帯の名称です。地図でいうとこの辺り」
🐑「ここ、ペルシアっていうんだ…」
🕊「いまではイランという国があります。ペルシアっていうのは古来よりヨーロッパ側の呼称だったから、20世紀前半に改称しました。
世界史ではどこの話をしているのか地図でかならず確認しましょう。
羊くん、”いつ”と”どこ”がイメージできると視界がパッとひろがりませんか?」
🐑「た、確かに…。前500年頃に活躍した、アケメネス朝ペルシアの君主ダレイオス1世。なんだか彼が身近になった気がします!」
2、”コトバの定義”をめぐる冒険 ~世界史の行間を埋める~
🕊「ここで質問。アケメネス朝の”朝”って何のことでしょうか?」
🐑「王朝の”朝”です!」
🕊「では、王朝の”朝”は何?」
🐑「ぐっ…それはですね…。えっと、ぐぐっ…」
🕊「意外と説明できないですよね。
”朝”っていうのは、国王の家柄のこと。
アケメネス朝ペルシアは、アケメネスさんが王位を継承するペルシアって国という意味なんです」
🐑「シンプル…!
”○○朝△△”みたいなのがいっぱい出てきて、いつも何気なく使ってたのだけど、そんなに簡単なことだったんですね」
🕊「有名どころだとブルボン朝は、ブルボン家さんの血統によるフランス王国。中国の漢なら、漢朝中華帝国になるんですよ」
🐑「もしかして、いつも使っているコトバの意味をあいまいにしているから教科書が読みづらいんですか?」
🕊「そうそう。コトバの定義っておざなりにされているんだけど、ちゃんと確認しておけば文章の行間が見えてくるんです」
🐑「そういうの多そうですよね。
ダレイオス1世の説明文に”中央集権体制を確立”ってあるんですけど、”中央集権”なんかも定義しなおすのがいいのかもしれません」
🕊「お! その調子ですよ」
🐑「読んで字のごとく…、中央政府に権力を集めることですか?」
🕊「そのとおりですっ!」
3、壁に王の耳あり ~世界史のカラクリを学ぶ~
🐑「ううーん…」
🕊「どうしたんですか、羊くん。浮かない顔して」
🐑「さっきの中央集権なんですが、中央に権力を集めるっていうのはわかるけど、なんとなく腑に落ちないんです。”じゃあ権力って何なの?”っていう定義が必要ですよね、コレ」
🕊「す、すごいぞ羊くん。世界史が伸びる生徒の典型だ…!
ぜひ辞書を引いてみましょう!」
🐑「え…めんどくさいです」
🕊「前言撤回!」
🐑「っていうか4000字と決めた尺は大丈夫ですか…?」
🕊「メタ視点!!!
まあそれもそうなので答えを言っちゃうんだけど、権力っていうのは”人々の行動を強制する武力的な作用”のこと、ここでは”徴税権”と考えてください」
🐑「なるほど。権力って税の徴収を強いるパワーなんですね」
🕊「それ以外にもいろいろ機能はあるんだけど、簡単のために”人々から徴税する権限”としましょう。権力ってわりとおおまかな概念なんですよね。
そして、中央集権をすすめるダレイオス1世は、広ーい帝国の領域内で民衆からスムーズに徴税を実施しなければならなかったんです」
🐑「なにやら大変な事業だぞ…」
🕊「そうなんです。アケメネス朝ペルシアって、最盛期にはオリエント全域を支配する大帝国でしたからね」
🐑「こんな広いところをどうやってまとめたんですか?」
🕊「そこで世界史のカラクリに登場してもらいましょう!
☞”官僚を派遣し、中央集権を維持する”
歴史上に現れた多くの大帝国は、広大の領土で異民族を統治するために、官僚システムを整備しました。政府の役人があちこちに派遣され、政治を行います。政治ってのは、徴税することと考えてください。大帝国では領内にたくさんの異民族が居住しているのですが、官僚が彼らからきちんと税をかき集めないことには国家の財政がまわらなかったのです。
この公式は古今東西いつでもどこでも通用するセオリーなんですよ。そのことを念頭に置いて、もう一度ダレイオス1世の説明を読んでみてください」
🐑「ガッテン承知しました。
ダレイオス1世
アケメネス朝ペルシア最盛期の王(在位前522年~前486年)。中央集権体制を確立し、エーゲ海からインダス川にいたる最大領域を実現した。帝国を20の州に分け、サトラップを任命し統治にあたらせた。また彼らを監督するため王の目・王の耳を巡察させた。宿駅制度の整備し内政を充実させたほか、ギリシアに遠征してペルシア戦争がはじまった。
サトラップは官僚のこと…ですね。区分けした領土に彼らを派遣して、徴税をすすめるんだ」
🕊「そうです!
サトラップは”知事”と訳されます」
🐑「”王の目・王の耳を巡察させた”
ここの部分はつまり、サトラップがきちんと政治しているのかどうか監視する役人を巡回させたってことですね」
🕊「イエス、イエス!
この巡察官を、”王の目・王の耳”っていいます。地方に派遣された官僚って、見えないところで私腹を肥やすというか、わりと汚職にまみれちゃうんです。それで、見張り役を巡らせて彼らの腐敗を防止しました。官僚が腐って衰退した国は、枚挙にいとまがありませんからね」
🐑「そういうしくみを作って、帝国を維持するんですね」
🕊「そのほか”宿駅制度を整備”ってところは、ヒトやモノ、情報を円滑に動かすため、駅伝制を整えたんです。”王の道”っていう街道もつくられました。
これで中央集権がうまくいきますよね。世界史上のいろんなシステムや法律って、”国家体制の維持”がその目的なんです」
🐑「おぉ…、まるでスイカを食すかのようにしゃくしゃく理解できますね。
① ”いつ”と”どこ”をおさえる、② コトバの定義を確認する、③ 世界史のカラクリを理解する、ここを意識するだけでずいぶんと視野がひろがりそうです」
🕊「それが、ザ・ワールド・ヒストリーですッ!!!
ぜひ教科書や参考書を読むときには、ぜひ活用してみてくださいね」
🐑「鳩先生、ダレイオスの説明文にある”ギリシアに遠征してペルシア戦争がはじまった”ってところなんですが…」
🕊「国家の拡大を防ぐことはできません。利益の最大化を求めてしまうんです。それで、ダレイオス1世はギリシア世界とのペルシア戦争をおこすのだけど、時間がきてしまいました。この続きはまたの機会にお話ししましょう…!」
🐑「ぐ…、次回を楽しみにしてます」
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鳩先生、羊くん、イルカさんによる書籍がでます!
この20人でわかる 世界史のキホン | 山本 直人著 | 書籍 | PHP研究所
記事のように軽妙かつ世界史の本質をついた人物伝です。
ぜひ興味があれば読んでみてください!!
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