知識の捉え方の違い

知識の2つの解釈

初めに断っておきたい。今日の話には結論も何もなく、ただつらつら文字が並ぶだけだろう。

多くの日本人は小中高12年間で学習指導要領に沿った知識を学び、人によっては大学に進学して高度な勉強と研究に進む。こう書けば単純だが、なぜか知識の捉え方は2つの形に収束しがちだ。すなわち、知識の利用価値を重視する立場としない立場だ。当たり前すぎてわざわざnoteにする気もなかったのだが、先日この2つの立場を実感する出来事があった。

その出来事は高校同期と食事をしている時に起こった。ある友人が「わざわざ東大に行ってインド哲学やるなんてどうかしてるだろwwもったいない」といった内容の冗談を口にしたのだ。東大イン哲は一部界隈でネタになってきたようだ。(真偽のほどは私には不明)もちろん、この友人は悪意なく話の流れで冗談を言っただけだったので別に私は苛立ちを覚えたりはしなかった。

だが、この些細な出来事は私に哲学やその他幾つかの文系学問への一般的な見方を思い起こさせるのに十分だった。人文系の学部に属して1年が経つと感覚が浮世離れするらしい。さらに、私が通う大学の教授が以下のようなことを仰っていたのを思い出した。

高校までの歴史解釈と異なる内容を大学で提示した時、どうして楽しめない人がいるのだろう。「そっちの解釈(大学で学んだ解釈)のほうが正しいなら最初からそっちの解釈を教えて欲しかった」と授業の感想を述べる人がいるが、純粋に未知の解釈に出会ったことを喜べないのか。そもそも学びとは正解を鵜呑みにして終わるものでもないし、唯一の正解なんてあると誰が決めたのか、、、。

内容はうろ覚えだが、こんな感じだったと思う。高校の友人の冗談では利用価値を重視して知識が話された一方、大学の教授の発言では純粋に探求することを重視して知識が語られている。

知識は役に立ってこそと思う背景

知識は利用価値がなければならない、誰かにとって有用であるべきだと思いがちな背景には何があるのか。1つ目は利益を生まないことにまで構う心の余裕がないことだろう。学生なら勉強や部活に習い事、社会人なら仕事に日々忙しい。役に立たないことにまで時間を割く余裕は世の大半を占める普通の人にはないだろう。2つ目は利益を生まないことに割く金の余裕もないことだろう。金をだしたはいいが利益が出なければ収支はマイナスだ。出どころが税金であろうと民間であろうと投資はリターンがなければ持続しない。

有用性を考える際の陥穽

こんな感じでよくある発想を進めてきたところで、私は学問が役に立つという時誰が想定されているのか気になった。一般市民だろうか。(ここで”一般”と付けたのは基本的に私たちは学問が恩恵をもたらす時、その学問については専門外であるからである。)それとも特定の専門家や政治家だろうか。はたまた現在に生きる人ではなく未来の人かもしれない。日本ではなく外国で生活する人の役に立つ可能性もある。

幾つか受益者を想定してみたが、学問が役に立つかどうかを決める受益者は受動的に利益を享受するだけなのか。表現は悪いが、口を開けたまま恩恵がもたらされるのをただ待つだけなのか。というのも、素朴な印象論で「理系の成果は生活を大きく変えるから有用性を実感しやすいが、文系は何の役に立ってるのかわからない。」と言われ続けると「利益をただ口あけて待ってないで少しは歴史学や哲学が何をしているのか理解しようとしたらどうなのか」と憤りを覚えてしまうのだ。

ここまできて1つのことに私は気づいた。私自身が学問を妙に特権視していることだ。学問が誰の役に立つのかと考える時、そこから「学問は使い方次第で役に立つのだから文系/理系とか分けず有用性が云々偉そうに言わないでほしい」という結論を導出したい自分がいる感じがする。別に学問が特別なわけではない。大学にまで来た人間は学問を無自覚に特権視することがある。これが落とし穴である可能性を自覚できることは大切かもしれない。世の中では学校教育に批判が続出したり、勉強ができる人は妬まれたりと学問を含む知的活動それ自体が否定的に見られていてもおかしくはない。

理想的と都合の良さは紙一重なのかもしれない

今日落ち着いた結論は結局、提供者と受益者が双方歩み寄らないと事態は解決に進みそうもないというありきたりなものだった。この人間像の想定は理想的でもあり都合がいいだけでもある。お互いに理解しようと歩み寄ることが建前上大切にされている。だが、そんな建前が実現することは稀だ。また、双方が歩み寄ってくれると学問を有用性だけで測る風潮が変わるかもという都合の良い想定でもある。

何が言いたいんだかわからないが、システムを考えるとき人間をどう捉えるかで描く世界観は大きく変わるし、思考を進める際に環境によるバイアスがかかって思わぬ落とし穴にハマることは十分ありうるって感じだ。

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