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WINEプロジェクトがやっていること

Quoraに興味深い投稿が上げられていたのでシェアしつつ、この話を少し読み解いていこうと思います。

LinuxがWindows APIを実装すればいい?

回答者はWindows APIをリバースエンジニアリングしていた方です。「Windows APIを移植すればよい」というのは言葉にすれば簡単ですがMicrosoftがライセンスを守っている間は不可能。そのためAPIをリバースエンジニアリングするしか方法はない、ということです。話を読むだけでそれが恐ろしく巨大で気が遠くなる仕事であることが伺えます。

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私がやっている「ミリタリーやヒストリカルのデジタルモデリング」でも同様のことが言えます。2次元の実際の戦場写真や資料をもとにこれを考証し3次元立体に再現していくのがミリタリー系モデリングの要です。2次元キャラを3次元フィギュアにするモデリングも全く同様です。2次元の元絵を3次元ではどうなるかを考察し、それを実際の立体にしていきます。

ある時SNSで、

「その写真をそのまま再現すればいいだけじゃん?」

という旨の投稿を目にしました。

まちがってはいません。そう、確かに
「その写真をそのまま再現すればいいだけ」
なのです。言葉にすれば簡単です。が、やってみればそれがどれだけ大変なのことか分かるでしょう。だから多くの人が気軽にやらないし、上手く出来ていないのです。それがいかに大変か。このような言葉を投げる人はそれが分かっていないのでしょう。

「Windows APIをLinuxに移植すればいいだけ」。

この言葉にすればシンプルな事がいかに大変か、というのも同じことが言えると思います。

WINEは壮大なリバースエンジニアリングプロジェクト

WineはWIN32やユーザーインターフェイスライブラリのクローン

と語っているように、WINEプロジェクトはそのWindowsリバースエンジニアリングプロジェクトの一つで、2008年にバージョン1.0がリリースされた、比較的新しいとされるプロジェクトです。

元記事はこちら。


「WINEはエミュレーションではない」

といわれる所以は、

「WINEはWindowsをエミュレートしていない」
「WINEはCPUエミュレーションをしていない」

というのが根底としてあります。Windows環境をまるまる再現する「仮想環境ソフト」ではなく、リバースエンジニアリングでWindows APIを再現した「互換レイヤー」です。なのでWindows環境を一切使わずにLinux上で直接Windowsのexeファイルを動かします。

これがいかに凄いことか。

最初のリリースであるバージョン1.0をリリースするのに15年の歳月をかけていることからも想像出来ます。

Wine began in 1993 under the initial coordination of Bob Amstadt as a way to support running Windows 3.1 programs on Linux. Very early on, leadership over Wine's development passed to Alexandre Julliard, who has managed the project ever since. Over the years, as the Windows API and applications have evolved to take advantage of new hardware and software, Wine has adapted to support new features, all while being ported to other OSes, becoming more stable, and providing a better user-experience. An ambitious project by definition, work on Wine would steadily continue for 15 years before the program finally reached v1.0, the first stable release, in 2008.

SteamでおなじみのValve社がWINEをベースにしたProtonを開発させてからさらに進化が加速したように思います。今年に入ってバージョン6.0がリリースされましたが、その後も細かいバージョンアップが続いています。
つい昨日もバージョン6.7がリリースされました。↓

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私はこのWINEを使ってWindows版ZBrushを使い始めて半年以上になります。この半年の間にもバージョンアップが続き、ZBrush 2021.6.4とWINE 6.6でついに全ての機能が不具合なく完動するようになりました。アプリ側の進化も非常に大事である好例だと思いますが、なによりもWINEプロジェクトの飽くなき追求と進化に感動と驚きを感じます。ホント、感謝しかないです。

まとめ

WINEプロジェクトに感銘を受け、実際にそのプロジェクトの成果物の恩恵を大いに受けているものとしては、使い続け、フィードバックし、発信していくことで支援していければ、と考えています。WineHQプロジェクトにフィードバックしたりこうやって書いているのも活動の一環です。

ひとりでも「Win アプリon Linux」のユーザーが増えることで、「OSってなんだろ?」「自分に真にフィットするOSとは?」「自分がOSに求めるものとは?」とOSの存在意義と本質について考えるようになったり、「ほんとにWindows一択の世の中って健全なのだろうか」と考えるようになったりして、
「全てのアプリが特定のOSに依存せず、OSを好みで自由に選ぶ時代」
が到来するといいなと願っています。もう少しなんですけどね。アドビ、マイクロソフト、Pixologic。この3社。

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