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つれづれ、生きる

小さな子たちが集まって読み聞かせを待っている。付き添いの私は後ろの方にそっと腰掛ける。

「はっぱのフレディ」という絵本を知った。主人公はカエデの葉。顔なんて描いてなくてそれぞれのページにはただただ私達がよく知るそのまんまの葉っぱがいる。カエデは落葉樹だから、勿論彼の寿命は1年もない。でもそこに比較対象なんて出てこないからそれが短いとも言えない。ともかく彼は隣の親友と話しながら日々を過ごす。でも冬が近づけば皆枝を離れていく。死にたくないと叫ぶ彼を、親友は「僕らは一生懸命働いた、役目を果たしたんだ」となだめる。

物語の中で、何百年も生きるような人ならざる存在が、人間のことを儚く美しいと言う場面を何度か見たことがある。でも人よりずっと短い生を生きるものは人間をどう見るのだろうか、そんなことを思った。

彼らは毎日を充分に過ごした。やるべきことを終え、最後には彼も死を受け入れて地に落ちて行った。たった1年、それで全て。

なんでそんなに生きるんだ?とでも思われそうな気がする。君たちの役目はそんなに時間がかかることなのか?盛りを過ぎて、前線から退いてもなお、何故そんなに長く生にしがみつく?

ーー何も答えられないなぁ。

実際葉っぱに心はない(と思う)けど、己の責務を果たして、満足げに散ってゆく姿は、例えその生が短くとも、美しく羨ましいものだと思った。絵本は時々思いもよらないことを考えさせる。


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