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18歳になります

人間誰しも、かは分からないけど黒歴史というものがありまして。何の気なしにその古びたノートを開いた瞬間、私の”掃除”は始まりました。いやもう、なんでこんなものを自分の部屋でもない、いつ誰に見られるかも知れない所に置いてたんだ私。

小学校高学年辺りになると思春期の入り口ともあってまあ何やらマセてくる。そりゃもう色んなものにすぐ影響される。周りなんてちっとも見えていないのに、自分は大人だと思い始める。ホントの大人ならそれもかわいいと言ってしまえるのかもしれないけど、まだガキの私にはそれがもういけ好かない。「ヘル・ファイア・ドラゴン!」とかで騒いでいる中学生男子の方がよっぽどかわいげがあると思う。

――あくまで自分の話だ。あまりけなすのも結局は自分のことなのだからよしておこう。

だがこの黒歴史というのがいけない。本好きな夢見がち少女がそんな時期に何をするかと言ったら、創作である。何枚目になるか分からないそのノートのページを、私は無表情に破り捨てた。ビリリ。

置いてあったノートは全部で3冊。ほとんどが白紙なのに時折現れる“ソレ”。ノート事捨てるにはあまりにもったいないのでいちいち目を通しながら破いていく。苦行だ。書くなら一冊にまとめておくれよ…。苦情を入れるべき相手は、まぎれもない自分である。

みんなどこかで読んだことのあるような話、しかも全て途中で途切れている。別のページにはそれらの物語の登場人物の絵。ご丁寧にセリフ付き。うん、ないわ。ビリリ。こっちでは自分が絵になってキャラクターと会話している。・・・。ビリリ。そろそろそこで在宅勤務中の父に何か言われそうである。ビリリ。ビリリ。

最後のページにやけに長い文章が書いてあった。拝啓、15の私へ。ほう。文言のあと数行開けて、拝啓、12の貴女へ。ほほう。見るまですっかり忘れていた、12歳と15歳の私が文通した跡だ。

12の私というのは、まあ知っての通り読んでいてかなりツラい。言葉選びというか、色々。それなりに悩んでいたのは知っているけれど、あたかも悲劇のヒロインである。今にもまして子供だな、あたりまえか、と苦笑しながら目を滑らせて、おっと目を瞬く。

15の私も大体同じ感想を抱いたようだ。ヒロイン気取りはやめて、周りを見て、などなど。時折ん?と思う書き方もあるけど、せいいっぱい背伸びして過去の自分を励まそうとしたのがわかる。彼女から見れば未来の私まで少し励まされてしまった。思うところあって、一部分だけ文章を写した。

手紙はどうやら小学校卒業前の私が、中学卒業後の私に宛てたもののようである。あいだに3年。15の時からすると、今年でまた3年だ。さて、今年18になる私は、

にこやかに、最後の黒歴史をゴミ箱にツッコんだ。







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