布ちゃん

先日、気になっていた美容室で髪を短く切りました。その美容室にはとても人懐こい猫がいます。座っているとちょこんと膝に乗ってきて、そのまま気持ちよさそうに寝ます。「奇跡だ……」と胸の中で呟いて至福の時間を過ごした。

猫が物凄く好きです。しかし縁がなく、飼うことも、野良猫と近しい中になることもなくここまで過ごしてきました。その中で最近、キジトラのオス猫がよくウチの周りをうろつくようになりました。野良猫界ではたぶん、ウチはその子の縄張りなのでしょう、人馴れはしていないけれど、ウチを自分の物だと思って塀や物置の屋根に溶け込んでいます。そもそも猫のものではなくウチはウチなわけなのだけれど、顔を見ると急いで逃げるため、なんだか申し訳ない気持ちになる。特に餌を用意するわけでもなく、逃げない程度に挨拶をする毎日。

少し帰りが遅くなった日。真っ暗な駐車場を横切る時、道の真中にブランケットのような布が落ちているのに気が付きました。誰かが車からうっかり落としたのだと近づいて見ると、ブランケットではなく、いつものキジトラ猫が寝ているのでした。近づくと逃げてしまうとばかり思っていたので、後数歩という距離でも起き上がらず、じっとこちらを見ているのにギョッとしてしまいました。どうやら、逃げない程度の挨拶で、私の事を害を及ぼさないいつもの人間だと覚えていたようです。

それ以来、彼のことを「布ちゃん」と呼ぶようになりました。