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地方ベースのスタートアップをやることの面白さと難しさ

緊急事態宣言も明けて、決して油断できる状況ではないですが、人の移動も以前よりかは動けるようになってきました。コロナの影響が日増しに大きくなる中で、都心で働く必要はなくて、地方で十分仕事できるのではといった言及や、なかには会社ごとの移動で注目される取組もでてきました。

さて、弊社の本社は神奈川県鎌倉市にあります。都会とは全くいえず、とはいえ、なにもない田舎でもない、個人的には程良い環境の場所にあります。都会か地方かどちらか選べと言われたら、間違いなく地方に位置する都市ではないでしょうか。とはいっても、鎌倉の魅力は語り尽くせないほどあるのですが、その話はまた別の機会にとっておきまして、今回は弊社事業において現時点で力を入れている佐賀県での話がメインです。鎌倉のように都会か地方か悩むことなんて1秒たりともない「The 地方」である佐賀県で展開しているメリット・デメリットを紹介します。まずは景気の良いメリットの話からいってみましょう。

メディア露出がしやすい

弊社の昨年のメディア露出をまとめたスライドがこちらです。

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年間平均で3日に1回もメディアに出てますよ。ドヤッ!といういけ好かないスライドなのですが、これカラクリがあります。勘の良い方はお気づきの通り、地方局や地方紙で結構な数取り上げられているのです。都心のメディアにはない、地方のメディアならではの魅力があります。それは、地元枠として取り上げられるネタ枠があることです。ここ結構空いてます。都市圏と違って、地方圏の方がネタに飢えている気がします。なので、大変有難いことに地元のメディアの方々が好意的に取り上げていただけるのです。

例えば、行政と連携して「◯◯市へ進出するための協定を結びます」といった進出協定式。弊社が行った際にはテレビ、新聞含めて大体10社くらい来てくださりました。例えば、弊社が東京都港区内にも支店を出す場合に、世の中のほとんどが知らないスタートアップの会社相手に何社の方が駆けつけてくださいますでしょうか。結論に近い話ですが、地方というのは競合の絶対数が少なくなります。これが大きなメリットです。そういえば、昔NHK佐賀の生中継で夕方のニュースに取り上げていただきました。放送後に会社のメンバーと近くのスーパー銭湯に行ったのですが、露天風呂で話しかけられたおっちゃんとの会話の中で、「さっきNHK佐賀で中継されてたんですよ」なんて言ったら、「さっきのアスパラのロボットやってたのは、あんちゃんたちか!」みたいな展開になったこともありました。地域でメディア露出することで、そこから全国紙へ取り上げられるような流れもあり、地方でのメディア戦略はやり甲斐がかなりあります。

ターゲット層に届きやすい

メディア露出が増えることが要因でもあるのですが、地方は人のネットワークがかなり緊密です。良いか悪いかは別として、よく田舎では人の噂が回りまくるとされています。これ本当です。恐らく佐賀県のアスパラガス農家さんの95%くらいが弊社のロボットのことを認知してくれています。弊社では農家さんとのフロント業務を担う人をアグリコミュニケーターと呼んでいるのですが、新任で入ってきた方が「初めてアプローチする農家さんの方でも、みんなinahoのロボットのことを知っていますね」と、驚かれます。

そもそも、弊社のビジネスモデル上、いきなり全国に展開することを考えておらず、導入地域を選定し、そのエリアの中で利用していただける方を増やしながら、導入地域を増やす戦略をとっています。そのためオンラインでマスに認知を取っていくアプローチよりも、局所的にオンラインとオフラインを組み合わせたアプローチを行う方が対農家さんへの認知面だけでは効率的であります。とても泥臭いアプローチにはなるのですが、弊社の場合はカスタマーである農家さんのリアルコミュニティに接続することができると、かなりの認知度が獲得できることがわかりました。事業を進めるうえで、地方だからこそのやり方を模索することは結構面白みがあるなぁと感じています。

支援が手厚い

地域にもよりますが、冒頭で紹介したような行政による支援策が、恐らく世の中に一般的に知られていないだけで、企業誘致に積極的な県はかなり支援が手厚いです。

例えば、弊社が出店している佐賀県鹿島市では、県及び市から以下のような支援を受けています。

−オフィス賃料に対して県が50%補助
−残りの賃料50%に対して市が50%補助

上記制度は3年間のみ対象ですが(補助金額に上限はあります)、実際の家賃に対する手出しが25%の支払いで済むわけです。他にも

-物件の改装費が上限250万円まで補助率100%
-従業員家賃50%補助(3年間、年100万円まで)
-通信経費50%補助(3年間、年50万円まで)

等々、お金のないスタートアップにとっては、とても有難い補助政策です。また、支援はお金だけではありません。例えば、弊社が開所式をあげた際には、椅子や暖房等の備品が足りなかったのですが、市役所の方が市の備品を貸してくださり、運び込みまでやってくれました。他にも、企業説明会をやる際には、地域の回覧板にビラを差し込んでくれたりと、都心のスタートアップでは考えられないような行政支援を受けることができています。そんなこんなで、仲良くなって行政の方と一緒にスナックで飲んだりすることもありました。そういう人の近さが面白いんですよね。

あと、驚いた支援策としては佐賀空港からのリムジンタクシーですね。空港から好きな場所まで送ってくれて片道1,000円です。大体40〜50分くらい乗るのですが、1,000円は激安ですよね。自治体として空港の利用促進を行っているからこその制度だそうですが、羽田から鎌倉まで1,000円で帰ってみたいものです。

さて、ちょっと長くなってきたので、ここから地方独自の難しさの話になります。

刺激が薄め

人による話ではあると思いますが、社内のメンバーでも東京と地方と2拠点で生活しているメンバーが、地方滞在率が長くなると、こういった不満が正直出てきます。都心の良さって人が密集していて、情報交換がたくさんされていたり、人の多様性があるところにあります。その点、地方に滞在していると、話す相手が固定化されてしまったり、食べにいくお店のレパートリーが少なくて、飽きてしまったり、新たな人との出会い自体がなかったり。そのような現象があります。あとは、流れるスピードが緩やかに感じてしまうなんて話もありますね。

コロナの影響もあって、さまざまなウェビナーが開催されたり、オンライン飲み会といったものが日常化されたことで、以前よりは地方にいても新たな情報や人に触れ合いやすくなっており、問題が多少は改善されているかもしれません。とはいっても抜本的に解決されるわけでもないので、個人の問題としては、そもそもの向き不向きが正直あると思います。あとは、2拠点生活をベースとするのであれば、移動の頻度等を調整しながら、ある程度カバーできるように動くことですね。

話が回りまくることのリスク

今回のコロナ禍でもいくつかニュースとして取り上げられていましたが、「どこそこの誰これがコロナにかかった」みたいな噂がまわり、差別をうけるような環境下においやられ、家族ごと引っ越しせざるおえない状況になった話も聞きました。都心と比べると地方は人口密度も低いですし、話も回りやすいので、個人が特定されやすい事実もあるでしょう。これ対個人でなく、対法人として考えると、事業リスクがとんでもなく高いなと考えており、弊社でも相応の対策をし続けています。分かりやすい話としては、今も検温していたり、移動時においては費用よりも、いかに人と接触しないルートになるかを検討したり、少しでも怪しい症状(37℃以上の発熱等)が出たら隔離する等の対策をしています。

ここまでやる必要あるかな?と思うこともないのですが、吹けば飛ぶようなスタートアップにとって、地域でレピュテーションが下がりまくることによる事業への多大な影響を想定すると、やりすぎることはないのではないかと考えています。

採用の難しさ

もしかしたら、これが一番大きいかもしれません。どうしても、採用面で地方ベースになることで想定される採用プールの母数が激減します。弊社の中でも既に、東京から佐賀へ家族ごと移住するケースも出ていますが、やはり家族ごと移住することは相応のハードルの高さがあります。もちろん、移住を伴わずに、出張ベースでの移動をしているメンバーもいますので、会社としては社宅の整備であったり、地域食材購入補助制度等、なるべく出張ベースの人にも負担をかけないような形で運用しています。(まだまだなので、良い施策あれば教えて下さい!)

反面、このボトルネックを越えて採用できている人は、それだけ本人がやりたい事業と弊社の事業がリンクしているであろう仮説も成り立ちます。都会にある会社を選ばずに、地方で展開する会社だからこそのコストも飲み込んで弊社を選んでくれていることは、大変有難いことであり、だからこそ、みんなやりたいことをやっているから、がんばれているのかもしれません。なんてったって、正社員だけでも25人くらいまでになりましたが、事務の人が家庭の事情で1名辞めた以外、退職者が全くでていません。あとは、地方で働きたい人が世の中に絶対数としてある程度はいるはずなので、我々としてももっとそういった層へ認知してもらう努力が必要ですね。(誰か良い人いたら紹介してね!)

地方だからこそ気づけること

最後になりますが、地方にいる特権は、地方にいるからこその気づきだと感じています。地方特有の課題は都会の人は気づきにくいです。例えば、農業の課題なんて、普段渋谷界隈にずっといる人が気づけるはずがありません。そういう意味では、課題の早期発見を行うステージとして、地方はテクノロジーの観点を持って課題を見つけようとする人の絶対数が、都心にいて課題を見つける人と比べて少ないのは明白なので、新たな発見をできる可能性は相対的に高いはずです。

ただ、そのためには自分自身の行動をユージュアルだけでなく、アンユージュアルな動きも行うことで、新たな課題を見つけたり、なにかに気づくことが大事になる。そんな行動指針は、都会にいようが、地方にいようが関係ない話としてあるのも事実です。ようやく少しずつではありますが、動くこともできつつあると思うので、十分にケアしながら動いていきます!

■地域で課題見つけて解決したがりな方お待ちしてます!!


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2014年に人工知能の学習をはじめ、2015年に地元鎌倉の農家との出会いから、農業AIロボットの開発を着想。全国の農家を回りニーズ調査を進め、2017年1月にinaho株式会社を設立。世界初のアスパラガスやキュウリ等を汎用的に収穫できるロボットをサービス展開。

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