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エリアF -ハレーションホワイト- 3

 データバンクには個人の過去の情報が全て入っている。もちろん、現在の情報も。環境から行動から、身体の情報まで、全てが管理されている。ただしこれらのデータは厳重に保管されており、第三者が閲覧することは、原則として不可能である。だから、もちろん個人のプライバシーは完全に守られており、このデータを元に、国家が個人を管理するなどというSFの世界のようなこともあり得ない。

 ぼくは今の社会に満足しており、この時代に生まれてよかったと、心の底から思っている。

 ぼくは今、16歳。第15学年生だ。学校は第1学年から第8学年までが基礎教育で、全員が受けなくてはならない課程だ。習熟学年は第9学年から第17学年までで、その後は就職するか研究課程に入る。どの学年を学ぶかは、個人の希望と年初の入課テストとで判断される。年齢は関係ない。16歳というと平均は第10学年ぐらいで、ぼくは普通の16歳より数年早い進級をしている。ついて行くだけなら、たぶんもっと早く進級することもできたが、それよりも各学年での学習の理解の度合いを高めたかったから、今の学年にいる。

 人よりも少し早い進級ではありながら、ぼくは常にトップクラスの成績を維持してきた。学校管理もクオンタムが行っているので、世界(といっても、現在は地球上どの地域も同じ社会システムで動いているので、「世界」は昔の「国」と同じ意味を表す)での学力順位も、すぐにわかる。ぼくは今まで20位以下に落ちたことがないと記憶している。まあ、現在の地球の人口が、最盛期の100億にくらべると1割に満たない9億4600万人なので、100億当時の20位に比べたら、ずっと下の方かもしれないけれど。でも大変優れていることに変わりはないだろう。

 いやこれは自慢ではない。事実を客観的に語っているだけだ。実際、進級の早さでいうと、第17学年を6歳で卒業した子がいる。十代前半での卒業なら決して稀ではない。ぼく程度の進度の者なら、特に珍しいという訳でもない。

 クオンタムによる社会管理・制御システムには、学校教育システムの他に、大きくは例えば政治経済のシステムや、かつては国防と言った治安維持のシステムがある。身近なところでは、気象管理システムや交通制御システムなどがある。それら様々な社会管理・制御システムの中で、もっとも優れたシステムが再教育システムである。再教育システム。これは先に言った、17学年ある学校教育システムとは全く別の機構だ。

続く

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