クラウドの「柔軟なスケーラビリティ」という謳い文句を拡大解釈しすぎないで!

前回はクラウドってそもそも何か、ということについて詳しく書いたつもりだ。今回は1点追加で、注意点とまではいかないがお伝えしたいことを書いた。

クラウドへの過度な期待は禁物

クラウド・コンピューティングによって、システム資源は拡張可能であることを前回はお伝えした。
しかし、そのパフォーマンスととは別に考えなければならない。
ここに落とし穴というか認識ズレがあるように思うので、補足したい。

ERPに限らず、システムはデータ量が多大になると、当然、処理時間がかかるようになる。特に、管理会計領域では多彩な分析軸でデータを詳細なデータ粒度で分析したい、というニーズがある。
この場合、データ量が膨大になり、画面上で軸を切り替えたたりする際には、時間がかかってしまう。

つまり、ここで何が言いたいかというと、データの「容量」はコストを容認すれば容易に確保できるものの、必ずしも理想的なパフォーマンスで分析が可能とは限らないのだ。

このため、自社の分析要件やその時に必要となるデータ量を念頭に置いて、処理の負荷に応じた分散処理やインメモリー・データベースなど、パフォーマンスが落ちにくい仕組みになっているかどうか、製品選定の段階で確認が必要となる。

この誤解というか認識ズレは、ERPのように全従業員が使うようなシステムの場合、処理時間がかかるというストレスにつながるため、ベンダーと利用企業(特に営業系のあまり詳しくない方)とで認識合わせ、とでも言うべき落としどころがないと、ベンダー側としてもそこを突かれても「ごめんなさい」としか言えない。これは私のようなエンジニアではないフロントに立つベンダー側の人間の実体験で書かせてもらった。

インメモリーについての基礎的な理解

「インメモリー」を理解するためには、ある程度ハードウェアの基本的な理解が必要だ。ここではなるべく分かり易く書きたい。

従来は作成されたデータはハードディスクに保存され、作業時はCPUに近いメインメモリーに読み込まれ処理されていた。(メインメモリー上でのデータ処理は、ハードディスク上の処理に比べると圧倒的に高速)

企業が利用するERPシステムも、これまでハードディスク上のデータベースに存在するのが通常だった。しかし、技術発展で、メインメモリー上にデータベースを保持することが可能となったのだ。これを「インメモリー・データベース」と呼ぶ。

インメモリーを利用するERP

ERPのような基幹システムは多量の明細データを生成するが、レポーティング(アウトプット出力)の時に大量の明細データから直接帳票を作成していては時間がかかるため、集約データのテーブルを別に持つことで出力を高速化していた。

しかし、集約データのテーブルデータだけでは明細は分からないので、詳細情報を得るためには別途明細テーブルからデータを抽出する必要があり、これが情報分析に時間がかかる要因となっていた。そこで、前述の「インメモリー・データベース」により、集計データを保持することなく明細データから直接集計、出力ができるようになったのだ。

ユーザはいつでも最新情報を出力できることになる。

誰かが経費のデータや売上のデータを入力していても、別のユーザーが売上の帳票をアウトプットした際にその更新情報もしっかり拾ったデータが出力できるということだ。

まとめ

クラウドによってデータの容量拡張は容易となるが、そもそも扱うデータ量が多い場合は、どうしても処理時間は一定かかってしまう。

誤解のなきようお願いしたい。

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