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「名言との対話」3月14日。松本道弘「武道の心を英語に吹き込み、英語で日本一になってやろう」

松本 道弘(まつもと みちひろ1940年昭和15年3月6日 - 2022年(令和4年)3月14日)は、日本の英語通訳者、英語講師。享年82。

大阪府出身。関西学院大学卒業後、日商岩井に入社。その後、同時通訳の草分けで、アポロ11号の月面着陸のテレビ中継で知られた西山千に師事。駐日アメリカ合衆国大使館の同時通訳や、NHK教育テレビ上級英語の講師をつとめた。産業能率大学助教授、名古屋外国語大学教授。

1986年には英語と異文化交流を学ぶ私塾「道弘館」を開設。これは道弘という名前をもじった命名だった。2005年には「紘道館」と改名している。本名の廸紘の文字を使った。1997年からはホノルル大学教授に就任。2021年には松本道弘オンライン・アカデミアを開校した。

子ども時代から柔道という武道に取り組んだこと、宮本武蔵に心酔しており、「英語界の宮本武蔵」を標榜した。英語を武道としてとらえ、黒帯英語など「英語道」を提唱するようになった。

松本道弘は、ディベートの提唱者でもあった。ディベートを知的格闘技としてとらえていた。1993年には国際ディベート学会を創設し会長に就任している。著書は200冊以上に及んでいる。

松本道弘は私の所属する「知的生産の技術」研究会で講師をつとめていただいた先生だった。私が「図解」の本を書き始めた頃に、ディベートに図解を入れたいとして接触してこられ、ディベートの行事によく招かれた。図解は、闘いではなく合意にいたるコミュニケーションであるとの考えであり、ディベートに使うとなれば、闘いではなく、全く違うものになる。結果的にディベート教育に図解を織り込むことにはならなかったが、面白い経験をさせてもらった。

「英語の神様」松本道弘の二枚看板は「同時通訳」と「ディベート」であった。同時通訳の極意は自分を殺して相手の意図を表現することだとし、ディベートは反対に自分を殺さず考えを通すことだとの考えであった。

動画をいくつかみてみたが、相手が話していると同時に英語に翻訳している。真を置かない。それはなぜかと問われて、方程式ではなく幾何学だと語っていた。話し手の意図をカタチとして受け止めているという。なるほど、話されている内容の構造を図解的に見抜き、通訳しているとのだ。今にして思えば、松本道弘が図解に関心を持ったのは当然だった気がする。

大学時代に「武道の心を英語に吹き込み、英語で日本一になってやろう」という志をたてた。そして武道家の心意気でその道を邁進し、それを実現した82歳の戦いの生涯であった。

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