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「名言との対話」4月22日。船戸与一「本気のものは人を惹きつける」

船戸 与一(ふなど よいち、1944年2月8日 - 2015年4月22日)は、日本小説家。享年71 。

早稲田大学法学部卒業。在学中は探検部に所属。第三期生だった。アラスカのエスキモーを訪問し、本名で共著『アラスカ・エスキモー』を刊行している。 小説家の西木正明は探検部の先輩である。

出版社勤務などを経てフリーに転身し、1979年に『非合法員』で小説家デビュー。主に冒険小説の分野で高い評価を獲得している。主な受賞歴に吉川英治文学新人賞(『山猫の夏』)、日本推理作家協会賞(『伝説なき地』)、山本周五郎賞(『砂のクロニクル』)、直木三十五賞(『虹の谷の五月』)、日本冒険小説協会大賞など多数。

著書には「砂のクロニクル」「海燕ホテル・ブルー」「虹の谷の五月」「祖国よ友よ」「非合法員」「夜のオデッセイア」「群狼の島」「山猫の夏」「銃撃の宴」「神話の果て」「カルナヴァル戦記」「猛き箱舟」「伝説なき地」「メビウスの時の刻」「緑の底の底」「かくも短き眠り」「黄色い蜃気楼」「午後の行商人」「龍神龍神一三番地」「緋色の時代」「三都物語」「河畔に標なく」「降臨の群れ」「藪枯らし純次」などがある。

私が読んだ『虹の谷の五月』は、1998年から2000年までの、フィリピン人と日本人の混血の主人公が13歳から15歳までのフィリピン・セブ島を舞台にした物語だ。船戸は冷戦構造の崩壊によって物語が書きにくくなったと言い、新たな冒険小説を書こうとした。主人公を幼い少年に設定して書き終えて、小説への新たな闘志が健在であることを確認し、次のステージに向かっていく。その転機の作品に2000年の直木賞が与えられた。

船戸与一の若い人へのアドバイスがいい。

・主体的に生きてもいいけれど、何も考えずに世間が命じるままに生きてもいい。向いている仕事なんて、実はない。そんなもの、自分ではわからないんです。私だって今でも向いてないと思ってるんだから。それよりも目の前のことに誠実になることです。そこから始めたらいいんです。

・もし若いときに旅をしなかったら、くたばる前にどんな思い出話をするのか。もっと人生を楽しむことを考えたほうがいい。

早稲田大学探検部の初期メンバーの船戸与一の「旅をせよ」という発言には、探検部で鍛えらえた私は共感を覚える。冒頭の言葉では「若いとき」と言っているが、これは生涯にわたって言えることだろう。旅、特に一人旅は世界を広げる。そこで体験した驚きが人生に深みを与えてくれるのだ。旅をして、人に会い、本を読む。その繰り返しを楽しもう。

さらに船戸は「本気のものは人を惹きつける。これは小説に限らずだと思う」という。この人の書くものはどのジャンルにも続さない、ドストエフスキーと同じ枠で語るべき作家だという評価をする人もいる。熱量が多い、本気の人なのだ。

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