見出し画像

「名言との対話」8月18日。亀井俊介「拝米と排米の歴史」

亀井 俊介(かめい しゅんすけ、1932年8月14日 - 2023年8月18日は、日本比較文学者、アメリカ文学者、アメリカ大衆文化研究者。享年91。

岐阜県中津川市出身。東大文学部英文科卒業。博士課程単位取得。1963年東大助教授、1984年東大教授。1993年退官、のち東京女子大、岐阜女子大の教授。アメリカ文学・文化、比較文学・文化を専攻し、アメリカの大衆文化に関心をよせる。

1971年「近代文学におけるホイットマンの運命」で学士院賞。1977年「サーカスが来た!」で日本エッセイスト・クラブ賞。1994年「アメリカン・ヒーローの系譜」で大仏次郎賞。著作はほかに「アメリカのイヴたち」「ハックルベリー・フィンは,いま―アメリカ文化の夢」など。

2007年には、「アメリカ産の日本詩人」のヨネ・ノグチ(野口米次郎)についての『ヨネ・ノグチ英文著作集』全6巻を刊行した。2015年、『有島武郎』で和辻哲郎賞。2017年、『日本近代詩の成立』で日本詩人クラブ詩界賞。

著作は多い。アメリカについては、性革命、マリリン・モンローアメリカン・ヒーロー、ニューヨーク、ヤンキー・ガールなど大衆文化に関する広いテーマで肉薄している。日本人についても、内村鑑三夏目漱石有島武郎坪内逍遥など欧米との関係を考えた人物を取り上げている。野口米次郎についても深い研究がある。そして、アメリカと日本の交流に関するテーマが多い。

1978年刊行の『自由の聖地ーー日本人のアメリカ』を手にした。自由の聖地というイメージは刺激に満ちている。アメリカはファッション、音楽、ダンス、芸術、などによって、自由と解放感を与えてきた。亀井は日米関係を日本からみると、「拝米と排米の歴史」と総括している。崇拝から排除へと極端に振れる歴史がある。蜜月と衝突、親米と反米となり、バランスが悪いという。それは、外からアメリカのイメージを見ているからであり、アメリカの内なる現実への理解が必要だとの主張である。

最近では世界における圧倒的な存在であったアメリカの力が衰退しつつあることを我々は目撃している。大統領選での大きな混乱、中国との覇権争いでの余裕の無さ、ウクライナや中東での影響力の後退など。変化の激しいアメリカの内なる現実をよく理解せよという亀井俊介の主張は存在意義を失ってはいない。

参考:亀井俊介『自由の聖地ーー日本人のアメリカ』(研究社出版

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?