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「名言との対話」10月1日。上羽秀「いちばん好きな時いうたら、お店に出てる時。なんや遊ばせてもろてるよう」

上羽 秀(うえば ひで、1923年(大正12年)1月15日 - 2012年(平成24年)10月1日)は、川口松太郎の小説『夜の蝶』、および同名の映画のモデルとなった人物である。

おそめという通り名で知られた。当時は「ムーンライト」という深夜便があって、深夜2時ぐらいに大阪着の飛行機があり、京都と銀座に店を構えて飛行機で度々往復する生活を送っていたことから「空飛ぶマダム」と呼ばれた。 大好きなオールドパーをロックで飲んでいた。

青山二郎は上羽秀という女の印象を、以下のように日記に書きとめた。「でッぶりしていて品がよくシツカリしていてハイカラで、祇園の出である。東京では見られない(松八重)と対照的な美人だ、吸い寄せられる様な魅力がある。松八重が一流の唐津なら、おそめのマダムは織部の傑作だ」。秀の魅力について妹は「品格、というか雰囲気が独特なんです。それが人さんを惹きつける。だから姉はそのために生まれてきたような人です。人に好かれるという能力を持っている」。色の白い絶世の美人で、その上に人当たりが良く、話上手で、クラブ制の文壇酒場は、文化人だけでなく、政治家、経済人にも絶大な人気があった。

里見弴や吉井勇は秀のために短歌も何首か残している。服部良一は2曲の歌をつくった。大佛次郎、小津安二郎、川口松太郎、東郷青児、石川達三、川端康成、中山義秀、吉川英治、政治家の石田博英、吉田茂、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘にいたるまで。。、。色と欲がテーマの女の確執を題材として大ヒットした川口松太郎の「夜の蝶」には、白洲次郎も登場する。ライバルの銀座一と言われていた「エスポワール」のマダムが「私はね、銀座を征服しなくちゃ気が済まないのよ」と新派公演で語る映像をユーチューブでみた。映画では京マチ子や、秀を演じた山本富士子が出演している。おそめこと、上羽秀は東映のプロデューサーの俊藤浩滋とずっと事実婚だったが、70代になって結婚している。冨司純子は俊藤の娘で、その子が寺島しのぶと尾上菊之助だ。

祇園の芸妓から夜の蝶、空飛ぶマダム、織部の傑作、、などと言われたように、上羽秀は波乱万丈の生涯を送った。秀は一流の客たちから遊ばせてもらっていたのではないかと述懐している。彼女が輝いていたのは、仕事と遊びが渾然一体となった店で接客している時だった。

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