「名言との対話」2月4日。桃井真「一日一冊はあたりまえだ」

桃井 真(ももい まこと、1923年2月4日 - 2004年4月18日)は、日本の国際政治学者・軍事アナリスト。翻訳家・編集者としても活躍した。

神奈川県鎌倉市生まれ。長野県佐久市出身。陸軍委託学生として東京外国語学校英語科を卒業、中野学校を経て、参謀本部。久留米予備士官学校を卒業と同時に参謀本部で放送傍聴に従事する。

終戦後、進駐米軍属、北日本貿易、エイジアン・エコノミックレビュー、ブリティッシュ・インポート、日本商工会議所アジア経済研究会などを経て、1954年に防衛研修所に入所、ハーバード大学に派遣され、帰国後は国際関係論研究に従事する。防衛研修所を退所後は国際政治評論家・軍事アナリストとして活躍した。1993年叙勲四等授旭日小綬章。

著書は1963年発刊の『ケネディにつづく若者たち――"ジャーナリスト"のハーバード大学留学記』(講談社、1963年)から、1998年の『2001年・日本の軍事力――「有事」の際、本当はどこまで守れるのか』(祥伝社)まで、単著が8冊あり、訳書も多い。

ペンタゴン初の試みで受け入れてくれたテストケースであり、37歳という遅い留学であった。その1960年2年間の留学体験記『ケネディにつづく若者たち』を読んだ。1年目はコロンビア大学大学院ジャーナリズム学科(実務経験2年以上が入学資格。平均年齢は26歳)、2年目はハーバード大学院行政学科(英語以外に外国語2つが入学の条件)を卒業している。どちらも通常は2年かかるから快挙だ。

早朝から深夜まで勉強に明け暮れた。「北極で戦争しているつもりで勉強せよ」。一日一冊(400-500頁)の読書。、、、、凄まじいプログラムだ。この期間を終えてようやく「人間」になれるのだ。エリートの勉強ぶりの凄まじさが、アメリカという国のバックボーンを支えていることがわかる。「批判だけで終わらず、つねに代案を用意し、求められれば、いつでも実行に移せることを証明できる理論」が、ハーバード大の行政学科の伝統だ。またこの本には学生生活の内側、女学生とのデート、アルバイト、スポーツ、食べ物などの項目もあり、その観察が興味深い。

女優の桃井かおり(1951年生)の父だ。経歴をみると、防衛庁からの派遣でアメリカ留学していた時は、かおりはまだ10歳前後だった。「役者なんてまともな家の人がするもんじゃないという偏見が僕にはあった。(中略)まわりは羨ましそうだった。(中略)僕が奢ると娘の金だと思うから。それがずっと嫌でした。今も嫌です」と述懐している。なお、真は自ら購入した二世帯住宅でかおりと暮らしていたが、晩年まで「まだ女優やめられないのか」と聞き続けたという。かおりは、2004年に父が他界し、かおりは父の死を乗り越えるために、もっと辛い状況に身を置くことを決意し、ハリウッド映画のオーディションを次々に受け、2005年に『SAYURI』でハリウッド映画初出演。2006年にアメリカ合衆国映画俳優組合に加入し、ロサンゼルスに住み活躍の場をハリウッドに広げている。このあたりのことはインタビューで聞いたことがある。そういう経緯とは初めて知った。

「一日一冊」読むのが当たり前の生活という習慣は、身についていて、膨大な知識を自動的に得ていく原動力になっていくことによって、アメリカのベスト・アンド・ブライテストが誕生していくのだろう。遅まきながら、この「名言との対話」を書くために「毎日、ほぼ一冊の読書」習慣を数年続けている私も、そのことが少しわかるような気がしている。

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