見出し画像

「名言との対話」11月27日。小松達也「私は通訳者です。英語と日本語の間の通訳を一生の仕事としてきました」

小松 達也(こまつ たつや、1934年 - )は、日英会議通訳者(同時通訳者)。

名古屋市生まれ。東京外国語大学英米科卒業。1960年日本生産性本部駐米通訳員として渡米、1965年まで米国国務省言語課勤務。

村松増美(1930年生)、國弘正雄(1930年生)らとともに、日本初の会議通訳エージェントとして1965年に設立された、株式会社サイマル・インターナショナルの創設に参加。1987年から1997年まで同社社長をつとめた。

アポロ11号の月面着陸テレビ中継の同時通訳や、先進主要国首脳会議(サミット)で1986年から1993年まで主席通訳者も務めるなど日本の国際化、グローバル化に伴う数多くの重要な舞台で第一線の通訳者として40年以上にわたり活躍した。1982年から1988年までNHK教育テレビ(現・Eテレ)英語会話Ⅲ(のちに英語会話Ⅱ)講師。

通訳者養成機関サイマル・アカデミーの開校当初から現在にいたるまで後進を育成。1999年から2008年まで明海大学外国語学部教授。2005年、通訳業界初のNPO法人通訳技能向上センター設立に寄与し、理事長。

日本における会議通訳者(いわゆる同時通訳者)の第一人者であり草分け的存在として知られる。 

『英語で話すヒント 通訳者が教える上達法』(岩波新書)を読んだ。

英語の論理は「introduction-body-conclusion」という構成になっている。
グローバリゼーションの時代には、発言があいまいであることは誤解を招く。
「おかしい」「けしからん」「素直な」「甘い」などの言葉を訳すのは意外に難しい。前後の関係によって適当な訳語を「クリエイト」する。それは「翻訳」というより「創造」に近い。
人生が甘くないは、「easy」。判断が甘いは、「oputimistic」。甘く見るなは、「underestimate」。甘い球は、「a fat pitch」という具合になる。甘いは、sweetだけでは訳せないのだそうだ。
「当らずとも遠からず」、「最寄りの訳」をする心得が大切だ。
receptive vocabulary(理解語彙)よりも、話す時に使える(productive)語彙が肝心。アテンション(面白い表現)とリハーサル(頭の中で繰り返す)を伴って多読すること。

以上は、「英語の学び方」についてであるが、通訳という仕事の醍醐味は、政治、経済、国際関係などさまざまの分野の世界の動きに触れることができることがいいという。また各分野を代表するすぐれた人たちと接する機会も多いのも嬉しい点だ。小松は50年にわたる長い活動の中で、世界の中の日本の立ち位置を考えることになる。最後はコミュニケーション能力を涵養しながら、国際的存在感を高めようという主張になっている。

この本は内容の高い労作であることは間違いない。長い体験に基づいた具体的アドバイスはありがたいが、私がもっとも刺激を受けたのは、「はじめに」の冒頭の「私は通訳者です。英語と日本語の間の通訳を一生の仕事としてきました」の2行だ。自分のこと、自分の仕事について、「一生の仕事」という言葉を用いて、簡潔に、そして高らかに宣言していることをうらやましく思った。こういう切れのよい言葉で自分のやっていることを表現できる人は多くはないのではないか。自分はどうだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?