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「名言との対話」 7月30日。今日出海「どんな奴でも軽蔑したらいけない。そこから汲み取ろうと思ったら、誰からでも、いくらでも汲み取れる」

今 日出海(こん ひでみ、1903年(明治36年)11月6日 - 1984年(昭和59年)7月30日)は、日本の小説家、評論家、舞台演出家。初代文化庁長官。

天台宗僧侶で小説家の今東光の5歳年下の弟。フランス文学を専攻。1933年、明大教授。 1945年、文部省社会教育局文化課長となり、すぐに芸術課の初代課長となった。1949年フィリピン戦線の従軍記録「山中放浪」を発表。1950年「天皇の帽子」で直木賞。「三木清における人間の研究」などの人物論で知られる。1968年、佐藤栄作首相に請われて文化庁初代長官となり、約4年間務めた。1972年、国際交流基金の初代理事長を8年間務め、モナリザの日本初公開(1974年)、および、パリの唐招提寺展を実現した。 1978年文化功労者。 80歳で没。

東京帝国大学仏蘭西文学科では、辰野隆・鈴木信太郎らに学んだ。小林秀雄・三好達治・中島健蔵らが同期である。

『迷う人 迷えぬ人』(新潮社)を読んだ。友人、知人との交友録である。兄の今東光は「偽悪の人」、舟橋聖一は「無駄を嫌う人」、「女運」の久保田万太郎、石川達三は「己を愛する人」、桑原武雄は「合理の人」、亀井勝一郎は「求道者」、「迷えぬ人」中島健蔵らが登場する。

反抗の人・今東光は女には優しく従順で東光極悪説は俗論。舟橋聖一は意志が強い勤勉家で精力家。芸能人が賞をもらうなど地位を高めたのは久保田万太郎のおかげ。石川達三の合理癖とは違って桑原の合理的説明は説得力は弱い。奇怪なほどい博識の中島健蔵は流れに身を任せる迷わぬ人。マルクスボーイから真宗に転向した求道者・亀井勝一郎の歩いた道は間違っていることもあり得る。、、、、今日出海の人物眼は鋭く、辛口でかつ愛情深い。「迷い」という視点で人物を描くというのは奇抜である。

「どんな奴でも軽蔑したらいけない。そこから汲み取ろうと思ったら、誰からでも、いくらでもくみ取れる」という今日出海の人に接する姿勢は、『迷う人 迷えぬ人』によく出ている。

文化庁、国際交流基金などでも初代のトップとして活躍するなかで、小説家としての目に加えて、人を見る目が鍛えられた。誰からでも学ぶ姿勢は一貫していたのだろう、持ち込まれた役職は80近きに及んでいる。誰からも学ぶ姿勢を学びたい。

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